足の毛細血管が見える原因に!下肢静脈瘤の種類と特徴

ふくらはぎを気にする女性
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足の毛細血管が目立つのが気になっている方はいらっしゃいませんか? 血管が太く浮き出ていたり、コブ状に膨らんでいたりする場合は下肢静脈瘤が疑われます。

下肢静脈瘤にはいくつもの種類があり、血管が浮き出てくる部位や、血管の見え方も異なります。ここでは下肢静脈瘤の種類と特徴について解説します。

足の毛細血管が見える原因になる下肢静脈瘤

下肢静脈瘤イラスト

体のすみずみに行きわたった血液が、心臓に戻る血管を静脈といい、足の静脈が太くなって瘤(こぶ)状に浮き出て見えるようになった状態を下肢静脈瘤といいます。

下半身の静脈血が心臓に戻ってくる際には、血液の逆流を防止する静脈弁が重要な役割を果たしていますが、静脈弁の機能が低下するなどによって逆流する血液が多くなると、血液が下半身にたまって血管が拡張して盛り上がる状態が下肢静脈瘤です。

下肢静脈瘤は静脈弁自体に問題がある、あるいは深部静脈血栓症などの病気や妊娠が原因となって発症することもあります。

下肢静脈瘤に伴う症状

基本的に自然に治ることはなく、時間の経過と共にゆっくりと進行し、代表的な症状としては主に血管が浮き出て下肢が重くだるいような疲労感やほてり感を自覚する、下肢が痛み浮腫が認められる、足に湿疹が形成されて皮膚炎や色素沈着になるなどが考えられます。

ひどい場合には、下肢に潰瘍が形成されて感染して全身状態が悪くなる場合もありますし、下肢全体がこぶのように浮き上がった外見を呈する為に精神的に苦痛を大きく感じるケースも見受けられます。

下肢静脈瘤に気づくきっかけ

静脈血の逆流によってできる下肢静脈瘤は、「足の静脈が太く浮き出ている」「血管がコブ状に膨らんでボコボコしている」など、その特徴的な外見から症状に気づく場合が多いです。

外見的な症状以外にも、慢性的に足の疲れを感じる、あるいは強い浮腫やこむら返りが起きやすいなど血流の悪化による足の不快感などの症状を伴うこともあります。

下肢静脈瘤は、症状が深刻化すると、皮膚が黒ずんで色素沈着を呈する、あるいは皮膚潰瘍ができて痛みを伴う場合も想定されますので、足の変化が気になる時は血管外科、あるいはフットケア外来など下肢静脈瘤の専門医療機関を受診して相談しましょう。

下肢静脈瘤の種類

下肢静脈瘤には次に挙げるように、クモの巣状静脈瘤、網目状静脈瘤、側枝型静脈瘤、伏在型静脈瘤といった種類があります。

クモの巣状静脈瘤

毛細血管もしくは細い皮下静脈だけが壊れることで生じるタイプの下肢静脈瘤であり、非常に細くてはっきりした赤紫色の蛇行した血管が、放射状もしくは平行に認められます。

通常、大腿部、下腿部、膝裏などの領域によくみられるタイプであり、下肢の疼痛症状や倦怠感などの症状を認めることはなく様子観察することが多い下肢静脈瘤の種類と考えられています。

皮膚に近くとても細い静脈(真皮内静脈:直径1mm以下)が拡張してできた静脈瘤であり、血管がクモの巣のように放射状に広がって見えるのが特徴的です。

網目状静脈瘤

皮下の浅いところにある細い静脈(皮下静脈:直径約2mm)が拡張してできた静脈瘤のことであり、青色に浮き上がってみえるのが特徴的です。

網の目にみえることが多く、血管の隆起(ボコボコ)は認められない網目状静脈瘤も、クモの巣状静脈瘤と同様に毛細血管もしくは細い皮下静脈だけが壊れることで生じる種類であり、やや太い静脈が拡張蛇行したもので青色の様相を呈することが多いと言われています。

基本的には、下肢の痛みやだるさなどの症状につながることはありませんが、症状がひどい場合には治療方法として硬化療法や圧迫療法が施行されます。

側枝型静脈瘤

側枝型静脈瘤とは文字どおりに、下肢静脈の側枝が壊れることで生じるタイプの下肢静脈瘤のことです。

伏在静脈から枝分かれした静脈で、さらに分岐した先にある枝の一部が膨らみ、静脈瘤になったタイプであり、分枝(ぶんし)静脈瘤とも呼ばれます。

主に、ふくらはぎの部位にできることが多いのですが、伏在型に比べるとやや細めで範囲が狭く、症状も軽い場合が多いと言われています。

クモの巣状・網目状の下肢静脈瘤とは明らかに外表上の所見が異なり、側枝型静脈瘤は、毛細血管より太くて深い血管が壊れているので、血管の形が浮き上がってコブのように見える一方で、色調はあまり目立たない特徴があります。

一般的には、有意な症状を伴わないことが多いですが、時に下肢の倦怠感や湿疹などを伴うことがあり、場合によっては治療が必要になります。

側枝型静脈瘤の治療方法としては、その重症度に応じて、瘤になっている部分を直接切除する抜去切除術、あるいは静脈瘤の血管に注射する硬化療法や圧迫療法などが挙げられます。

伏在型静脈瘤

伏在型静脈瘤(ふくざいがたじょうみゃくりゅう)は、足の最も太い表在静脈である大伏在静脈、小伏在静脈に形成される静脈瘤です。

下肢静脈瘤の患者さんの約75%程度がこのタイプに該当するといわれていて、伏在型静脈瘤はその名前のごとく、伏在静脈の破壊を伴った下肢静脈瘤の種類です。

伏在静脈だけが障害を受けていることは珍しく、それ以外にも側枝静脈の破壊像を伴っており、外見上は側枝型静脈瘤と類似しています。

伏在型静脈瘤の場合は、病状が悪化すると倦怠感などの症状だけではなく、下半身の湿疹や皮膚潰瘍といった深刻な皮膚症状を呈することもあるので、通常治療の対象となります。

下肢静脈瘤とよく似た深部静脈血栓症とは

ふくらはぎを気にする女性

深部静脈血栓症は、静脈の内皮障害や血液の凝固亢進、あるいは静脈の血流停滞によって特に下肢静脈に血栓を形成し、その静脈血栓が肺動脈を閉塞することで呼吸循環障害や突然死の原因となる肺動脈血栓塞栓症を併発する病気です。

この病気は、健常者よりも体質的に血液が固まりやすく、静脈瘤等があり静脈内血流が悪い、静脈の壁が傷つきやすい、という三つの条件が重なった際に引き起こされやすくなります。

深部静脈血栓症では、通常入院中で寝たきり期間が長い患者さんや航空機などで長距離移動をする場合によくみられることが知られており、特に旅行者に発症するものをエコノミークラス症候群と呼んでいます。

これらの状態においては、長い時間をかけて足を動かすことがないために足の血液の流れが悪くなることによって、足の静脈のなかに血栓と呼ばれる血の塊ができやすくなります。

足にできた血栓は歩行動作などを契機にして、突如として血液の流れに乗って肺まで到達することがあり、肺に到達した血栓が肺の血管を塞いでしまうと、胸の痛みや息切れなどの症状が現れるようになります。

まとめ

これまで、足の毛細血管が見える原因になる下肢静脈瘤の種類と特徴を解説してきました。

下肢静脈瘤は、下肢の血管の病気であり、文字どおり静脈血管がコブ(瘤)のように膨隆してふくらんだ状態を指していて、クモの巣状静脈瘤、網目状静脈瘤、側枝型静脈瘤、伏在型静脈瘤など大きく分けて4つの種類があります。

一般的には、ボコボコと瘤になる伏在型静脈瘤・側枝型静脈瘤、青や赤紫に浮き出る網目状静脈瘤・クモの巣状静脈瘤に分類されています。

下肢静脈瘤は、基本的には良性の病気ですので、直接的に命に係わることはほぼありませんが、足の毛細血管が見える原因にもつながり、慢性的に足のだるさや痛み、浮腫などの症状が認められて生活の質を低下させる疾患です。

また、深部静脈血栓症とは、一般的には下肢や下腹部に存在している深部静脈と呼ばれる血管に血の塊が形成される病気を意味しています。

本疾患における主な症状は下肢の腫れや痛み、皮膚の色調変化などが挙げられており、さらに血の塊である血栓が足の静脈の壁から剥がれて心臓や肺に到達すると肺塞栓症を発症して呼吸困難などの重篤な状態を引き起こしますので、注意が必要です。

今回の情報が参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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