うっ血とは?混同しやすい症状と関連のある病気

お悩み

足がむくんでる、全身にむくみがあるといった症状や、息切れ、動悸といった症状に悩まされたりしていませんか。それはもしかしたら「うっ血」によるものかもしれません。ここではうっ血を取り上げ、詳しく解説します。

うっ血とは

心臓から全身へと血液を流す血管を動脈、全身に流れる血液が心臓に戻る血管を静脈といいます。

うっ血とは、体の一部にこの静脈の血液が異常に多く溜まっている状態のことを言います。うっ血が起こる主な要因としては、静脈が圧迫されたり詰まったりすることで血液の流れが滞る場合や、心臓の持つ肺や全身に血液を送るポンプの働きが弱まる場合が挙げられます。

心臓が全身へ血液をじゅうぶんに送れなくなり、肺にうっ血が起こってしまうと、動作にともなう息切れや動悸、むくみ、急激な体重増加、疲れやすさなどの症状が現れます。そのほか脈拍の増加や尿量の減少などを引き起こすこともあります。放置してしまうと症状が重くなり、健康に悪影響をおよぼす場合もあるため、早めの対処が必要です。

うっ血と充血は別のもの

このうっ血に関しては、顔の火照りや足のむくみ程度だと思って軽くとらえている方も多いかと思います。うっ血という言葉の認知率は86.4%といわれ、ある程度なじみのある言葉ですが、誤解も少なくなく正しく理解している方が少ないのです。

しかし、重大な病気につながる危険もあるため、注意が必要となります。また、うっ血を充血と混同している方も中にはいます。充血とは身体のある部分の動脈を流れている血液が異常に増える状態を指すため、静脈の血が流れなくなって溜まるうっ血とは別のものとなります。

うっ血と関連のある病気

うっ血が起こることで引き起こされる病気もあります。下記で詳しく見ていきましょう。

うっ血性心不全

うっ血性心不全とは、全身で血液が滞留し、肺その他にうっ血が生じた心不全です。心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が弱まり、全身にじゅうぶんな量の血液を送り出せなくなった状態のことを言います。

そもそも心臓は、右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋から成り立っています。二酸化炭素を多く含んだ全身からかえってくる血液を静脈血と言い、静脈血はまず右房に入り、ついで右室に入って、ここから肺動脈(心臓から肺に向かう血管)を通って肺に送り込まれます。肺で二酸化炭素を排出し酸素をいっぱい取り込んだ動脈血となって、肺静脈を通って左房に入り、ついで左室に入って、ここから大動脈に送り出され、全身をめぐっていきます。

心臓から大動脈→動脈→細動脈→毛細血管→細静脈→静脈→大静脈を経て心臓に戻ってくる血液の流れを体循環、心臓から肺動脈→肺→肺静脈を経て心臓に戻ってくる血液の流れを肺循環と言います。

これらの循環を維持するために、心室や心房は規則的に収縮・拡張を繰り返しているのですが、そのポンプ機能がうまく働かなくなってしまうとうっ血性心不全となってしまいます。

うっ血性肝障害

うっ血性肝障害とは、右心不全(右心室の動きが鈍くなる)によって中心静脈の圧が上昇し、その圧が下大静脈や肝静脈を介して肝臓にまで伝わることで起こります。

大半は無症状ですが、中等度のうっ血では右上腹部の不快感および圧痛を伴う肝腫大が生じます。重度になると巨大な肝腫大と、目の白眼の部分や皮膚が黄色くなる黄疸が生じるようになります。また腹水の貯留が生じることもあります。

心不全には、急性心筋梗塞による急性心不全や、心臓弁膜症などにより慢性的に心臓のはたらきが悪くなる慢性心不全などがあります。

心臓の状態を調べるために、心電図検査や心臓超音波検査などが行われ、原因が見つかった場合には、利尿剤などによる薬物療法や、虚血性心疾患などに対してはカテーテル治療、弁膜症などに対しては手術による弁置換術が考慮されます。

また、状況に応じて、運動療法や生活習慣の是正(飲酒を控える、塩分を控える)なども行われます。

うっ血乳頭

頭蓋内圧亢進が原因で、眼底にある視神経乳頭にむくみが起き、大きく腫れ上がり、充血した状態をうっ血乳頭といいます。うっ血乳頭の原因としては、頭蓋内腫瘍が約70%を占めていますが、この他脳腫瘍、くも膜下出血(脳を覆っているくも膜の下にあるくも膜下腔で出血する病気)、硬膜下血腫(頭の中にある硬膜とくも膜の間に血腫ができて脳を圧迫する病気)、水頭症(脳脊髄液が過量に溜まることにより脳室が正常より大きくなる病気)などさまざまな原因で生じます。

初期には無症状なこともありますが、しばしば頭痛、吐き気、嘔吐などを引き起こします。視力低下は初期にみられず、進行すると種々の視野障害と視力低下をきたし、長時間持続すれば回復不能な高度の視力低下と、求心性視野狭窄(視野の周辺部が欠け中心部だけしか見えなくなること)をきたします。

うっ血乳頭が発見されれば、原因疾患に対する緊急治療が必要となります。頭部のX線検査、CT検査、MRI検査などを行い、頭蓋内圧病変の発見に努めます。脳圧が下がるとうっ血乳頭の浮腫は改善されます。

検査を受けた方がよい場合とは?

うっ血を早期に発見するためには、初期サインを見逃さないことが重要となります。特に高齢者の場合は、何かいつもと違う症状が起こっても年齢のせいだと思い込み、放置してしまいがちです。

・特に理由がないのに、むくみができる
・短期間で体重が増える
・動くと息苦しさがある
・疲れやすい
・足にむくみがある
・咳とピンク色の痰が出る

こういった症状が見られた場合には、すぐに医療機関へ相談することが大切です。

いかがでしたでしょうか。うっ血とは、体内に血液が溜まり過ぎてしまう状態で、息苦しさやむくみ、疲れやすさなどさまざまな症状が起こりやすくなります。重大な病気が隠れている可能性もあるため、軽く考えずに早めに対応することが大切になってきます。動悸がする、疲れやすくなる、むくみ、急激な体重増加、咳やピンク色の痰があるなどの症状に気づいたときは、放置せずに早めに医療機関を受診するようにしましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

プロフィール

関連記事