頭皮のトラブルはなぜ起きる?頭皮のかゆみ・でこぼこの原因

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頭を触るとデコボコしていて皮膚の状態がおかしい、といった経験はありませんか? 何か悪い病気ではないかと不安になる方もいらっしゃるでしょう。ここではそんな頭皮のトラブルについて解説します。

トラブルが起きやすい? 頭皮の特徴

頭皮の断面

頭皮は、皮膚がもともと弱い人はもちろん、他の部分の皮膚には何も問題が起こらないのに頭皮だけ問題が起こるという人もいるように、頭皮特有の異常が起こりやすい場所です。なぜなのでしょうか。

頭皮は、他の部位と違って毛髪を生やしています。毛髪がなければ頭部は露出し、直射日光や物理的な刺激にさらされやすくなり、非常に重要な頭部の保護ができなくなってしまいます。そのため、毛髪をなるべく維持しようとするため環境が変わっているのです。

頭皮の構造

まず皮膚の構造を見ていきましょう。頭皮はほかの皮膚とは異なる環境とは言え、基本的な構造は同じです。

皮膚というのは主に3層の構造をしています。

一番深い層にあるのが皮下組織です。皮下組織は皮下脂肪、血管、線維組織などからなり、主に皮膚を支える土台のような役割をしています。

真ん中の層が真皮層です。真皮層は、皮膚が臓器として働くことができる機能を維持している層だと言えます。血管が通って後述の表皮層に栄養や酸素を供給したり、皮脂腺を形成して皮膚に皮脂を供給したりします。また、皮膚にものが触れた、痛いなどの感覚を検知するセンサーも存在します。

特に頭皮に多いのが毛です。毛髪や、他の部分の皮膚にも存在する毛は、真皮層に毛根が存在し、毛を産生しています。毛は皮膚の防御機能を持っているだけではなく、立毛筋という毛を動かす筋肉によって立ち上がったり寝たりと動かされることで皮膚の温度調節に寄与します。立毛筋も真皮層の機能です。

もっとも表層にあるのが表皮層です。表皮層は皮膚のバリアとしての機能を担います。表皮層自体も層構造をしています。もっとも真皮に近い部分にあるのが基底層で、ここの細胞が細胞分裂をすることで皮膚は常に新しい細胞で防御されます。

基底層で分裂した細胞は、新しい細胞にしたから押し上げられることで表層へとだんだんと移動し、層を形成します。そして最も浅い層である角層にまで至ると、だんだんと剥がれ落ち、フケや垢となるのです。

皮脂腺と汗腺が多い

頭皮はこのような皮膚のなかでも、特に皮脂腺が最も多いという特徴があります。真皮層にある皮脂腺は皮脂を分泌することで皮膚の乾燥を防ぎ、外気や紫外線の影響から頭皮を守ろうとします。また、汗を分泌する汗腺も非常に多く、手のひらや足の裏に次いで多い量の汗腺があり、汗を分泌して体温調節に寄与しています。

これらの皮脂や汗は確かに皮膚を守るために働いているのですが、分泌量が多くなりすぎたり、適切に洗い流し拭き取られなかったりすると、皮膚にいる常在菌によって分解されたり、熱によって酸化変性してしまったりすることで皮膚のトラブルが起こりやすくなります。特に頭部は毛髪にも多く覆われていますから、拭い去られることが少なく、頭部の皮膚には皮脂や汗が残ってしまいやすくなります。

頭皮を刺激する脂肪酸

皮脂は変性すると脂肪酸になってしまいます。脂肪酸はその名の通り、脂肪成分からできている酸性成分です。少量であれば、皮膚表面が弱酸性に保たれることで皮膚のバリア機能が維持され、病原菌の増殖を抑えてくれます。

しかし一部の脂肪酸はオレイン酸など皮膚を刺激する成分となってしまいます。皮膚に付着していると皮膚を刺激して皮膚炎を起こします。皮膚炎が起こると赤みが出たり、かゆみが出たりといったさまざまなトラブルを引き起こしてくるのです。

このように、頭皮は他の皮膚に比べてトラブルの原因となる物質が多く分泌されますし、一方で毛髪に覆われていることで皮膚のトラブルが見えにくいといった特徴から、トラブルがもともと起こりやすい環境にあると言えるでしょう。

頭皮のかゆみとでこぼこの原因

頭に手を当てて考える女性

では、実際にどのような異常が起こることで頭皮にかゆみやデコボコが起こってくるのでしょうか。

ニキビやできもの

最も多いのは、ニキビやさまざまな皮膚のできものによって起こってくるニキビなどです。これらの異常は、皮膚の炎症によって起こってきます。皮脂の酸化によってできた脂肪酸、とくにオレイン酸などの刺激性の物質によって皮膚が刺激され、炎症が起こってきます。

このような炎症によって皮膚が赤くなり、また皮膚が腫脹してきたのが湿疹です。かゆみを伴い、デコボコした肌触りとなります。

また、皮脂腺や毛根が皮脂によって詰まってしまい、その中で常在菌であるアクネ菌が増殖してしまって腫れてくるものがニキビです。ニキビも皮膚のトラブルとしてよくあります。多くの場合は顔面にできてくるのですが、頭皮にできるとデコボコした肌触りの原因となります。

血行不良

皮膚の血行不良は、コリの原因となります。もともと皮膚にはリンパの流れが存在し、老廃物などを洗い流す効果があります。このリンパの流れを支えるのが血流と筋肉です。血液が流れてくることでリンパの流れも良くなる他、皮下組織の近くに筋肉があることでリンパ管が圧迫され、リンパ液の流れを生み出します。

しかし、頭皮の下にはほとんど筋肉がなく、皮下組織の下は直接頭蓋骨となっている場所も多くあります。そのため、頭皮はリンパ液の流れが滞りやすくなっているのです。

リンパの流れが滞ると老廃物がその場所にとどまってしまい、頭皮のデコボコに触れることがあります。また、このような老廃物は蓄積することで毛細血管を圧迫して血液の流れを阻害してしまうこともあります。血流の阻害によってさらにリンパ液の流れが悪くなってしまうこともあるのです。

このような場合は、頭皮をマッサージすることでリンパの流れを助け、頭皮のダメージを改善することができます。

脂漏性皮膚炎

脂漏性湿疹とも呼ばれる湿疹です。皮脂の分泌が亢進することによって起こってきます。前述の通り、皮脂の分泌が増えると脂肪酸が増加し、更に常在菌によって変性が起こってくる事で皮膚が刺激されることによって起こってくる皮膚炎です。

皮膚には毛孔に一致した紅斑と、その中心部に丘疹と呼ばれるポツポツとした膨らみが見られます。かゆそうに見えるのですが、かゆみは強くありません。

皮脂が炎症を起こすことが原因ですから、しっかりと洗うことで対策が可能です。

乾癬(かんせん)

乾癬は表皮の細胞が多くできすぎてしまうことで膨らんでくる疾患です。前述の通り、表皮の細胞は基底層で細胞分裂をしてだんだんと表層へと移動してくるという特徴を持っています。乾癬の場合はこの細胞分裂が異常に亢進してしまっていますから、基底層よりも浅い層に細胞が多く存在し、膨らんでしまいます。また、どんどんと表面に細胞があふれ出し、脱落していきますから垢やフケも増加してしまいます。

乾癬というのは原因の如何に関わらず、このように基底層での細胞分裂が異常に亢進する事の総称です。他の臨床的特徴から尋常性乾癬、膿疱性乾癬、関節症性乾癬、滴状乾癬、乾癬性紅皮症などのさまざまな臨床像がありますが、ほとんどが尋常性乾癬となります。

いずれの乾癬も、原因は不明です。もともと何らかの遺伝的素因に、皮膚刺激が加わることで発症すると言われています。

頭部に発症すると、皮膚炎が起こっているかのように皮膚がデコボコします。フケが多くできますから皮脂腺も詰まりやすく、炎症やかゆみを伴うこともあります。

副腎皮質の外用や、特殊な紫外線による治療が行われます。

脂肪種

脂肪腫というのは、皮下の脂肪が腫瘍性に増殖することによって起こってくる良性の腫瘍です。基本的には単発で、境界が明瞭な腫瘍として皮下に触れます。ほとんどは体幹部の皮膚にできますが、まれに頭皮にできる事もあり、その場合には頭を触るとボコッとした腫瘍に触れることになります。

治療法は手術による摘出です。良性腫瘍ですから周りとの境界も明瞭なため腫瘍だけをくりぬいて摘出する事が可能で、摘出してしまえばそれで治療は終了です。時折再発することはありますが、浸潤や転移を起こすことはありません。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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