血栓を防ぐ食品と、ワーファリン服用中に食べてはいけないもの

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血栓症とは、血管内に血の塊が詰まって血の流れを止めてしまう病気です。 この血の塊を「血栓」と言い、血栓ができる場所によってさまざまな病気を引き起こします。 

ここでは血栓ができるのを防ぐのに役立つ食品を紹介します。

血液をさらさらにする薬であるワーファリンを服用中の方もいらっしゃるでしょう。ワーファリンの服用中に避けるべき食品についても確認しましょう。

血栓症とは

血流が速い動脈に血栓ができることを動脈血栓症、血流が遅い静脈に血栓ができることを静脈血栓症と言います。

血栓症は、血管の内皮障害や血液の凝固亢進、あるいは血流の停滞によって全身の様々な血管に血栓を形成して、身体に悪影響を与える重大な病気です。

例を挙げると、深部静脈血栓症などが血栓症の代表的な疾患です。

深部静脈血栓症

深部静脈血栓症は、一般的には下肢や下腹部に存在している深部静脈と呼ばれる血管に血の塊が形成される病気を指しており、主な症状としては下肢の腫れや痛み、皮膚の色調変化などが認められます。

健常者よりも体質的に血液が固まりやすい方において、血の塊である血栓成分が下肢の静脈壁から剥がれて心臓や肺に到達した場合には、肺塞栓症を発症して重篤な状態を引き起こすことも懸念されます。

深部静脈に存在していた血栓が肺に飛散して肺塞栓症に発展した場合には、息切れ、呼吸困難、胸の痛み、冷や汗、失神、血痰などの症状が合併することもあり、突然死に至ることもあります。

血栓症になりやすい人

血栓症は、手術などの処置によって長期的に安静を強いられる方に発症しやすく、妊娠中あるいは巨大な子宮筋腫が存在するために主要な静脈血管が圧迫される場合には通常よりも血栓が形成されやすいと思われます。

また、骨折病変を認めてギプス固定を余儀なくされている人、がんに対する治療を受けており血液凝固に関する機能的な異常がある場合においても血栓症の発症リスクが上昇すると考えられます。

血栓症の予防

全身の血液の循環を良好にするためには、高齢者などにおいて出来る限り起き上がってよく歩き、定期的に運動を実践する、あるいは脱水にならないように小まめに水分を補給するなどの方法が効果的です。

また、理学的に実践されている血栓症に対する予防策としては、下腿部を圧迫する弾性ストッキング、あるいは弾性包帯を装着する方法などが検討されます。

さらに、血栓症を発症した際には、その治療の中心はワーファリンなどをはじめとする薬物療法になります。

血栓症において重要となる予防策は、症状再発しないことであり、それを実行するためには血栓症を発症した原因を念入りに調べることが勧められており、適切な食生活や定期的な運動習慣を持って、ワーファリン服用など抗凝固療法を継続することが重要です。

血栓を防ぐのに役立つ食品

血栓を防ぐのに役立つ食品を紹介します。

たまねぎ、にんにく(アリシン)

たまねぎとニンニクは身近な食材ですが、これらの食品には動脈硬化予防や抗酸化作用などさまざまな健康効果があることが報告されています。

たまねぎやにんにくに含まれるアリシンには、血中のコレステロール上昇を抑え血液をサラサラにする作用がありますし、血液が固まりやすくなるのを防ぎ、血栓形成も予防してくれます。

硫化アリルには血栓を防ぐ作用があることが分かっていて、硫化アリルにはさまざまな種類があり、その代表格がアリシンです。

硫化アリルが脂質と結合することで、ビタミンEと同じような抗酸化性を発揮するために、アリシンを含むたまねぎやニンニクは血栓を防ぐのに役立つ食品と考えられています。

ちなみに、硫化アリルは加熱することで辛味成分が甘味成分に変わってしまうため血液をサラサラにする効果をより期待するのであれば、食品自体を生の状態のままで食べた方が良いといわれています。

青魚(DHA、EPA)

アジ、サバ、イワシ、サンマなど青い魚には、不飽和脂肪酸であるDHA、EPAが含まれています。

これらの成分には、血液中のコレステロールや中性脂肪を減少させ、血液の循環をよくする効果があり、動脈硬化・心臓病・がんの予防につながります。 

また、不飽和脂肪酸は脳の働きを活性化するので、脳卒中や認知症の予防効果が期待できる以外にも、乾燥肌・アトピー性皮膚炎の改善、視力の向上などをもたらすことが知られています。

特に、DHAは、脳を活性化して集中力や判断力、処理能力を高める働きがあると考えられている一方で、EPAには、血栓を防ぐほか、抗炎症作用、免疫調節作用、脂質代謝改善作用などもあるといわれています。

柑橘類(クエン酸)

クエン酸は、疲労回復や活動エネルギーを作り出す働きがあり、人間が生きていく上で必要不可欠な栄養成分です。

ストレスや疲れが溜まると、血液中には「乳酸」が多く蓄積されますが、クエン酸には、その乳酸の発生を抑制する働きがあり、その結果血液をサラサラにします。

また、クエン酸の摂取により血液のpHが弱アルカリ性を保つことで血液の流れが良くなり、血栓の予防に効果を発揮すると考えられています。

ワーファリン服用中に食べてはいけないもの

ワーファリンは、血液をさらさらにする抗凝固薬です。ワーファリンを服用中の人には食べてはいけないものがあります。

ワーファリンの働き

ワーファリンは、ビタミンKの働きを抑えて血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ効果があります。

例えば、人工弁の手術を行った方、あるいは心房細動という不整脈のある場合には、心臓の中で血栓ができやすく、人工弁の障害や脳梗塞、血栓症の発症原因になります。

これらの疾患を予防するために、ワーファリンを服用する必要があり、ワーファリンは時に命にかかわる大切な薬と認識されています。

ビタミンKを摂り過ぎない

生理学的に血液が固まるにはビタミンKが必要なのですが、ワーファリンはそのビタミンKの働きを妨げることにより、血液を固まりにくくします。

したがって、基本的には、ワーファリン服用中はビタミンKを多く含む食べ物を摂取してはいけません。

ワーファリンを服用中の方は次に紹介する食品の摂取には、十分注意する必要があります。

避けた方がよい具体的な食品

納豆には、ビタミンKや、大腸でビタミンKを産生する納豆菌が多く含まれているため、ワーファリンの血液を固まりにくくする作用を弱めてしまうため、ワーファリンを飲んでいる方は、納豆の摂取を控える必要があります。

また、納豆以外にも、クロレラ、青汁なども、納豆と同様にビタミンKを多く含むため、摂取を控えるように指導されています。

まとめ

これまで、血栓を防ぐ食品、ワーファリン服用中に食べてはいけないものなどを中心に解説してきました。

血液をサラサラにして血液と血管の健康を保って血栓形成を予防する食べ物としては、たまねぎ、にんにく、青魚、柑橘類などが挙げられます。

また、ワーファリンは、血液をさらさらにする薬です。

血液の中には出血した時に血を固まらせる物質(血液凝固因子)があり、このうちのいくつかがビタミンKによって肝臓で産生されますが、ワーファリンはこのビタミンKの働きを阻害して血液が固まるのを妨げる薬剤です。

ワーファリンはビタミンKによって効果が減弱するため、ビタミンKを多く含む食品を摂るとワーファリンの効果が弱くなります。

ビタミンKは、主に納豆やクロレラ、青汁などに多く含まれていて、それ以外にも緑色の野菜や海藻類にも多く含まれますので、ワーファリン服用中は納豆やクロレラ、青汁、緑色野菜などは摂らないようにしましょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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