チョコレートはNG?糖尿病治療中の低血糖と反応性低血糖

低血糖、チョコ アイキャッチ
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糖尿病治療中に低血糖になってしまったらどうしたら良いのでしょうか? 低血糖を改善するためには、甘いものであれば何でも摂取して問題ないのでしょうか? 実はそういうわけではありません。ここでは低血糖について詳しく見ていきましょう。

糖尿病治療中の低血糖

スマートウォッチと血糖測定器

低血糖とは、血液中のブドウ糖が少なくなりすぎる状態のことを言い、一般的には血糖値が70mg/dL未満になった場合のことを言います。

低血糖の症状は人によって個人差がありますが、異常な空腹感、体のだるさ、動悸、冷や汗が止まらない、めまいや悪心、ふるえ、不安感、眠気や脱力感、集中力の低下、意識がもうろうとする、異常行動、けいれん、昏睡状態などさまざま挙げられます。

そもそも糖尿病の治療の目標は高すぎる血糖値を下げて改善させることですが、インスリンの注射単位や糖尿病治療薬の内服量を間違えてしまったときや、糖尿病治療薬を強化したり、内容や時間帯を変更したときに低血糖になりやすくなります。

また、普通の生活と違う場合にも注意が必要であり、じゅうぶんな食事がとれなかったり、食事時間がいつもより遅くなってしまったときや運動量が多くなったとき、空腹時に激しい運動を行ったときにも低血糖が起きやすくなります。低血糖を起こしやすい主な糖尿病治療薬にはインスリンや、内服薬のスルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬などがあります。

糖尿病治療中の低血糖対策

ラムネ(ブドウ糖)

低血糖の症状の出方には個人差がありますが、対策の仕方を知っておくことは非常に大切になってきます。基本的な対策を確認しておきましょう。

すぐにブドウ糖を摂取する

低血糖は、放置すると最悪の場合は意識を失って死に至る可能性があります。早ければ最初に症状を感じ始めてから10分以内に意識を失ってしまう場合もあります。そのため、速やかにブドウ糖を供給することが大切になります。

速やかに吸収されるのがブドウ糖です。ブドウ糖を10g、あるいは砂糖20gをとりましょう。それが手元にない場合には、ジュースを摂取しましょう。ジュース類には果糖ブドウ糖液糖といって、すでに分解されたブドウ糖が含まれている上、水分なので速やかに吸収されます。しかし半分は果糖なので、ブドウ糖だけの場合と比べて倍の量を摂取しなければならず、最低でも200mL、できれば350mL飲む必要があります。

炭水化物を含む食事をとる

症状が治まったら、菓子パンやおにぎり、芋類などの炭水化物を含む食事をとりましょう。消化しやすくするためによく噛んで食べましょう。

チョコレートは吸収が遅いので避ける

洋菓子やチョコレートなどの食品は油分を多く含んでいます。そのため、胃腸の動きを遅くし、糖分が速やかに吸収されなくなってしまいます。吸収が間に合わず低血糖が重症化してしまう恐れがあります。また低血糖が治った後に高血糖になってしまう恐れもあります。そのため、チョコレート類を即座に摂取することは避けましょう。

上記のように適切に対応することで、通常は5分~15分以内に低血糖症状は改善します。しかし、30分ほどで再び低血糖発作を引き起こす場合もあるため、糖分を摂取したあとに食事も摂るとよいでしょう。また、α-グルコシダーゼ阻害薬を内服している方は、糖質の消化・吸収が遅れるため、必ずブドウ糖をとりましょう。

一般の人に起こる反応性低血糖(機能性低血糖)

体調不良の女性

反応性低血糖とは、糖質の過剰摂取により膵臓からインスリンが過剰に分泌されたり、あるいは糖尿病の初期段階として血糖値の上昇とインスリンの分泌のタイミングがずれることによる低血糖を指します。

食後すぐに起こるものではなく、食事をしてから3〜5時間後に低血糖症状が出現するのが一般的です。

食後にもかかわらず空腹感を感じたり、吐き気、疲れやすい、眠気、頭痛、キレやすい、イライラする、集中力低下、冷や汗、消化不良などがみられます。

食べ物による血糖値の上がり具合をGI(グリセミック・インデックス)によって分類しますが、食後急激に血糖を上昇させるものを高GI食品、緩やかに上昇させるものを低GI食品と呼びます。

反応性低血糖の症状が多くなった原因としては、GI値のとても高い精製された炭水化物を多く摂るようになったことが関係しています。これらの食品は消化された後、急激に血糖を下げるために、インスリンが大量に分泌され反応性に低血糖を起こします。

また、この低血糖を改善させるために本来コルチゾールやグルカゴンが分泌されますが、副腎疲労が合併しているとコルチゾールの分泌が低下し、低血糖が遷延することとなります。

砂糖を多く含んだおやつや菓子パン、ジュースなどを控え、GI値の低い食事をとることで症状の改善が期待できます。

小腹が空いて何か食べたいと思ったときの間食は、ナッツやチーズ、ハイカカオチョコレートなど、急激に血糖値を上げないものを選びましょう。

甘いお菓子やジュースは血糖の乱高下につながる

砂糖やブドウ糖がたっぷり入ったお菓子やジュース、店頭のお惣菜、白米、白パンなどの精製された穀物などを食べると体内のビタミンやミネラルが失われたり、血糖値がすぐに上昇したりしてしまいます。

血糖値の上昇に対しては、膵臓からインスリンが分泌され血糖値は安定しますが、繰り返しこのような糖分を摂り続けると、膵臓が疲れてしまい、次第にインスリン分泌量のコントロールができなくなり、必要以上に血糖を下げてしまうようになります。

また、血糖の乱高下は、自律神経を乱してさまざまな症状の原因となります。子どもの多動症やキレやすい、集中力が保てないといった症状のなかには低血糖が関係していることも少なからずあります。

いかがでしたでしょうか。低血糖になった場合には即座のブドウ糖摂取が必要となります。糖尿病の治療をしている方は、常にブドウ糖を携帯することを心がけましょう。ブドウ糖がない場合には、ジュースや飴などで対処するよう心がけておきましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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