胃がピクピクするけど痛くない?おなかが痙攣する原因は?

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胃のあたりがピクピクと痙攣するような違和感を感じたことはないでしょうか? 痛みを伴う場合、伴わない場合、あるいは初めは痛くなかったのに次第に痛みが出てくる場合もあります。

ここでは胃のまわりやお腹がピクピクするような感覚を取り上げ、考えられるいくつなの原因について解説します。

胃がピクピクする感じがする胃痙攣

胃痙攣とは、胃壁の筋層組織が何らかの原因によって異常に緊張して、胃が震えて痙攣するように痛む状態を指しています。

実際に胃が痙攣しているわけではなく、胃の炎症によって痛みが起きて、胃壁の緊張によって痙攣している感覚になります。

筋肉には、自分の意思で動かせる筋肉と動かせない筋肉がありますが、胃壁の筋肉は後者であり、胃痙攣を引き起こす胃壁の筋肉の緊張は、自分の意思とは関係なく起きるので違和感を覚え、それが「胃が痙攣しているという感じ」になります。

胃が震えているような感覚を覚え、みぞおちの辺りが激しく痛み、吐き気や嘔吐も伴うとても辛い症状となります。

胃壁の筋肉の緊張が強まると激しい痛みになりますし、胃炎が悪化してその痛みで胃壁の筋肉が緊張し、胃痙攣を起こすことがあります。

胃痙攣の症状の特徴

胃痙攣に伴う主な症状としては、食べ物や飲み物を摂取したときにみぞおち周辺部に急に腹痛、嘔吐、下痢、食欲不振などの症状を引き起こすことがあります。

突然起きることは胃痙攣の重要な条件であり、痛くない状態から急に痛みが起きますし、痛み自体は、食べたり飲んだりした直後に起きやすい傾向があります。じわじわと徐々に胃痛を自覚することは少なく、急激に激しく疼痛症状が出現するのが特徴のひとつです。

胃痙攣では多くの場合、冷汗が出る、吐き気や嘔吐がある、下痢、食欲不振、めまい、ふらつき、動悸や貧血症状などの症状を合併します。

ひどい場合には、冷や汗をかいて動けなくなってしまうほど強い痛みを自覚することもあります。

痛み自体の発作時間は短くて数分で改善することもありますが、長い場合にはおよそ1~2時間程度症状が継続することも場合によっては考えられます。

胃痙攣の原因

胃痙攣の原因で最も多いと考えられているのが、精神的なストレスです。

慢性的なストレスに曝露されることで胃が痛くなることも想定されますが、通常では急激にストレスを自覚した際に胃痙攣の症状が出現しやすいと考えられています。

また、日常的な食生活における暴飲暴食が胃痙攣の原因になることもあります。アルコールやコーヒー、香辛料、冷たい食べ物や刺激物などを過量に摂取するなど暴飲暴食を継続することで胃自体に負担をかけ、胃痛症状が出現することがあります。

また、タバコを多量に吸いすぎている場合も胃粘膜に悪影響を及ぼして胃痙攣症状を呈することが考えられます。

お腹が痙攣するタイプの腹痛

内臓痛(visceral pain)とは、平滑筋の過伸展・拡張・収縮などによって生じる痛みを指し、体性痛にくらべて痛みの部位や位置が不明瞭で明確ではありません。

「局在がはっきりしない周期的な鈍痛や灼熱感」として訴えられる痛みであり、主に胃や腸などの管腔臓器の急激な拡張、痙攣性収縮などが原因とされています。

障害された臓器を支配する神経は自律神経と走行をともにするため、刺激を受け、しばしば自律神経症状(悪心・嘔吐、発汗、頻脈など)を伴います。

内臓痛が強くなると、脊髄後根で同一脳脊髄神経側に刺激が洩れて、その神経分節に属する皮膚領域の痛みとして感じることが多く、これを関連痛と呼んでいます。

内臓痛が生じるメカニズム

お腹全体や中心付近が痛む場合は、内臓痛の疑いがあり、主に胃腸が引っ張られる、収縮する、張る刺激が原因となります。

内臓痛は、内臓が感じる痛みですが、肝臓・腎臓などの実質部は通常痛みを感じません。

内臓痛を生じる刺激は体性痛とは異なり、内臓は熱刺激に反応しませんし、管腔臓器は切られても痛みを感じません。

その一方で、腹膜の過伸展により痛みを生じますし、平滑筋の痙攣性収縮でも痛みを感じます。

内臓痛は侵害受容器を介する痛み(侵害受容性痛)と、介さない痛みに大別されます。

侵害受容器とは痛みを起こす刺激(侵害刺激)の受容器であり、熱刺激・機械刺激・化学刺激の受容器が該当します。

侵害受容性痛には、「つねった時痛み」「熱いものに触った時の痛み」など病的な意味を持たない痛みと炎症による痛み(炎症性痛)が含まれます。

また、侵害受容器を介さない痛みとしては、神経障害に起因する痛み(神経障害性痛)があります。

お腹の筋肉がつる筋痙攣

筋痙攣(筋肉がつること)は突然起きて短時間持続する、疼痛を伴う筋または筋群の不随意収縮をさしています。

筋痙攣は健常者(通常は中年または高齢者)でよくみられる兆候であり、安静時にも起こりますが、特に運動中もしくは運動後または夜間(睡眠中も含む)に発生します。

お腹のつるような痛みでは、お腹の筋肉が一定期間張っているように感じることがありますし、腹部の張りや膨満感に似ている場合があり、けいれんなどの他の症状を伴うことがよくあります。

お腹にも肉離れのような症状が起こる場合があり、これは筋肉の突発的な収縮によって起こり、特にスポーツや日常生活で急に動いたりした時に起こりやすくなります。

筋痙攣の原因

スポーツやその他の激しい反復運動などにより、筋肉が伸びたり裂けたりすることで痛みが発生します。

それ以外にも、転倒や自動車事故などの事故、慢性的な咳やくしゃみ、激しい過度の運動などでも引き起こされます。

また、重い物を持ち上げる、スポーツや運動をするときの無理にひねるなどの動作でも筋痙攣が出現します。

このような外的な要因だけでなく、それ以外にも、体の内的な病気が原因となっている場合もあります。

また、痛みの部位によって病気が異なるため、あらかじめ把握しておくと原因追求に役立つ場合があります。

まとめ

これまで、胃がピクピクするけど痛くない状態やおなかが痙攣する原因などを中心に解説してきました。

胃痙攣とは、胃壁の筋肉が緊張して、あたかも胃が震えているかのように感じる症状で、みぞおちが激しく痛みます。

そして、筋肉のけいれんとは、突然起きて短時間だけ持続する、意図しない(不随意の)筋肉または筋肉群の収縮で、通常は痛みを伴います。

胃痙攣や筋痙攣はとてもつらい症状ですが、通常は数分で収まることが多いでしょう。ただし、背景に病気が隠れている可能性があることを知っておいてください。

胃痙攣などを繰り返していたり、症状が重かったりしたら、一度クリニックなどに受診した方がよいでしょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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