キスでうつる?扁桃炎の症状と風邪との違い

突然のどが痛くなる、扁桃腺が腫れる、熱が出るといった症状が出たことがある人もいらっしゃると思います。扁桃炎は小児や高齢者に多く見られる疾患で、風邪の症状ともよく似ています。
また、扁桃炎はキスでうつるともいわれています。ここでは急性扁桃炎を取り上げ、症状の特徴や感染の仕方、キスでうつることがあるいくつかの病気について解説します。
扁桃炎とは

口を開けたときに、口蓋垂の両側に見える少し表面のブツブツした組織を扁桃腺と言います。扁桃腺は身体の入り口にある免疫の要となる組織です。
扁桃腺の中には免疫を担当する細胞がたくさんあり、細菌やウイルスがやってくるとすぐに反応して炎症を起こします。これが扁桃炎です。
人によってはウイルスや細菌に反応しやすい人がおり、繰り返し扁桃炎に悩むことになります。
また、扁桃炎を繰り返す事で炎症が扁桃でずっと起こり続ける場合や、自分自身の免疫の異常で扁桃腺による炎症が続く場合もあります。このような場合を慢性扁桃炎といいます。
いずれも扁桃での炎症ですが、ここからは細菌やウイルスによる感染で急性に起こる急性扁桃炎のみを取り扱うことにしましょう。
免疫抵抗力が正常な場合、口腔内に入ってくる細菌やウイルスは扁桃腺の免疫細胞達が対応してすぐに除去してくれます。しかし、免疫が低下している場合や、入ってくるウイルスや細菌の量が圧倒的に多い場合にはそうはいきません。
扁桃は腫れて大きくなり、全身の免疫が動員されますから様々な自覚症状が現れてきます。これが急性扁桃炎です。
風邪と似ている扁桃炎の症状

扁桃炎ではどのような症状が出てくるのでしょうか。
まずは扁桃腺そのものの症状です。炎症がおこるとその場所は腫れて、触ると痛みが出るようになります。扁桃腺で炎症が起こると唾液が触れただけでも痛みを感じるようになります。
この痛みの特徴として耳への放散痛があります。のどと耳は耳管という管で繋がっていますから、扁桃腺での炎症が広がったり、扁桃腺付近の炎症によって耳管が狭くなったりすることで耳にも痛みが出てくるのです。
また、全身の免疫反応が亢進している事を反映して全身症状も見られます。発熱、悪寒戦慄、全身倦怠感などの症状が見られてきます。
これらの症状は一般的な風邪の症状と似ています。さらに、風邪の原因となるウイルスが急性扁桃炎を引き起こすこともありますから、風邪に引き続いて急性扁桃炎となる場合もあります。このような場合、風邪の経過に伴って咳や痰などの症状が治まってきているのにだんだんとのどの痛みが強くなってくるといった症状が見られる場合があります。
扁桃炎と風邪の鑑別
のどを覗いてみると扁桃が大きくあかく腫れており、一目見て扁桃腺からきている症状だという事が診断されます。扁桃は発赤腫脹するだけではなく、元々あるブツブツの部分に白っぽい膿栓と呼ばれる物体が付着している所見が見られたり、白苔がついている様子が見られたりします。
また、リンパ節腫脹も見られます。のどの感染を反映して、頸部のリンパ節腫脹が見られることがあります。リンパ節腫脹は触ると痛みがあるのが特徴です。
急性扁桃炎で注意しなければならないのは、扁桃腺だけで炎症が治まらない場合があるという事です。扁桃の周囲は粘膜の下は狭い間隙になっています。この間隙に感染が広がると、広い範囲に感染が広がり、扁桃周囲炎という状態になってしまいます。
こうなると口を開けるのも痛かったり、声が出しにくかったり、飲み込みがしづらかったりといった症状が出てきます。放置しておくと命の危険もある危険な状態です。急性扁桃炎の可能性がある場合には耳鼻科を受診する必要があるのです。
扁桃炎は感染する病気

急性扁桃炎は感染症によって起こってくる事がほとんどです。身体の免疫が弱まったり、一度に大量の原因微生物が身体に入ってきたりすることで感染が成立し、症状が出現してきます。
急性扁桃炎を起こす原因微生物としては、細菌ではA群β溶連菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、フソバクテリウム属などがあります。ウイルスとしてはアデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、エンテロウイルスなどがあります。
この中でも特に多いのがA群β溶連菌という細菌です。この細菌に感染すると扁桃炎が起こりやすいだけではなく、感染が落ち着いた後に腎炎やリウマチ熱と言った別の病気が出てくる事もあるため、早期に治療をする必要があります。
感染例ではまず迅速検査キットによってA群β溶連菌かどうかという検査を行います。これで陽性であればすぐに抗生物質の投与が行われます。陰性であれば、細菌性らしい所見があれば抗生物質の投与が行われますが、そうでなければ痛み止めを内服しつつ経過を見ることになります。
キスでうつることも?
急性扁桃炎を引き起こす細菌やウイルスは、ほとんどが風邪を引き起こすウイルスと同じで、飛沫感染を引き起こす微生物になります。そのため、咳やくしゃみなどによってうつることが多いものです。
なお、キスをした場合は唾液が直接移ることによって感染症がうつりやすく、症状が起こりやすいと言えます。ほかには飛沫のついた衣類や家具に触れたり、大皿などで食事を一緒に食べたりすることによって感染することもあります。
扁桃炎になりやすい人の特徴

扁桃炎になりやすい人は、免疫が弱まっている人になります。小児や高齢者に起こりやすく、特にまだ特定の細菌やウイルスに対して免疫を持っていない小児によく起こってきます。
小児の場合は免疫が完成するまでに時間がかかり、繰り返し感染することもあります。そのような場合、扁桃がだんだんと腫大してきて扁桃腫大が見られます。口を開けて中を見せてもらうと大きな扁桃が両側からせり出してきているのが分かります。
大人も免疫力が低下している場合にも感染しやすくなります。例えばストレスを強く感じている、疲労状態、寝不足、環境が急激に変化する季節の変わり目、アレルギー、風邪を引いている、のどが乾燥している、喫煙しているなどの条件があると、免疫力が弱まっているために感染しやすくなってしまいます。
このような条件に当てはまる人は急性扁桃炎になりやすいと考えて常日頃から気をつけておく必要があるでしょう。
キスでうつる可能性のある病気

扁桃炎以外にも、キスでうつる可能性がある病気はいくつかあります。その中でも代表的なものを紹介しましょう。
伝染性単核球症
伝染性単核球症は、ヘルペスウイルスの一種であるEBウイルスに感染することによって起こってくる病気です。EBウイルスは、唾液によって人から人へと感染することから、別名Kissingdisease、日本語でもキス病と呼ばれることがあります。なお、EBウイルス以外にもサイトメガロウイルスやHIVウイルスなどが原因で伝染性単核球症を起こすこともありますが、ほとんどがEBウイルスと考えていいでしょう。
何やら難しい名前がついていますが、この病気に感染すると、白血球の一種である単核球が増加することから、このような名前がついているのです。
伝染性単核球症の主な症状としては、疲労感が非常に長く続き、38度以上の発熱が出たり消えたりします。喉の痛みやリンパ節の腫れが特徴になります。リンパ節の腫大は首元が多いですが、他のリンパ節が腫れることもありますし、リンパ節と同じような構造をしている内蔵である脾臓や肝臓が腫れることもあります。また、発疹が見られることもあります。
これらの症状は、EBウイルスに感染してから4週間から6週間ほど経過してから出現してくることが多く、きっかけがいつだったのか分からない事も時々あります。
治療としては、症状を抑える治療が主となります。ウイルスを減少させるような治療はありません。熱を下げるために解熱鎮痛薬を使用したり、痛みを抑えるために抗炎症薬を使用したりします。
これらの治療をしながら経過を見ていると、だいたい2週間から4週間ぐらいで概ね症状は治まってきますが、倦怠感だけは長引くこともあります。
梅毒
梅毒はキスによっても感染することがあります。梅毒の原因となるのは、梅毒トレポネーマという細菌の一種です。感染者の粘膜との接触によって感染します。通常であればほとんど感染することはないのですが、口唇ヘルペスや歯肉炎などで口の中に傷がある場合には感染リスクが高まります。
梅毒で注意しなければならないのは、初期のあまり症状がない状態や、全く症状が出ていない感染状態からでも感染が広がることがある点です。治療をしなければ症状が治まった後も感染力をもつ潜伏期となりますから、感染のリスクがあります。
B型肝炎
B型肝炎も粘膜の接触によって感染する病気です。ただし、感染力はそこまで強くありませんので、軽いキス程度であれば感染のリスクはほとんどありません。ただし唾液にもウイルスは少量含まれていますので全く感染しないということはありません。
また、回し飲みなどをすることでも100%感染しないとは言い切れません。避けておいた方がいいでしょう。