乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)が疑われる症状とNG行動
乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome、SBS)という言葉を聞いたことがありますか? 育児をしている人はよく耳にするのではないでしょうか。
赤ちゃんが泣き止まず、イライラすることってありますよね。それでも無理に泣き止ませようとして激しく揺さぶったりするのは危険です。ここでは乳幼児揺さぶられ症候群について詳しく見ていきましょう。
乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)とは
乳幼児揺さぶられ症候群とは、赤ちゃんを激しく揺さぶることで、表面的な外傷はないものの、脳内出血や網膜出血を起こすことです。
赤ちゃんは頭が大きく、首の筋肉が未発達であるため、もともと頭を支えることが大変です。また、赤ちゃんは脳と頭蓋骨の間にすき間があるために、強く揺さぶられることによって、脳と頭蓋骨を結ぶ静脈ややわらかい脳組織が切れてしまいます。
2歳以下、なかでもまだ首がすわっていない生後6か月未満の赤ちゃんには特に注意が必要です。強く揺さぶられた後、顔面が蒼白になる、ぐったりする、意識がなくなる、けいれんを起こす、呼吸が不規則になる、嘔吐するなどの症状が現れ、脳性麻痺、精神運動発達地帯、視力障害などの後遺症が残ることもあります。
激しく揺さぶられると脳にどのような影響が出る?
赤ちゃんの首が激しく前後に揺さぶられると、脳と頭蓋骨が大きくずれます。赤ちゃんの脳は動きやすくてやわらかいため、ずれやすいです。
この時に脳の血管や神経が引きちぎられたり、脳が頭蓋骨の内側に打ち付けられたりしてダメージを受けてしまうことがあります。
そうなると赤ちゃんは低酸素状態になり、脳の細胞が破壊され、脳内出血、硬膜下血腫、呼吸困難、失明、脳性麻痺などといった厳しい状態となり、時には死に至ってしまうこともあります。
・ボーッとしている
・目線が合わない、ぐったりしている
・起こしてもすぐにウトウト寝てしまう
・母乳、ミルク、食事が普段通り飲めない、食べられない
・繰り返し嘔吐する
・手足を動かさない、またはピンと突っ張って力が入っている
・けいれんする
このような症状が見られた場合は、脳の中で出血している可能性があります。早めに医療機関を受診しましょう。
病院では脳神経細胞の障害や頭蓋内の出血の状態を調べるために、頭部CT、MRI検査を行います。また、眼底出血が起こっていないか見極めるために、眼底カメラで出血の様子を確認するなどの検査も行います。
硬膜下血腫が見られた際には手術が必要となることがあります。硬膜下血腫に対しては、頭蓋骨を大きく開けて血腫を除去する開頭血腫除去術を行います。急性の脳腫脹(脳全体が腫れた状態)がみられるときには、腫れた脳の圧を逃がすために骨を外して皮膚だけ縫合する外減圧術を併用する場合があります。
眼底出血は自然に消えていきますが、弱視になったり重い視力障害が残ったりすることがあります。
乳幼児にやってはいけないNG行動
普通のあやし方で揺さぶられ症候群になることはありません。しかし、以下にあげるような揺らし方は揺さぶられ症候群を引き起こす可能性があるので注意しましょう。
・1秒間に3~4回以上連続して揺らす
・頭が前後にガクンガクンと揺れる(顎が胸につくくらいの強さ)
・高い高いの遊びで、空中に子どもを投げる
・サイズが合っていないチャイルドシートに乗せて、舗装されていない道を長時間移動する
・両手で急速に持ち上げたり下ろしたりする動作を繰り返す
子どもと接する際に、なかなか泣き止まなかったり、言うことを聞いてくれなかったりすると、つい衝動的に接したくなることがあるかもしれません。
とくに生後1〜2か月ごろは、生理的に最もよく泣く時期と言われています。どうして泣いているのか探ってもわからない場合は、「赤ちゃんは泣きたい気分なんだ」と思って、様子をみるのもひとつの手です。
どうしようもなくイライラしたり、怒りの感情がわいてしまったりすることもあるでしょう。怒りはどの感情よりも強く、抑制するのが難しいものです。そのような場合には、いったん距離をとって気持ちを落ち着かせましょう。他の家族に交代したり、子どもの安全を確認した上でその場から少し離れてゆっくり大きく深呼吸をしたり、周囲の人に気持ちを吐き出したりして怒りのコントロールをするよう心がけましょう。
いかがでしたでしょうか。乳幼児が泣き止まなかったり、言うことを聞いてくれなかったりすると、衝動的に揺さぶってしまう可能性があります。その際は、一度距離を取るなど気持ちを落ち着かせることに専念しましょう。一時の感情で取り返しのつかないことになることがあります。どう対応していいのかわからなくて困っている際には、距離をとるのもいいでしょう。周囲の人や、必要な場合は医療機関などに相談してみることをおすすめします。