ストレスで感情がなくなる?統合失調症や失感情症の特徴
感情に乏しくなった、感情を上手く表現できなくなった、といった経験はありますか? あるいはそのような人を見かけたことはないでしょうか?
感情の乏しさや意欲の低下はストレスと関連があると考えられています。また、統合失調症や失感情症といった病気では感情がなくなったように見えることがあります。ここではこれらの病気と感情との関わりについて見ていきましょう。
統合失調症とは
統合失調症とは、妄想や幻聴といった非現実的な体験が生じたり、喜怒哀楽や意欲が低下したりする精神疾患です。
周囲が嫌がらせをしてくる、隣の人がジロジロと見てくるなどという被害妄想が強くなると、些細な言動に過敏になり、イライラした態度になりやすいと言えます。この症状は、脳の前頭葉や辺縁系といった部位の機能障害が原因とされています。
被害妄想の背景にあるのは強い恐怖の感情です。現実的ではない不安や恐怖の感覚が襲ってくる場合、統合失調症の可能性があります。
統合失調症の陽性症状
統合失調症の症状は大きく陽性症状(妄想、幻覚、思考障害)と、陰性症状(感情の平板化、思考の貧困、意欲の欠如、自閉)、認知機能障害(記憶力の低下、注意・集中力の低下、判断力の低下)があります。ここでは陽性症状の内、妄想と幻覚について説明します。
妄想
妄想とは、実際にはあり得ないことを強い確信をもって信じていることをいいます。単に内容が奇異であるだけでなく、本人の説明も論理的に飛躍があり、通常は考えられない理由づけをして強く確信して修正が不可能な場合が多くあります。
例えば、テレビで自分のことが話題になっている、すれ違う人が全員自分の悪口を言っている、警察にずっと尾行されている、道を歩くとみんなが自分をチラチラ見ていくるなどといった迫害妄想、被害妄想、追跡妄想、注察妄想、関係妄想などがあり、これら全体を被害妄想と消します。時折、何かを過大に表現したり感じたりする誇大妄想もみられます。
幻覚
幻覚とは、対象のないところに知覚が生じることです。単に物音がするとか人が話しかけているということだけではなく、自分に対して何かを語りかけるような意味が伴っています。
その内容は、本人の価値観や関心と関連していることが多く、もとは本人の気持ちや考えであり、本人にとってはこれらの幻覚などが現実のこととして体験され、不安や恐怖に陥ります。
統合失調症の陰性症状
陽性症状といわれる妄想や幻覚のような明らかな症状がなく、単に思考や行動のまとまりのなさ、能率の低下、ひきこもりだけが生じる場合もあります。
喜怒哀楽の表現が乏しくなり、他者の感情表現への共感が難しい感情の平板化、会話の中で比喩などの抽象的な言い回しが使えなかったり理解できなかったりする思考の貧困、自発的な何かを行おうとする意欲がなくなってしまったり、一旦始めた行動を続けるのが難しい意欲の欠如、自分の世界に閉じこもり、他者とコミュニケーションをとらなくなる自閉があります。
感情の平板化(感情鈍麻)
単なる気分の高揚や落ち込みとは異なり、感情そのものの動きが鈍くなり、起伏も乏しくなります。感情の表し方がわからなくなり、喜怒哀楽の表現がうまくできなくなります。
意欲の減退
仕事や家事、勉強などへの意欲や気力がわかず、取り組むことができなくなります。周りのことに興味や関心を示さなくなり、入浴や洗面、着替えなど、身だしなみを整えることにも無頓着になります。
集中力・持続力の低下
集中力が低下し、何かに手をつけても続けることができなくなります。同時に複数のことを行うことが困難になり、疲れやすくなります。
対人コミュニケーションの支障
他人との関わりを避け、自室に引きこもりがちになります。1日中、何をすることもなくぼんやりと過ごし、社会性が低下します。
感情を言語化できない失感情症とは
失感情症はアレキシサイミアといい、シフネオスが提唱した性格特性です。自分の感情(情動)への気づきや、その感情の言語化の障害、また内省の乏しさといった点に特徴があり、一般人の10.1〜16.3%にみられると言われています。
失感情症という言葉からは、感情が失われた病気をイメージしてしまいそうですが、実際はそうではありません。
失感情症は全身の倦怠感や胃もたれなどのはっきりとした身体症状をはじめ、摂食障害や食物依存症のように人によっては自覚までに時間のかかる症状をきたします。精神面にも影響を与えやすく、うつ病や統合失調症にかかるケースもみられます。
つらい状況になったとしても感情を表に出さないため、周りの人からは、我慢強い人、喜怒哀楽を出さない人とみられる傾向があります。また、感情を認知できないため、感情と行動がずれてしまい、相手に悪いイメージを与える場合もあります。
例えば、何か悲しい出来事を生じた時でも、悲しい感情・取るべき行動がわかりません。その場にいる全員が悲しい気持ちになっているにもかかわらず、自分だけいつもと変わらないため、空気が読めないと言われる場合があります。
それに加えて、自分の気持ちがわからないため、他人の気持ちも考えられず、対人関係を築くことが困難になります。その結果、コミュニケーションが下手・人の気持ちが考えられないなどと思われてしまいます。