空腹時血糖の基準値と下げるための方法
健康診断で「血糖値が高め」と指摘されたことはありませんか? 健康診断で測定するのは一般的に空腹時血糖値です。他にも食後血糖値やブドウ糖負荷試験による血糖値測定があります。
ここでは特に空腹時血糖値を取り上げ、正常値と糖尿病予備軍とされる数値を確認しましょう。また、空腹時血糖値を下げる方法を紹介するので参考になさってください。
目次
空腹時と食後で異なる血糖値
血糖値は空腹時と食後で変わってきます。どのような違いがあるのか確認しましょう。
空腹時血糖値とは
健康診断で血糖のコントロール機能が正常であるかどうかを判断するには、安定した血糖値を把握する必要があります。
血糖値は食事により大きく変動するため、食事の直後は血糖値の計測に向いていません。食事の影響を受けない状態の血糖値を把握できるのが空腹時血糖値です。
空腹時血糖は、最後の食事から10時間以上経過したところで測定した血糖値のことです。
食事に影響されない状態の安定した値を調べることで、糖尿病の可能性があるかどうかを判断できます。
正確には10時間以上食事を摂らない状態で測定しますが、一般的な健康診断では、朝ごはんを食べずに採血したものを空腹時血糖値と呼んでいます。
食後血糖値だけでなく、食事の影響を受けていない空腹時血糖値も含めて、自分の血糖値に対する体質や、糖尿病のリスクを判断することが大切です。
食後血糖値とは
食後血糖値とは、食後2時間後の状態で測定した血糖の値です。
食事をすることで糖分を負荷して、インスリンが働いているかどうかを評価します。
食前血糖値が良好でも、食後血糖値の状態が悪い場合は注意が必要であり、その数値が140mg/dl以上で境界型、200mg/dl以上で糖尿病型となります。
空腹時血糖値の基準値
空腹時血糖値は109mg/dlまでが正常値ですが、100~109mg/dlは正常高値といわれ、詳しく調べると、糖尿病の場合や糖尿病予備軍の可能性があります。
日本糖尿病学会では、正常な食後血糖値の範囲を70~140mg/dlとしていて、この数値が血糖の基準値となっています。
細かい基準になると、「空腹時の血糖値が110mg/dl未満、食後2時間の血糖値が140mg/dl未満」の場合を正常型としています。
さらに、糖尿病の有無を正確に診断するには、ブドウ糖負荷試験が必要になります。
ブドウ糖負荷試験
ブドウ糖負荷試験とは、75gのブドウ糖を飲んだ後、30分後、60分後、120分後の血糖値を測定します。
血糖値の上がり方をみると、正常なのか、糖尿病なのか、糖尿病予備軍なのかが判明します。
糖尿病でない方が、糖尿病になるときには、空腹時血糖値よりも食後血糖値のほうが先に上がってくることが多く、空腹時血糖値が正常範囲内でも、食後の血糖値が高く、実は糖尿病ということはよくあります。
糖尿病を早期に発見するためには、空腹時血糖値だけでなく、ブドウ糖負荷試験を受けたり、食後に血糖値を測定したりすることも必要です。
空腹時血糖値を下げるための方法
空腹時血糖値を下げるための方法を紹介します。
食物繊維を含む副菜を取り入れる
食事の際は、まずたっぷりの野菜など食物繊維を含む副菜から食べましょう。
野菜には食物繊維の豊富な食品が多く、食物繊維は消化・吸収されずに体外に排出される性質があります。
食事のはじめにたっぷりの野菜を食べると、その後に摂取した栄養素の吸収を抑え、血糖値の急激な上昇を防いでくれる効果が期待できます。
タンパク質を摂取する
毎日の食事は、健康で生きるための基本であり、とりわけタンパク質は筋肉の材料になります。
また、食事の前にタンパク質を少量摂取すると、2型糖尿病の人の血糖コントロールに役立つという報告があります。特に牛乳などに含まれるホエイプロテインを摂取することで、食後の血糖値が上がりにくくなるといわれています。
ホエイプロテインは、牛乳由来のタンパク質であり、「ホエイ」は「乳清」とも呼ばれており、ヨーグルトの上澄みにできる液体のことです。
牛乳やヨーグルトなどの乳製品に含まれるタンパク質には、必須アミノ酸がバランス良く含まれていて、特にホエイプロテインは低カロリーであり、体内への吸収が早い成分とされています。
インクレチンの働き
ホエイプロテインが血糖値のコントロールに役立つのは、インクレチンというホルモンの分泌を刺激するからと考えられています。
インクレチンは、食事をして糖などが吸収されると小腸から出てくるホルモンで、膵臓のβ細胞に作用してインスリンの分泌を増やす効果を発揮します。
近年、広く治療に使われるようになったインクレチン製剤は、このインクレチンのなかでもGLP-1の体内での働きに着目してつくられた糖尿病の治療薬です。
食事の開始時にタンパク質を摂ると、血糖値を下げるインクレチンの分泌を刺激できると考えられています。
毎日の食卓でも、野菜や魚料理・肉料理などから食べはじめて、ご飯・パンなどの炭水化物を食べるのを最後にすることで、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。
間食などで糖質を摂り過ぎない
ケーキやチョコレートなどの食べ物は血糖値を上昇させます。見えるところにお菓子をおかない・たくさん買わない工夫をして、誘惑を減らすとともに、甘い食べ物をどうしても食べたいときは、りんごなどのフルーツがおすすめです。
フルーツには、食物繊維や果糖が含まれているものもあり、血糖値を比較的上げにくいとされていますし、特にブルーベリーなどは甘い菓子に比べて糖尿病の発症リスクが低下する一助になる可能性があります。
運動を習慣にする
空腹時血糖値や食後血糖値を下げるには、有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせが効果的といわれています。
有酸素運動を行うと、筋肉への血流が増えて血液中のブドウ糖が筋肉を動かす際のエネルギー源として消費されるため、血糖値が下がります。また、筋力トレーニングによる筋肉の増加も血糖値を下げるのに一定の効果を示します。
通常、軽く息がはずむくらいの運動を、1週間に150分以上行うことが目標となります。1日30分なら週5回、1日50分なら週3回といったかたちで毎日の生活にとり入れるとよいでしょう。
まとめ
さて、これまで、空腹時血糖の基準値と下げるための方法などを中心に解説してきました。
空腹時血糖値とは、厳密には「10時間以上絶食してから測定した血糖値」を指していて、その正常値は70~100mg/dlの範囲が一般的です。
空腹時血糖値が110~125mg/dlの場合は、糖尿病予備群の状態であり境界型と呼ばれ、糖尿病と診断されるのは、空腹時血糖値が126mg/dl以上の場合です。
血糖値を上手にコントロールするためのカギは食事と運動です。
特に、食後の血糖値の急上昇を防ぐには、食べる内容はもちろんのこと、食事スタイルや実際の食べ方も大切になります。
「空腹時、もしくは食後の血糖値が高め」と指摘された方は、生活習慣を見直して血管のダメージを軽減していく工夫が必要です。食事のポイントをおさえ、日常生活において運動を習慣化して健康体を目指しましょう。
また、糖尿病はきちんと通院を続けることが大切ですので、通いやすさ・予約が取れるかどうかなど、ご自身が通院を続けられるような条件が整っている医療機関を選んで、心配であれば、専門医療機関を受診して相談しましょう。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。