片目のまぶたが突然腫れた!考えられる原因と対処法
突然、片目だけまぶたが腫れると驚かれることでしょう。まぶたが腫れる場合、さまざまな病気の可能性があります。ここでは考えられる原因と対処法について解説します。
目次
突然片目のまぶたが腫れる原因
突然片目のまぶたが腫れる原因にはどのような病気があるのか詳しく見ていきましょう。
アレルギー性結膜炎
アレルギー結膜炎は、その名の通りアレルギーの機序によって結膜に炎症が起こってくる病気です。
結膜というのは、眼球の表面や、まぶた(眼瞼と言います)の裏側を裏打ちするように存在する膜のことです。膜は眼瞼の裏側から眼球へと連続しているため、コンタクトレンズが眼の裏に入ってしまうようなことはありません。
この結膜は、非常に血流が豊富な組織でもあります。免疫細胞もよく出てこれるため、アレルギー反応も起こりやすくなります。
アレルギー反応というのは、自分自身の免疫細胞が異常に活性化することによって起こる反応です。人の身体には自分自身にとって有害なものを除去する仕組みが備わっていますが、その機能が暴走してしまうことを言います。
免疫は自分自身にとって有害なものを、抗原という構造を認識することで判断します。抗原はさまざまな物質や微生物の表面に存在しています。例えばウイルスが身体に侵入してくると、ウイルスに存在する抗原を免疫細胞は認識して反応し、除去しようとします。
この抗原に結合する物質を抗体と言います。抗体はそれぞれの抗原に対して特異的に反応するようになっています。ですので、抗体が存在しない状態であれば免疫反応は出足が遅れてしまうこともあるのです。
この抗原ですが、ウイルスなど有害なものだけを認識するようにできていれば良いのですが、時折花粉やホコリなど、特に過剰に反応しなくても良いものの抗原に対する抗原が作られてしまいます。
すると、抗原に対して抗体が反応してしまい、免疫が過剰に活性化されてしまいます。これがアレルギーです。
アレルギー性結膜炎は、結膜の表面に何らかの抗原が付着することで起こってきます。免疫が過剰に反応した結果、眼のかゆみや充血に加えて、結膜自体が腫れてきます。結膜の上で免疫反応が起こって炎症が起こるために腫脹してくるのです。
両側性に出ることも多いのですが、片側性のこともよくあります。顔面の腫脹に加えてかゆみなどがあれば、アレルギー性結膜炎をまずは疑います。
眼瞼炎 (がんけんえん)
さまざまな原因で眼瞼に炎症を生じる病気です。どのような原因でも、たいていの場合は発赤に加えて膿疱ができたり、潰瘍ができたりします。また、皮膚表面はガサガサになり、垢がよく落ちてきます。また、炎症を反映して周囲の腫脹がみられるのが特徴です。
眼瞼炎にもさまざまな種類があります。
眼瞼縁炎は、眼瞼の縁に炎症が起こってくる病気です。毛瘡性眼瞼縁炎は眼瞼縁炎の一種で、黄色ブドウ球菌という細菌の感染です。黄色ブドウ球菌はもともと皮膚に存在する常在菌の一種ですが、毛根部にとどまり増殖することで炎症を引き起こします。
脂漏性眼瞼縁炎は眼瞼縁炎のなかでも眼瞼にある皮脂を分泌する分泌腺に起こる炎症です。皮脂が脂腺のなかに貯留し詰まることで炎症が起こってきます。かゆみを伴うのが特徴です。清潔にすることで治療されますが、なかなか治らないのが難点です。
眼瞼炎のなかでも湿疹性眼瞼炎は、眼瞼の皮膚に湿疹ができた状態です。多くの場合、化粧品などに対するアレルギー反応です。原因の除去で治る場合がほとんどです。
ものもらい(麦粒腫)
ものもらいと言われる眼瞼の腫脹は、医学的には麦粒腫と言われます。
麦粒腫は眼瞼にできる急性化膿性炎症のことです。つまり、急に起こる炎症細胞がたくさん出てくる炎症のことです。
さらに、麦粒腫には外麦粒腫と内麦粒腫の2種類があります。いずれも見た目に大きな差は無いのですが、外麦粒腫はまつげの生え際よりも皮膚側、内麦粒腫はまつげの生え際よりも眼球側にできています。
これらの違いは、眼にある分泌腺の違いによります。外麦粒腫はZeis腺やMoll腺と呼ばれる分泌腺に、内麦粒腫はMeibom腺と呼ばれる分泌腺に感染が起こることで起こってきます。
感染する菌は眼瞼炎と同じように皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌になります。
細菌感染を反映して赤みを帯びた腫れになることもあります。痛みや異物感が強く、目をこすることで悪化する場合があるので注意が必要です。
眼瞼腫瘍
眼瞼にできる腫瘍のことです。
眼瞼はもともと皮膚ですから、皮膚にできるさまざまな腫瘍が眼瞼にできることで眼瞼が腫れてくることがあります。
このときには痛みがないことが多く、だんだんと大きくなってきます。一般に、突然まぶたが腫れるということはありません。
涙嚢炎
涙嚢は分泌された涙を一時的に止めておく袋状の器官です。涙は外側にある涙腺から分泌されて、目を潤した後、内側にある涙嚢に溜まっていきます。涙嚢に溜まった涙は、そのまま下の方に流れていきます。
下の方には涙小管という細い管があり、そのまま鼻へとつながっています。これによって、常に目を潤している涙が目の周りにたまらないようになっているのです。涙を流した時に鼻水が増えるのは、この涙嚢にたまった涙が涙小管を通って鼻に流れ込んでいるためです。
涙嚢炎は、この涙嚢に炎症が起こる病気になります。とはいえ、普通の状態であれば感染を起こすことはあまりありません。感染を起こすのは、涙小管が何らかの原因で詰まってしまい、涙が涙嚢にたまったままになったときです。つまる原因はいくつかありますが、多いのは鼻づまりです。鼻粘膜が腫れて涙小管の出口を塞ぎ、流れが滞ってしまうのです。
涙嚢に感染が起こると、涙の流れが不十分となりますから、涙や目やにが増加します。また、涙嚢の中に炎症がとどまっている状態であれば表面からは赤みは見えませんが、周辺に炎症が広がると赤くなったり、腫れたりしてきます。触ると痛みを訴える場合もあります。
治療としては、抗生物質の点眼薬を使用します。涙小管が詰まりやすい状態にあると、治っても再度発症するように繰り返す場合があります。その場合には、鼻や副鼻腔の治療が必要になる場合があります。
かぶれ(接触皮膚炎)
皮膚がかぶれることを、接触性皮膚炎と言います。何らかの物質と接触することによって、アレルギー反応が起こり、皮膚に炎症が起こってきます。炎症が起こった皮膚は腫れて、赤くなります。
まぶたにかぶれが起こってくるのは、多くの場合、化粧品や、メイク用の接着剤、クレンジング剤、シャンプー、カラー液、パーマ液などの化学物質が原因となることが多いです。通常それらのものを片側に使うことはありませんから、まぶたの腫れが片方に起こってくることはあまりなく、両側に広がることが多いです。
接触性皮膚炎の発症は、急に起こるのが特徴です。漆のように、初めて触ったときに症状が起こるものもありますが、多くの場合は今まで触っても問題なかったのに、急にある物質に反応して症状が出るようになります。
感染性結膜炎
感染性結膜炎は、何らかの病原体に感染することによって、結膜に炎症が起こり、腫れてくるものです。原因となる微生物は主に、アデノウイルスやエンテロウイルス、コクサッキーウイルスといったウイルスや、ブドウ球菌や連鎖球菌といった細菌です。
目が充血したり、目やにが出てくる他にも、ウイルスの種類によっては耳の前のリンパ節が腫れて触ると痛みが出たり、喉の痛みや熱が出たりします。
ウイルスの場合には経過観察で治りますが、細菌によるものは抗生物質の点眼薬による治療が必要になります。鑑別は即座にはできませんので、感染性結膜炎と考えられる場合は早期から抗生物質の点眼を行います。
コンタクトレンズの不適切な使用
汚れたコンタクトレンズや、劣化したコンタクトレンズを使うことによって、角膜損傷が起こることがあります。角膜損傷が起こって炎症がまぶたに広がることによって、まぶたの腫れが見られる場合があります。
また直接的に障害されなくても、汚れたコンタクトレンズに微生物が付着していた場合、それが目に感染することによって感染性結膜炎を起こし、同じようにまぶたが腫れてくる場合があります。
突然片目のまぶたが腫れたときの対処法
突然片目のまぶたが腫れてしまった場合の対処法を確認しておきましょう。
原因がアレルギーの場合
アレルギー性結膜炎の場合は、抗原の除去とアレルギーに対する治療を行います。
抗原は前述のように花粉やホコリなどが原因となる場合がほとんどです。まずは抗原となる物質を洗い流すことが必要になります。
眼を真水で洗うと痛みを感じますから、0.9%の生理食塩水で洗います。この濃度の食塩水は体内の水分と電解質濃度が同じになるため痛みをあまり感じません。
しっかり洗い流した後は、抗アレルギー薬の点眼や、ステロイド薬の点眼を行います。炎症を抑えることで眼瞼の腫れを抑えます。
なお、抗原となるものには稀にソフトコンタクトがあります。コンタクト自体が問題と言うよりはコンタクトに付着する変性したタンパク質が原因となることが多いのですが、このような場合は再度コンタクトレンズを使用すると症状が再発します。コンタクトを使っていてアレルギー性結膜炎になった場合はソフトコンタクトの使用を控えるのが無難です。
原因がアレルギー以外の場合
原因がアレルギー以外の場合は、多くは細菌感染症です。
放置していると、かゆみや異物感から眼をよくこすってしまい、さらに感染を悪化させてしまうことが多くあります。
病院を受診して、必要な点眼薬を処方してもらう必要があります。
病院を受診した方がよいケースとは?
基本的にまぶたが腫れたときには一度は病院を受診した方が良いでしょう。
自分では原因が分からないことが多いですし、分かったとしても治療は市販薬ではなかなか終わらないことが多いからです。
特に細菌感染症による眼瞼腫脹であれば、抗生剤の点眼薬を使用しないとなかなか治らないことが多いのが難点です。
治らない間に目をこすることで更に状態が悪くなったり、別の感染や外傷をきたすことで目や眼瞼に影響を及ぼすこともあります。
すでにアレルギー性結膜炎と診断がついていて、同じような症状が起こった場合には市販の点眼薬を購入することで対応が可能ですが、そのような場合でもシーズンのはじめに一度病院を受診しておくことをオススメします。