水虫との違いは?点状角質融解症の治療と予防のポイント

女性の両足
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点状角質融解症は足のうらの皮膚がむけてくる病気なのですが、水虫ではありません。どのような特徴があり、どのように治療をするのか、解説します。

点状角質融解症とは

女性の足の裏

点状角質融解症は皮膚の感染症の一種です。もともと足の裏の皮膚には多数の細菌がいますが、その中でも「コリネバクテリウム」「ミクロコッカス」「デルマトフィラス」などの細菌が増殖することでおこってくる疾患です。

これらの細菌は、通常であればそこまで増殖することなく、足の裏の皮膚に住み着いています。しかし、高温多湿の環境になると増殖をしてきます。そのため、汗をよくかいて皮膚が蒸れた状態が続くと、だんだんとこれらの菌が増殖してきます。

菌は少量でも酵素を分泌しています。そして菌が増殖してくると、その酵素の量がどんどんと増えてきます。

分泌された酵素は皮膚の角質層を溶かすという特徴があります。そのため、菌が増殖してきた部位では皮膚の角質が薄くなり、点状のくぼみができるようになります。

点状角質融解症の症状の特徴

細菌に侵された足の裏

点状角質融解症の症状としては、足の裏の皮膚にくぼみができてくる症状がみられます。

特に、もともと高温多湿環境にあったことを反映して、足の裏の角質がふやけた状態が見られる事がほとんどです。そのようなふやけた皮膚に直径0.5~7mm程度の浅いくぼみが多数できます。細菌が1か所で増殖するわけではなく、蒸れた皮膚の広い範囲で増殖するので、多数の病変ができるのです。

また、細菌が増殖している事を反映して、悪臭も認めます。足の悪臭を理由に病院を受診して点状角質融解症が発見される場合もあるほどです。悪臭の原因は、イソ吉草酸という物質です。これは、角質が酵素によって分解されることで精製される物質です。

点状角質融解症でできるくぼみ自体は元々小さいものなのですが、それらが近いとくっついて、数センチ程度のくぼみになる事もあります。浅いくぼみはなかなかわかりにくい事もありますが、風呂に入ると皮膚が柔らかくなり、くぼみがよくわかるようになります。

病変の広がりにも特徴があります。土踏まずのように、地面に接しない場所は皮膚が比較的蒸れにくいため、病変はできにくいです。一方で、立ったときに床に当たる部分である足指の根元や、かかとなどによくできます。また、足裏環境は左右ともに同じようになりますので、多くの場合は左右の足両方に症状が出てきます。

足の裏に汗をかいたときにはより症状を感じるようになります。病変部は角質が減少していますから、固い皮膚ではなくなっており、ややヌルヌルしたような、不快な感覚があります。

これだけ皮膚に病変があれば、さぞかしかゆいのだろうと思われるかもしれませんが、ほとんどの場合、かゆみはありません。一方で、角質が減少して皮膚が弱くなっていますから、歩くと皮膚にダメージが蓄積して痛みを感じることもあります。

水虫との違いと、間違われやすい理由

砂の上の足跡

足の裏の皮膚がむける病気としては水虫が代表的です。確かに水虫も、菌が感染しておこってくる病気ですが、水虫は真菌が原因となります。

点状角質融解症も水虫も、いずれも足によくできる病気です。また、足の皮がふやけてくること、ふやけた皮膚が破れて脱落してくることもよく似ているといえるでしょう。一目見ただけではなかなか鑑別ができない事も多くあります。

一つの指標は、かゆみになります。前述の通り、点状角質融解症はかゆみがないことが特徴です。一方で、水虫は多くの場合かゆみを感じます。

また、病変の分布にもそれぞれ特徴があります。点状角質融解症は足のなかでも立ったときに力がかかる部分によくできます。一方で、水虫は足の指の間など、より蒸れて通気性が悪い場所にできやすくなります。

細菌・真菌・ウイルスの違いとは

水虫などの他の皮膚疾患との違いをよりよく理解するために、細菌、真菌、ウイルスの違いを整理しておきましょう。

皮膚に限らず、人の体に感染する微生物といえば、細菌、真菌、ウイルスがあります。どれも同じように見えて、それぞれ違った特徴を持ち、治療法も異なってきます。

細菌の特徴

細菌は、人の細胞よりやや小さいサイズをした生物です。細胞であれば必ずあるような核を持たず、核様体というものがDNAを内包しています。体を外と隔てているのが、細胞膜という膜構造です。その中に、核様体やリボソームといった細胞を形作る様々な要素を持っています。鞭毛という動く毛や、線毛という構造物を持つことによって、人の体の中や外で動くことを可能にしています。

細菌が増殖するのは、主に人や動物などの体の中です。体の中に定着して細胞分裂で自己増殖をしながら、人の細胞に侵入したり、毒素を排出することによって細胞を障害していきます。

代表的な病原体としては、ブドウ球菌や大腸菌、サルモネラチン、緑膿菌などが人に感染します。

細菌が引き起こす皮膚疾患は、とびひやニキビ、粉瘤などの軽いものから、蜂窩織炎、壊死性筋膜炎など重篤なものまで様々です。

治療に使うのは抗菌薬です。抗菌薬は様々な種類がありますが、細胞の膜を合成するのを阻害する薬が多くなっています。

真菌の特徴

真菌とはカビのことです。人の細胞と同じような構造をしていて核のほかにミトコンドリアやリボソームなど、それ単体で生きていけるような構造が揃っています。細胞の外側を作っているのが細胞壁で、細菌の細胞膜と比べて非常に頑丈な構造をしているのが特徴です。

人の体に感染すると、細胞に定着して、菌糸というものを出していきます。この菌糸が枝分かれによってどんどん発育していきます。

代表的な病原体としては白癬菌やカンジダ、アスペルギウスなどがあり、種類としてはそこまで多くありません。

感染することによって、いわゆる水虫と言われる白癬症や、カンジダ症、アスペルギウス症などを引き起こします。

治療薬として使われるものは、抗真菌薬と呼ばれるもので、主に細胞壁の合成を阻害する薬を使っていきます。

ウイルスの特徴

ウイルスは非常に簡単な構造をしています。遺伝情報を持った核酸をカプシドという表面構造が覆っているだけの構造をしています。カプシドの表面にエンベロープといった膜があり、その表面には細胞に付着するための構造物ができています。

ウイルス単独では増殖することができないので、人の細胞を中に侵入して増殖し、細胞から再度出てくることによって広がりを見せていきます。

ウイルスには非常に多くの種類があり、ノロウイルスやロタウイルス、インフルエンザウイルスやアデノウイルスなど、様々なものがあります。

治療薬は、ウイルスに対してはなかなか作りにくいのが現状です。ウイルスの構造に合わせて、様々な種類の薬が開発されています。例えばインフルエンザであれば、ウイルスが細胞から出てくる時に使う構造物を阻害する薬がメインとなっています。

点状角質融解症の治療法

処方された外用薬

点状角質融解症の治療は診断から始まります。前述のように、水虫との鑑別がまず大事になりますから、皮膚を採取して顕微鏡で観察をします。皮膚を水酸化カリウムで処理すると角質が溶けて、顕微鏡でみると、水虫であれば真菌がそのまま見えます。しかし、点状角質融解症では菌は見えません。

ただし、ここには一点注意するべき点があります。市販の水虫治療薬を使用してしまうと、中途半端に水虫菌を退治してしまい、皮膚の損傷だけが残っているという場合があります。このようなとき、顕微鏡で皮膚を見てみても、水虫菌がいないため診断がつかなくなることがあります。迷ったら市販薬を使うより皮膚科を受診する方が良いでしょう。

点状角質融解症と診断できたら、抗生物質を外用します。原因は細菌ですから、抗生物質が効果的です。病変は皮膚の表面だけにおこっているものですから、抗生物質の内服は必要ありません。外用薬だけでじゅうぶんです。

外用薬の使用は1日1~2回程度です。ただ、菌が多いところに薬を使うよりも、なるべく菌の量を減らしてから使用した方が効果的ですので、使用の前にはしっかりと足裏を洗い、乾かした後に使用することが求められます。

丁寧に治療をすれば1~2週間ほどで症状が改善してくると言われています。

点状角質融解症を予防するには?

足を泡で洗う

点状角質融解症は、高温多湿環境によって細菌が増殖することが原因でした。ですので、高温多湿環境にならないようにすることが重要になります。梅雨の時期や夏場は特に注意が必要です。

靴下を長時間履いていると、だんだんと蒸れてくる事に気づかれることも多いでしょう。気づいたら、早めに靴下を交換することがすすめられます。特に蒸れることが多く、汗が多い方は交換用の靴下を数セット持参して、都度交換されることをおすすめします。また、脱いだ靴下には細菌がいる場合がありますので、早めに洗濯をするようにしましょう。

靴下の種類選びも、注意しておくとよいポイントになります。分厚くて吸湿性の悪い靴下よりも、吸湿性が高い綿素材の靴下の方が足の蒸れ予防に効果的です。特に靴を履き替えられない場合や、長靴など通気性のほぼない靴を長時間履くような方は靴下の種類にも気をつかいましょう。

足のケアも必要になります。足の裏で細菌が増殖してくることが症状発症の原因となりますから、毎日入浴のたびにしっかりと足の裏を洗浄しましょう。特に、足の裏で立ったときに力がかかる部分は念入りに洗浄が必要です。ただし、ゴシゴシと強くこすってしまうと角質の損傷をきたし、菌が増殖しやすい皮膚の隙間を作ってしまう可能性があります。泡を使って優しく洗浄してあげると良いでしょう。

洗浄した後は、しっかり乾燥させることが大事です。自然乾燥に任せると皮膚の水分の蒸発もきたしてしまい、皮膚のひび割れを引き起こしてしまう場合があります。こうなると細菌が繁殖しやすい隙間を作ってしまいますので好ましくありません。しっかりとタオルで拭き取るようにしましょう。

同じように、何らかの理由で足が濡れた場合も、すぐに拭き取って乾燥した環境を維持することが重要です。

このような予防に加え、発症してしまったときにすぐに治療を行うことも大切です。水虫との鑑別は難しいものですから、水虫なのか点状角質融解症なのかわからないときは、市販の水虫治療薬を試すより先に皮膚科を受診してしっかり診察してもらい、必要に応じた治療を受けましょう。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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