外傷はないのに触ると痛い!皮膚に痛みを感じる原因とは
怪我をしていないのに皮膚が痛いという経験をされる方がいらっしゃいます。では、こうした皮膚の痛みはどのような原因で起こってくるのでしょうか。ここでは皮膚に痛みを感じるメカニズムや関連する疾患について解説します。
外傷はないのに皮膚が痛くなるのはなぜ?
外傷がないのに皮膚が痛くなるのには、大きく分けて3つの理由があります。皮膚の痛みは、皮膚にあるいたみの受容器が痛みを検知して、それを神経が伝える事で痛みを感じてきます。
そのため、まず皮膚自体に何か異常が起こってきたときに痛みを感じます。多くの場合汗によって引き起こされる痛みです。
続いて起こってくるのが、同じように皮膚自体の問題ではあるのですが、汗ではなく皮膚が乾燥することによって起こってくる痛みです。
最後に考えられるのが、神経に問題があって起こってくる痛みです。
汗の影響
汗をかいたときに痛みを感じる場合があります。もちろん、汗そのものが痛みを引き起こすわけではないのですが、汗をかくと蕁麻疹が出てくることで痛みが出てきます。
また、汗が出たあと乾燥する事によっても痛みが起こってくる事があります。汗をかいた後そのまま放置して自然乾燥してしまうと皮脂が奪われ、肌が乾燥した状態となってしまいます。こうなると、次に見るような乾燥した状態による痛みと同じように痛みが出てきてしまうのです。
乾燥によって肌が過敏になる
乾燥によって起こってくる肌の痛みは、肌が過敏になることによって起こってきます。皮膚というのは適度に湿度を持っていることによって外部からの刺激に対応するようにできています。いわばバリアがある状況です。
しかし肌が乾燥してしまうと、肌に亀裂が入ったり、細胞自体がダメージを受けたりすることで皮膚がガサガサになってしまいます。このような状態の皮膚は刺激に対して非常に弱く、場合によっては痛みを感じるようになってくるのです。
神経の障害
神経の障害で起こってくる痛みは、ピリピリ、ジンジンとした痛みです。神経が原因でといっても神経が傷ついて起こってくる事もあれば、帯状疱疹のように感染症によって神経が傷つくことによっても起こる事もあります。
この神経の障害による痛みの特徴は、痛みの種類ももちろんですが、痛みを感じる範囲にも特徴があります。その神経が支配している領域全体が痛むことがほとんどですので、例えば痛いところが帯状に繋がって痛むという事もよくみられる所見になります。
外傷なしでも皮膚に痛みを感じる原因
このように肌は外傷なしでも様々な原因で痛みを感じることがあります。では具体的にどのような病気の時に痛みを感じてくるのでしょうか。
コリン性蕁麻疹
これは汗が関与する蕁麻疹になります。一般的な蕁麻疹では、膨疹といってぷっくりと膨らんだ、蚊に刺された後のような皮疹となります。しかし、汗が関与して蕁麻疹が起こってくるとそれとは違い、赤い点状のぼつぼつとした発疹が見られるのです。
このような発疹の場合、発疹が出現したときにピリピリとした痛みを伴うことが多くなります。このように、汗が関与して点状のぼつぼつした蕁麻疹が出てくる状態をコリン性蕁麻疹と言います。
コリン性蕁麻疹は小児期から青年期に多くみられ、高齢になるとみられなくなります。汗をあまり掻かない人が急に汗をかくことで発症する事が多いと言われています。
コリン性という名前は、アセチルコリンという物質の名前に由来します。汗を出すように指令を出すのは交感神経という神経ですが、交感神経によってアセチルコリンという物質が出ることで皮膚にある汗腺が反応し、汗が分泌されます。そのため、このアセチルコリンのせいで汗が出て皮疹が出てくることからコリン性蕁麻疹と呼ばれています。
対策としては通常のアレルギーと同じようにアレルギーの薬である抗ヒスタミン薬を内服するのが基本になります。また、普段から入浴や運動などをして積極的に汗をかくことで蕁麻疹が治まることもあります。
神経障害性疼痛
神経障害性疼痛は前述の通り、様々な原因で神経が傷害される事で皮膚に痛みを生じてくる状態です。
例えば腰部脊柱管狭窄症では腰の部分で神経が圧迫されることで、腰から下の下肢に痛みが生じてきます。痛みの種類はビリビリジンジンとした痛みになります。同じように、寝ている時の姿勢が悪くて神経を圧迫したまま寝てしまうと、痛みが出てくることもあります。
神経障害性疼痛がやっかいなのは、神経自体が痛んでいるときに痛みが起こるのももちろんですが、神経が修復される過程でも痛みを感じるという事です。神経が治るときにもジンジンとした痛みがずっと続くのです。
そして、神経が治るのには非常に長い期間がかかり、一生痛みが続くという事も時折あるのです。
そうならないために、神経障害性疼痛と思われる痛みがある場合は早めに原因の除去をする必要があります。例えば腰部脊柱管狭窄症であれば、痛みの改善がなく、麻痺が起こるようになってきた場合には手術を行うことで神経の圧迫を解除し、痛みが起こりにくくする対策が取られます。
それまでに積み重なってきた神経へのダメージは中々回復するものではありませんので、痛みが長い期間にわたって残ってしまう場合もあります。
神経障害性疼痛の治療として、内服薬や神経ブロックが行われます。
内服の薬としては、一般的な痛み止めはあまり効果がありませんので専用の痛み止めや抗てんかん薬、一部の抗うつ薬などが使用されます。
神経ブロックは、痛んでいる神経の根元付近に局所麻酔をすることで行われます。局所麻酔ですので一度行ったらすぐに症状が消失しますが、薬の効果が消失するとまた痛みが再発してきます。何度もブロックを繰り返すことで痛みが無い状態をだんだんと取り戻すことが可能になるという治療になります。
これらの治療は単独で行うのではなく、複数の治療を複合して行う事で痛みを抑えていくのです。
帯状疱疹
帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルスによって起こってくる病気です。
水痘帯状疱疹ウイルスは、幼少期に感染すると水疱瘡を引き起こします。水疱瘡は数日で改善しますが、症状が治まっても身体の中にウイルスはそのまま残り続けます。
ほとんどの場合、神経の細胞の内部にとどまり続けます。身体の免疫もしっかりと働いていますから、ウイルスは増殖することなくそのまま神経細胞の中に残ります。
しかし、疲労や病気など、何らかの原因で免疫力が低下してしまうと、ウイルスが急に増殖を始めてしまいます。増殖したウイルスは神経の中を増殖して行きます。このウイルスの増殖、進展に伴って神経が損傷を受けるため、痛みを感じるのです。ですので、帯状疱疹では神経障害性疼痛が起こってくるのです。
痛みは神経の走行に沿って広がるため、その名の通り帯状に広がって行きます。痛みに引き続いて水疱が皮膚にできてきて、表面から見ても帯状に広がっているのが確認できます。
そして、皮疹自体は時間の経過とともに茶褐色の瘢痕として残ります。一部の場合においては神経損傷が残り、その修復のために神経障害性疼痛が生じます。
このように、帯状疱疹は後遺症が残ってしまう事が多くあります。ワクチン接種も行われていますので、対象の年齢の方は接種を検討してみるとよいでしょう。
更年期障害
更年期障害でも皮膚の痛みを感じることがあります。更年期障害になると女性ホルモンがアンバランスとなり、身体の調子を司る自立神経にも悪影響が及びます。
自律神経系の不調はめまいや頭痛、手足の冷え、ほてりなどがあり、これに加えて時々皮膚の神経に異常を来し、皮膚がヒリヒリするような感覚を覚えることがあります。この皮膚のヒリヒリが生じる場所ははっきりしないことが多く、また日によって場所が異なることもあります。
外傷がなくても手足が痛くなる原因を様々に列挙しましたが、いずれにしても原因がすぐに分かることはなかなかありません。先ずは皮膚科を受診し、医師と相談しながら根気よく原因を探していくことになるでしょう。