甘酒が「飲む点滴」と呼ばれる理由は?夏バテ防止に役立つ栄養素

お悩み

夏になって食欲があまりわかず、身体がどんどんだるくなってしまう夏バテ。経験のある方も多いのではないでしょうか。

ここでは夏バテ防止に役立つ栄養素に注目してみましょう。「飲む点滴」と呼ばれる甘酒の効用についても紹介します。

夏バテの原因は?

眠れないまま朝 どうする アイキャッチ

夏バテを引き起こす原因として、次のようなものが考えられます。

発汗によって水分・ミネラルが失われる

夏の暑さで発汗すると、汗とともに体内の水分やミネラルが失われます。ミネラルは体内では作り出せない成分なので、意識的に補給しなければ水分・ミネラル不足の状態となってしまいます。水分やミネラルの不足は、夏バテの症状である脱水症状の原因です。

食欲が低下して栄養素が不足する

食欲不振による栄養不足も、夏バテの症状を重くする原因となります。夏は食欲がわかず、冷たい麺類中心の食事になったり、食事量を減らしてしまいがちです。その結果、必要な栄養素が不足してしまいます。さらに、冷たいものの摂り過ぎは胃腸の不調など消化機能の低下も招いてしまいます。

睡眠の質が低下する

夏は夜間帯の気温が高く湿気が多いことが特徴です。汗も出やすく寝苦しいので、不眠が問題となります。眠りが浅い状況となるので、翌朝すっきりしないという症状が出ます。十分な睡眠がとれていない結果、日中の疲労感、眠気、集中力の低下が出現します。就寝1~2時間前よりエアコン等で部屋を冷やしておくと寝つきが良くなります。

自律神経が乱れる

自律神経は血の巡りや発汗作用の調整により体温を一定に保っています。自律神経には、活動時に活動時に活発になる交感神経と、休息時に働く副交感神経があります。交感神経と副交感神経の切り替えにより、体だけでなく心の状態も正常に保たれます。こうした自律神経の働きが乱れることで夏バテの症状が現れます。

夏バテ防止に役立つ栄養素

夏バテ防止のために積極的に摂取したい栄養素としては次のものが挙げられます。

タンパク質・アミノ酸

タンパク質は、筋肉・臓器・皮膚など人間の身体の材料となる重要な栄養素です。体内環境を維持・調整するホルモン、酵素、抗体なども、主要な構成成分はタンパク質です。

タンパク質が不足すると虚弱や免疫機能の低下など、体の全般的な不調の原因になります。タンパク質を多く含む食品としては、肉類や魚介類、卵、大豆製品、乳製品などが挙げられます。

ビタミンB群

ビタミンB1は、糖質を体内でエネルギーに変換するために必要な栄養素です。疲労回復の効果があり、夏バテの予防にも重要です。豚肉やうなぎ、玄米、ごまに多く含まれます。

ビタミンB2は、特に脂質を体内でエネルギーに変換するために必要な栄養素です。レバー、うなぎ、牛乳、納豆に多く含まれます。

ミネラル

ミネラルは、人間が生きていく上で不可欠な元素のうち、生体を構成する主要な4元素(酸素・炭素・水素・窒素)以外の元素の総称です。ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などで16種類程度が知られています。

ミネラルは体内で合成できないので、食べ物から摂らなければなりません。汗をかくことで失われやすいため、夏は特に摂取することを心がけましょう。

代表的なミネラルを多く含む食品としては、ナトリウムを含む食塩、カリウムを含む野菜類や果物類、カルシウムを含む乳製品、マグネシウムを含む海藻類、鉄を含むレバー、亜鉛を含む煮干しなどが挙げられます。

夏バテにも効果的?甘酒が「飲む点滴」と呼ばれる理由

甘酒は夏バテ防止や産後の滋養強壮にも役立てられており、飲む点滴と呼ばれます。甘酒の成分はどのようなものでしょうか。

アミノ酸

体内ではつくることができないため、必ず食物から補わなければならない9種類の必須アミノ酸が甘酒にはすべて入っています。

ビタミンB群(ビタミンB1、B2、B6)

代謝を助け、エネルギーを生み出すのにも使われるビタミンB群は、元気な体をサポートしてくれます。甘酒に含まれるビタミンB1には疲労回復効果、ビタミンB2には新陳代謝の促進、ビタミンB6にはホルモンのバランスを保って、皮膚や粘膜の健康を維持する働きがあります。

ブドウ糖

ブドウ糖が不足すると脳が正常に働かず、集中力や記憶力に支障が出ることがあります。甘酒には脳の主要な栄養素であるブドウ糖も含まれています。

食物繊維

甘酒には腸内環境を整え、便秘の解消にも役立つ食物繊維が含まれています。

オリゴ糖

腸内にいるビフィズス菌などの善玉菌の栄養となるオリゴ糖。腸内環境が改善されると、風邪をひきにくくなったり、免疫力が向上することもわかっています。

上記に挙げたように甘酒にはさまざまな栄養素を含んでいます。実は甘酒には二種類存在しており、一つは酒粕と水、それに砂糖を加えた酒粕甘酒、もう一つは麹と水だけを原料とする麹甘酒です。麹甘酒は砂糖を使わない代わりに、麹の酵素の力で米のでんぷんを糖化させて優しい甘みを引き出したものです。アルコールを一切含まないため、誰でも飲むことができます。

いかがでしたでしょうか。暑さで食欲が低下して夏バテの症状が現れるようなら、必要な栄養素をしっかり摂取できているかどうか一度確認してみましょう。ここで紹介した甘酒を取り入れてみるのもよいでしょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

プロフィール

関連記事