唇に麻酔のようなしびれが!三叉神経麻痺や脳卒中の症状の特徴

アイキャッチ 口唇ヘルペスに悩む女性
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口唇がしびれる経験をしたことはありませんか? 唇の感覚は三叉神経が担っており、三叉神経が過敏になると口唇はしびれます。このほかにも口唇のしびれの原因はいくつも考えられ、その中には重篤な病気である脳卒中も含まれます。ここでは口唇がしびれる原因や症状の特徴について見ていきましょう。

口唇ヘルペスによる唇のしびれ

アイキャッチ 口唇ヘルペスに悩む女性

口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型というウイルス感染によって、腫れや赤いぶつぶつ(水疱)、痛みなどの症状が口唇に出現します。

2週間ほどで自然に治りますが、一度ウイルス感染すると紫外線や疲労などをきっかけとして再発しやすいという特徴があります。そのため、ストレスを溜めないように日頃から気をつけることが重要となります。

皮膚症状が出る前に皮膚のピリピリ感、チクチク感、むずむず感、熱感、違和感やかゆみなどを感じます。その後半日ほどで赤く腫れあがります。この時期に治療を始めることが有効です。2~3日経過すると、赤く腫れた患部に水ぶくれが生じます。回復期にはかさぶたができ、通常2週間ほどで完治します。

三叉神経麻痺による唇のしびれ

唇と舌がどちらもしびれている場合には、三叉神経の病気が疑われます。唇と舌の感覚をともにつかさどる神経は、三叉神経と呼ばれる脳神経です。

三叉神経は脳神経の中で最も太い神経で、頭蓋内で3つの枝にわかれます。1番目は額の感覚などを、2番目は頬や上唇の感覚などを、3番目は下唇や舌の感覚などをつかさどっています。

そのため、唇と舌がしびれている場合には、三叉神経の2つ目や3つ目の枝に対する損傷が起こっている状態と考えられます。

片側の顔面(頬や顎)にビリッとした電気が走るような電撃痛が走るのが三叉神経痛です。三叉神経痛はトリガーポイントという引き金が存在しており、顔を洗ったり、歯を磨いたり、食事でものを噛んだりした際に電撃痛が走ります。

中には風が当たるだけで痛みが走ったり、歯が痛むこともあります。原因としては三叉神経という脳神経に脳の動脈が接触、刺激することで起きます。耐えがたい痛みであり、引き金となる行為(物を食べる、歯を磨くなど)が怖くてできなくなります。

治療としてはカルバマゼピンというてんかんに使われる薬が有効となります。量を増やしても効かなかったり、副作用が強く出てしまう場合には、脳神経外科で手術を行なって接触している血管をずらす治療が必要となることがあります。

クインケ浮腫による唇のしびれ

クインケ浮腫はなんらかの原因で唇の血管が膨張している状態です。しびれが起こりやすく、かゆみや痛みを感じないことが多く、アレルギー物質との接触や物理的刺激、ストレス、怪我、温度の変化などが原因で発症することが多いです。

下唇やまぶた、顔、口の中が腫れることがあります。かゆみや痛みは感じないことが多いです。目の充血を伴うこともあります。

脳卒中による唇のしびれ

脳卒中とは、脳の血管に障害が起こり、脳が正常に働かなくなった病気の総称です。脳卒中は主に、脳内の血管が裂けて出血を起こす「脳出血」「くも膜下出血」と、脳の血管が詰まってしまう「脳梗塞」に分けられます。

脳出血

脳出血とは、脳内の細い血管が裂けて出血を起こしてしまう病気です。脳出血は、出血が起こった場所によって特徴的な症状が出ますが、どの部位でも比較的よく見られる症状が、頭痛と嘔吐です。

脳出血が起こる原因の9割を占めるのが高血圧です。高血圧によって血管に動脈硬化が生じるようになります。そのことで脆くなってしまっている脳血管に対して、さらに慢性的に血管に圧力がかかり続けることで、血管が破れ脳出血を起こしてしまうのです。

くも膜下出血

脳は外側から、硬膜、くも膜、軟膜という何層かの膜で覆われており、くも膜と軟膜の間を「くも膜下腔」と言います。くも膜下出血とは、脳表面の動脈から出血し、このくも膜下腔に血液が流れ込んだ状態を言います。

くも膜下出血の大部分(80~90%)が脳動脈瘤の破裂によるものです。動脈瘤があるだけでは何も症状はありません。しかし、動脈瘤が破裂すると3分の1が社会復帰が可能で、3分の1が後遺症を残し、3分の1は死亡してしまうと言われるほど重篤な病気となります。

脳動脈瘤がなぜできるのかはまだよくわかっていませんが、血管の弱い部分(分岐部など)にできやすい傾向があります。脳動脈瘤自体には自覚症状はなく、MRIによる詳細な検査で発見できるため、破裂していない状態で治療が可能であればくも膜下出血の予防につながります。

脳梗塞

脳梗塞とは、脳細胞へ血液を送る血管がつまることで脳細胞が死んでしまう病気です。脳梗塞は詰まる場所や、詰まり方によって大きく「アテローム血栓性脳梗塞」「ラクナ梗塞」「心原性脳塞栓症」に分けられます。

脳卒中によって症状が出現する際は口唇のしびれだけでなく、体の片側のしびれ、吐き気・嘔吐、殴られたような頭痛、呂律が回らない、言葉が出にくい、歩きにくい、ものが二重に見えるなどの症状が出てきます。このような症状が出現した際は、脳卒中の可能性が高いため、様子をみたりせずにすぐに医療機関を受診しましょう。

いかがでしたでしょうか。脳卒中による口唇のしびれは緊急を要します。口唇のしびれ以外に付随する症状によって様子を見ることができるのか、すぐに受診が必要になるか変わってきます。上記に示す症状の特徴を理解して、もし症状が出現した際に対応できるようにしましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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