コーヒーが原因に?腎結石になるメカニズムと予防方法

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腎結石や尿路結石について、昔はカルシウムが原因ではないかと考えられていましたが、現在ではカルシウムはむしろ不足しないことが重要だと考えられるようになりました。そして、結石を作りやすいのは、コーヒーなどにも含まれる「シュウ酸」であることがわかっています。ここでは腎結石や尿路結石になるメカニズムと予防方法について解説します。

腎結石とは

腎結石・尿管結石

通常では、尿は腎臓で産生されてから尿管を通って膀胱に流れ込み、尿道を通って体外へ排出されます。

このような尿の通り道を全体的に尿路と呼び、尿路にさまざまな原因で生じたミネラルを含む結晶から構成されて腎臓に形成された結石を腎結石といいます。

腎結石を含む尿路結石は、男性が女性より発症しやすく日本人の約20人に1人が罹患する決して珍しい病気ではありません。

腎臓という臓器は腰部辺りに位置するソラマメのような形をしている、重量がおよそ150g程度の組織構造物で左右に1対ずつ存在しており、血液をろ過して体内の不要な水分や老廃物を尿として体外へ排出する役割を担っています。

また、腎臓では健康な骨代謝を保つために必要とされているビタミンDの活性化機構に関与して骨の正常な機能に貢献しています。
そのような腎臓領域で産生される腎結石の主たる原因としては、尿路の狭窄や感染、骨折、寝たきり状態、食習慣の偏りなどが考えられています。

腎結石は、尿の中に含まれるカルシウムやマグネシウム、尿酸などの成分が過剰な状態になって結晶化することによって発生し、その背景には生活習慣や体質など多彩な要因が関与していると考えられます。

腎結石を構成する成分は、カルシウムや尿酸、シスチンなど多種多様ですが、概ね8割以上はカルシウム結石であることが判明しています。

それ以外にも腎結石が作られやすい具体的な要因としては、水分摂取量が少ない、糖分や塩分の摂取量が多い、運動不足、ストレス、薬の副作用(ステロイド、ビタミンD製剤、利尿剤)、尿管狭窄や前立腺肥大などで尿の通りが悪くなることなどが挙げられます。

結石病変が尿管にひっかかると、尿管の動きとともに激しい側腹部の痛みが生じます。

さらに、尿が下流の膀胱へと流れないがために上流で尿が貯留して淀んでしまうため、腎盂腎炎などの尿路感染症を引き起こして腎臓の機能障害などが生じることになります。

シュウ酸カルシウム結石ができるメカニズム

ごつごつした石

腎結石を抱える患者さんの特徴として、運動不足で肥満傾向、あるいは動物性タンパク質や脂肪の摂取過多、そしてカルシウムや牛乳摂取頻度の低下などが考えられます。

特に、動物性脂肪を多く摂りすぎると、腸内の脂肪酸が増えてカルシウムと結合するためにシュウ酸がカルシウムと結合できなくなり、このシュウ酸が吸収されて尿中へ排出されて結石ができやすくなると考えられています。

私たちが肉類などを多く食べると、シュウ酸や尿酸などの物質が体内に増え、このうちのシュウ酸には、カルシウムと結合しやすい性質があって、シュウ酸成分が腸管のなかでカルシウムと結びつくと、便と一緒にからだの外に排泄される仕組みになっています。

ところが、シュウ酸の量が多いと、余剰分は尿のなかに出てきて、尿のなかでシュウ酸成分がカルシウムと結合すると、石のようなかたまりとなって排泄されにくくなり、腎臓に障害を及ぼす、あるいは結石自体が尿管を詰まらせて閉塞させることになります。

コーヒーが腎結石の原因になると言われる理由

ホットコーヒーを持つ手

シュウ酸はどのような食品に多く含まれているかというと、圧倒的に多いのはほうれん草ですが、コーヒーなど嗜好品の飲料にも比較的シュウ酸が多く含まれていると言われています。

特に、空腹の状態でブラックコーヒーを飲んだ場合には、その中に含まれるシュウ酸は消化管から吸収されて血液中に入って、腎臓で排出されて尿路に出て、そこで待ち受けていた尿中のカルシウムと結合することで「シュウ酸カルシウム結石」が形成されます。

我々の食生活では、コーヒーにミルクを入れて飲む習慣がありますが、ミルクに含まれるカルシウムが実は腎結石予防に重要な働きをしていて、カルシウムとシュウ酸が結合することによって、吸収するシュウ酸を減らすことができると考えられています。

したがって、少しでも腎結石の発症リスクを軽減させるために、コーヒーにはミルクを入れて飲み、尿が濃くなり過ぎないようにこまめに水分を十分に摂取しましょう。

腎結石や尿管結石の予防方法

アイスコーヒーに牛乳を注ぐ

腎結石や尿管結石を予防するためのポイントを確認しておきましょう。

シュウ酸のとり過ぎに注意する

腎結石を含む尿路結石については、かつては多くの場合でカルシウム自身が結石を作る原因であると考えられていましたが、現代ではカルシウムよりも「シュウ酸」のほうが結石を作りやすいことがわかってきました。

腎結石や尿管結石の発症には食生活が大きく関係していると分かってきており、特に日本人の場合は、シュウ酸カルシウム結石症と呼ばれるものが圧倒的に多いです。

尿中に排泄されるシュウ酸は、カルシウム結石の最も重要な危険因子とされています。

ほとんどは食事由来とされており、尿路結石を予防するためにはシュウ酸を多く含む食品の過剰摂取を控えることが先決です。

シュウ酸を多く含む食品例としては、ホウレンソウ、キャベツ、ブロッコリー、バナナ、玉露などのお茶、ココア、チョコレート、コーヒー、紅茶などが挙げられます。

ですから、日々これらの摂取量に気をつけて、摂り方の工夫をすることが大切です。

シュウ酸は水溶性なので、ゆでて調理し、カルシウムと一緒に摂取することで吸収を抑えることができますので、例えばホウレンソウのおひたしにちりめんじゃこを加える、あるいはコーヒーには牛乳を混ぜるといった工夫も有効です。

コーヒー、紅茶、お茶については毎日飲むという人も多いと思いますが、同じお茶のなかでも麦茶やほうじ茶はシュウ酸含有量が少ないのでおすすめです。

カルシウム不足にならないようにする

以前にはカルシウム結石の予防にはカルシウムを多量に摂らない方がいいと考えられていましたが、その後の研究で結石患者さんの方が結石のない人達に比べて摂取しているカルシウム量が有意に少ないということが報告されました。

カルシウムは腸管内でシュウ酸と結合してこれを便に排出させ、シュウ酸の吸収を抑制し、尿中シュウ酸排泄量を減らす作用があるのです。

したがって、現在では適量のカルシウム摂取(日本では1日600~800mgが目安)を行うことが腎結石の再発予防になると考えられています。

水分をしっかりとる

グラスに注がれたミネラルウォーター

腎結石は一旦発症すると将来的にも再発率が高いことがこれまでの研究からも判明しており、日常的な生活習慣の改善や1日2L以上の水分を摂取するなど水分の積極的な摂取が重要となります。

水分をあまりとらないと脱水状態になって、尿が濃縮されて尿路結石ができやすくなります。

腎結石症の罹患予防に向けて、まずは十分な水分を摂ることが重要であり、食事以外にも1日だいたい2L以上の水分補給を心がけ、1日尿量を2リットル以上とすることで、結石再発リスクを減少できるという報告もあります。

特に脱水になりやすい夏場の暑い時期や、入浴後や運動後の水分補給が大切です。

クエン酸を摂取する

クエン酸は尿中のカルシウムがシュウ酸やリン酸と結合するのを阻害して、腎結石の形成を阻止すると考えられています。

クエン酸は、主に果物や野菜などに多く含まれていて、尿中でカルシウムと結合しても可溶性物質であるためにそのまま排泄されますが、過剰に摂取することで同時にシュウ酸を多量に摂取する可能性もありますので、適量の摂取に留めておくとよいでしょう。

まとめ

これまで、コーヒーが原因になることもある腎結石の発症メカニズムと予防方法などを中心に解説してきました。

腎臓で濾過された尿は、尿管を通過し膀胱へ溜められ、尿道を通って排泄されますが、腎臓にできる石を腎結石、そして腎臓から膀胱、尿道の間にできる結石を尿路結石と言います。

小さな結石が腎臓にできても無症状な場合がほとんどですが、この結石が腎臓から流れ出た途中で詰まってしまうと、側腹部などにおいて激しい痛みや血尿などの症状が出現することになります。なお、腎結石を含む尿路結石が5年以内に再発する確率は約5割と言われています。

これまでに人間ドックや健診の腹部超音波検査等で、腎結石症や腎石灰化を指摘された方は少なくないと思いますので、腎結石や尿路結石を予防するために、規則正しくバランスの良い食生活と十分な水分摂取を日常的に心がけるようにしましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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