変形性股関節症でしてはいけないことと、痛みを和らげる生活習慣

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年齢を重ねると歩くときや立ち上がるときに股関節の痛みを感じるようになります。特に股関節の変形を伴う変形性股関節症になると痛みが強くなってきます。変形性股関節症ではどのようなことに気をつければ良いのでしょうか。ここでは、変形性股関節症と診断された人がしてはいけないことや、痛みを和らげる生活習慣について解説します。

変形性股関節症の原因と症状

変形性股関節症の解説イラスト

変形性股関節症は、加齢によって軟骨がすり減ることによって起こってきます。軟骨がすり減ると、その下にある骨に圧力がかかり、だんだんと骨も変形してきます。骨が変形すると炎症が起こってきます。

この炎症が痛みの原因となり、さらなる変形の原因ともなってくるのです。また骨のズレは軟骨への負担となり、軟骨の状態の悪化がさらに進行して行ってしまいます。

変形性股関節症の原因

変形性股関節症が起こる原因としてよく言われるのは、臼蓋形成不全です。臼蓋というのは股関節のうち、骨盤側の大腿骨を受け止める部分です。この部分が先天的に弱くなっており足から加わる力をダイレクトに受け止めてしまうことから変形が生じてきます。

この臼蓋形成不全は圧倒的に女性に多いため、変形性股関節症の患者さんも女性が多くなります。ほかには肥満や遺伝、重労働などが変形性股関節症の危険因子としてあげられます。

変形性股関節症の症状の特徴

痛みの症状は、軟骨がすり減っているだけの段階ではほとんど感じることがありません。軟骨が大きくすり減ってきたころにだんだんと痛みを感じるようになってきます。痛みがある場所は股関節の付け根付近で、立ち上がったり歩き始めたりするなど股関節を動かすときに痛みを感じるようになります。

また症状が進行するにつれて痛みが強くなりますし、痛みが強くなることで周辺の筋肉のこわばりも強くなり、関節の動きが悪くなります。足の爪を切ったり靴下をはいたりといった行動ができなくなってきます。このように痛みと変形によって股関節の動きが制限されてくるのです。

変形性股関節症の禁忌肢位

変形性股関節症の場合、特定の行為や体勢が痛みを悪化させたり、病状をさらに悪化させたりします。このような体位のことを禁忌肢位といいます。どのような行為が禁忌肢位に当たるのでしょうか。

股関節をひねる動作

股関節に強いゆがみの力がかかる姿勢を長い時間取ることはよくありません。

あぐらや正座といった体勢は、曲がった状態を長い時間維持しますので、股関節にストレスがかかり、病状を悪化させる可能性があります。痛みが増悪したり、関節の変形を来したりします。

正座やあぐらに限らず、股関節を曲げて膝を内側に入れる動作は禁忌肢位と言われています。

変形性股関節症の人は地べたに座るのではなく、椅子に座るようにした方が良いでしょう。寝る姿勢も布団ではなくベッドやマットレスのように高さのあるものにしておいた方が無難です。

深くしゃがむ動作

低い椅子で立ったり座ったりを繰り返したり、和式トイレでしゃがんだり、靴下やズボンをはいたりといった股関節を強く曲げて行う動作は、股関節に負担をかけるため禁忌肢位になります。

椅子は高めのものにする、トイレは和式ではなく洋式にするなどの工夫が必要です。

股関節に大きな負荷をかける動作

後述の通り、股関節周辺の筋肉をつけるような軽い運動は股関節にとってよい運動となり、変形性股関節症の痛みの緩和に効果を期待できます。

しかし、無理な姿勢でのストレッチや、強く曲げ伸ばしを行うようなストレッチは避けた方がよいです。スクワットや開脚前屈といった股関節を大きく曲げ伸ばす運動は股関節に負担をかけるので避けるべきです。

痛みを和らげる生活習慣

川沿いをウォーキング

変形性股関節症になったとき、どのような生活習慣を行うことで悪化を防ぎ、痛みがなるべく無いような生活ができるのでしょうか。

負担をかけない歩き方

変形性股関節症の人にとって股関節に最も負荷がかかるのが歩行です。歩くときも股関節に負担がかからないことを意識する必要があります。早足で歩くと股関節に負担がかかりますから、できるだけゆっくり、疲れないペースでの歩行が必要になります。

また、長時間の歩行も負担となりますから、10~15分程度の歩行毎に休憩を取り、痛みがある時は無理をしないことが大切です。

股関節周辺の筋肉を鍛える

変形性股関節症の場合、股関節周囲の筋肉を軽くほぐして鍛えることで股関節の安定性が向上し、症状が緩和してきます。

もともと変形性股関節症の場合、痛みがあることで関節を動かさないことから関節が硬くなっていたり、筋肉や靱帯などの軟部組織が硬くなっていたりします。それを動かす事で痛みが出てきますから、ストレッチでほぐしてやることで痛みが緩和します。

また、筋力が上がると関節にかかる負担が軽減されます。特に大臀筋や中臀筋といったお尻の筋肉や、内転筋といった内ももの筋肉は体重を支えて姿勢を保つために必要な筋肉です。これらの筋肉がしっかり働くことで股関節にかかる力を軽減し、痛みを緩和することができます。

関節可動域が狭まっていて動きが悪いときには、ストレッチやマッサージ、関節運動などで柔軟性を上げていきます。股関節を横に開いたり前後に開いたりといったストレッチや、手を使って股関節周囲の筋肉をほぐす方法があります。また、振動刺激を与えたり、ジグリングと言って貧乏揺すりをすることで血流を改善できます。

筋力トレーニングとしては、うつ伏せで足を後ろに上げる運動や、横向きに寝て足を天井の方に上げるといった運動が効果的です。また、内旋筋や外旋筋といったインナーマッスルを鍛えるために、股関節をねじる運動も重要です。

ほかには骨盤を支える脊柱起立筋などの筋トレも、身体を支えて股関節を安定化させ、痛みを緩和することにつながります。

四つん這いになってゆっくり片足を地面から上げて後方に伸ばす運動をします。このとき、なるべく膝を伸ばして体幹から足が一直線になるようにするのがポイントです。この姿勢を5秒程度維持し、その後足を下ろして四つん這いに戻って反対側の足も同じようにトレーニングします。

また、水中でのウォーキングも効果的です。浮力によって体重が股関節にあまりかからないので、股関節の負担を最小限にしながら筋肉をつけることができます。

このような筋トレは、一度に強い強度で行ってしまうと股関節に強い負担がかかってしまうので、少しずつ段階的に負荷を強くしていくように心がけてください。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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