手をグーにできない、グーににすると痛いのは関節リウマチかも
痛くて手をグーにできないという症状はないでしょうか。 このような症状の時に、まず疑うのは関節リウマチを発症していないかということです。関節リウマチとはどのような病気で、どのような症状が出るのでしょうか。関節リウマチの特徴と、手をグーにすると痛みが出る原因について見ていきましょう。
目次
関節リウマチとは
関節リウマチというのは、何らかの自己免疫的機序によって起こる、慢性的に経過する関節炎を主病変とする疾患です。
自己免疫的機序というのは、本来自分自身を守るための免疫細胞が何らかの異常を起こし、 自分自身を攻撃してしまうことを言います。
関節リウマチは自己免疫疾患の中でも最も多く、30歳以上の人口の約1%が罹患していると言われています。全国でおおよそ60万人の患者がいると報告されています。 男女比は1対3ぐらいで女性に多くなっています。後発年齢は20代から60代までと幅広く、特に30代から50代までの間で発症するのが多いと言われています。
関節リウマチの場合には、 主に関節の滑膜と言われる膜に対して免疫細胞が攻撃することによって症状が起こってきます。滑膜に炎症が起こることで痛みが起こりますし、その炎症が進行することで滑膜に接している軟骨や骨が破壊されることによって、関節が破壊され、変形をきたします。
関節リウマチの診断
血液検査では、リウマトイド因子という物質が血液中に検出されるのが特徴です。また炎症を反映した様々な血液検査の異常が見られます。レントゲンを取ると骨の形が不正になっている様子が見られます。
関節を穿刺して内容液を検査すると液が混濁し、粘稠度は下がり、炎症を反映して白血球が多く見られる所見があります。
これらの要素に加えて、症状を見ることで診断が行われます。診断がされた後には、早期から治療が行われます。早期に治療することによって、骨破壊を食い止めることを目標とします。
手のこわばりは関節リウマチの初期症状かも
関節リウマチの初期症状としてよく見られるのが手のこわばりです。手のこわばりは、特に朝起きた直後に手が動かしにくい、動かしてもぎこちなく動く、といった症状を指します。
手のこわばりは、夜間手を動かさずにいたことによって、滑膜組織の中に水分が溜まり、滑膜がスムーズに動かなくなることによって起こってきます。自分の免疫が滑膜組織を攻撃することによって、滑膜の中で炎症が起こり、水分が溜まってくるのです。
こうした朝のこわばりの症状は、関節リウマチの症状の中でも早期に見られるものです。
手や指に現れる関節リウマチの症状の特徴
関節リウマチの場合、特に手や足の関節に早期から症状が出てくるのが特徴です。また、症状は左右対称に起こってくるのが特徴です。
手足の関節の中でも、起こりやすい関節と起こりにくい 関節があります。例えば手では、一番末梢側の関節よりも、末梢から2番目の関節や、手の付け根あたりの関節に変形が起こりやすくなっています。 いくつもの特徴的な変形の仕方があり、ボタンホール変形、スワンネック変形といった名前がついています。
関節に炎症が起こると、自覚症状としては腫脹・ 圧痛・熱感の他、関節の動かし始めにぎこちなさを感じるこわばりが見られるようになります。他覚所見としては、可動域の制限や関節液の貯留が見られ、進行すると関節が変形するようになってきます。
関節の変形は、病状の進行にともなって大きな関節にも起こりやすくなってきます。肘や肩、膝や足関節などにも見られるようになります。また、特徴的なのが首の環軸関節亜脱臼です。頸椎の1番目の骨と2番目の骨の間が不安定になり、ずれることで頚椎損傷を起こすこともあります。
手をグーにすると痛くなるその他の原因
手をグーにすると痛くなる場合、関節リウマチ以外にどのような病気が考えられるのでしょうか。
腱鞘炎
腱鞘炎の発症の原因となるのは手の使いすぎです。特に同じような動作を頻回に繰り返すような作業が主な原因となってきます。女性や高齢者に多いのが特徴です。
最近ではパソコン 作業や、スマートフォンを使用することによって長時間同じ体勢で作業することにより、発症するケースが増えています。
症状の特徴としては指の付け根や手首に痛みが生じるほか、グーにしたまま小指側に傾けると手首の痛みが増強するというのが特徴です。手をしばらく動かさなかった後に、急に動かすことによって痛みを感じるのも特徴です。また炎症を反映して、患部が腫れたり赤くなったりします。
治療の際には、抗炎症薬によって痛みを抑えながら、なるべく同じような動作を控えることによって患部を安静にし、自然に改善していくのを待つことになります。
手根管症候群
手根管症候群は、手を動かしたり手の感覚を伝えたりする神経が、手首のところで圧迫されることによって起こってくる病気です。親指から薬指あたりの手のひらにしびれや痛みが見られ、この痛みは手を使うと強くなり、手を振ると痛みが軽くなるという特徴があります。
原因となるのは手の使いすぎです。特に女性ホルモンが減少することによって起こりやすいとされています。
治療としては安静にしたり、患部を温めて症状の改善を見ることがまずは基本になります。 また神経の修復を期待して、ビタミン剤を内服したり注射したりします。患部に直接生理食塩水や、ステロイド剤を注射することによって神経を解放し、改善させるような治療も行われます。これらの治療で改善しない場合には、手術が選択されることもあります。
肘部管症候群
小指と薬指のしびれや痛みがある場合は、肘部管症候群の可能性があります。これは肘の内側を通る尺骨神経 という神経が圧迫されることによって起こってくる病気です。
変形性肘関節症による骨の出っ張りや、ガングリオンなどの腫瘍、肘の使いすぎなどによって尺骨神経が圧迫されることがあります。このように圧迫を受けることによって、前腕の小指側や、小指がしびれるといった症状が出てきます。
圧迫のされ方によっては、手を握ったり、肘を動かしたりすることによってより強く圧迫されて症状が強くなる場合があります。症状が進行すると、手の筋肉が痩せたり、それによって手が使いにくくなったりすることがあります。
治療としてはまず安静にすることです。抗炎症薬などを内服しながら安静にします。しかし変形性肘関節症や何らかの腫瘍がある場合には、手術によって取り除かなければならない場合も多くあります。
また、肘の使いすぎで起こっている場合でも、尺骨神経が突っ張るような場合には、尺骨神経が圧迫されないように手術をすることがあります。
母指CM関節症
母指CM関節症は親指に限定した痛みになりますが、手をグーにすると痛くなる病気として 鑑別に上がってくる病気です。特に親指の付け根に痛みが起こってきます。また、ひねる動作で痛みがある場合や、親指の付け根の骨が出っ張っているといった症状が起こってくることがあります。
加齢による関節の変形や、親指の使いすぎ、あるいは過去の骨折や脱臼 など、CM関節に負担がかかるものが原因となってきます。治療としては、抗炎症薬を内服して痛みを抑えながら、サポーターを使用して安静にすることが推奨されています。