寝起きで胸が痛いのは冠れん縮性狭心症かも?症状の特徴と治療法

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狭心症は胸の痛みの原因になることが知られています。一般的には、狭心症の症状は運動時や労作時に出やすい傾向があります。

一方、就寝中や安静時においても胸の痛みが生じるのが冠れん縮性狭心症です。冠れん縮性狭心症とはどのような病気なのでしょうか。症状の特徴や治療法について解説します。

寝起きで胸が痛いのは冠れん縮性狭心症かも?

冠れん縮性狭心症は、狭心症の中でひとつの亜型タイプであるといわれています。

この病気になると、心臓の冠動脈(いわゆる心臓や心筋に酸素と栄養を供給する血管)が一時的にけいれん様変化を起こして心臓に十分な血液が供給されなくなるので寝起きなどに胸痛発作が生じることになります。

発作的な冠状動脈のれん縮(けいれん収縮)は、主に明け方や就寝中、あるいは安静時に引き起こされることが多いと伝えられております。

狭心症との違いは?冠れん縮性狭心症の特徴

冠攣縮性狭心症は、長期的な喫煙習慣や飲酒歴、または寒冷刺激、そして過大なストレスなどがその発症に関与していると判明してきています。

また、アンチエイジングミネラルとしても注目をされているマグネシウムの摂取不足が冠れん縮性狭心症を含む冠動脈疾患の大きな発症要因としても深く関わっていることが判明しつつあります。

過去に研究者らが報告した日本人における食事からのマグネシウム摂取量と冠動脈疾患リスクに関する調査によると、マグネシウム摂取量の増加が冠れん縮性狭心症を含む冠動脈疾患の発症リスクを低下させることが示されています。

冠れん縮性狭心症のリスク要因

冠れん縮性狭心症は、受動喫煙を含む喫煙習慣、飲酒、寒冷刺激、過度のストレスなどが発症に関与していると考えられています。

それと同時に、アジア人に発症が多いことからも民族的、あるいは遺伝的な要因も発症に関連していると想定されます。

症状の特徴

冠攣縮性狭心症においては、心臓に栄養を送る血管である冠状動脈そのものがストレスなどの誘因が契機となり一時的に攣縮を起こすことによって、血管の内腔が狭くなってしまうことで胸痛症状を自覚します。

冠動脈が一過性に狭窄を引き起こす時間帯としては、明け方や夜中、あるいは就寝中や安静時に生じることが往々にして認められます。

動脈硬化性の狭心症との違い

狭心症の原因はほとんどが動脈硬化であることが知られており、加齢に伴って誰にでも発症する可能性があります。

狭心症は、発作の現れる様式や胸部症状が出現する頻度やタイミングなどによって分類することが出来ます。

動脈硬化性の狭心症では運動時や労作時に症状が出ることが多いですが、冠れん縮性狭心症では就寝中や安静時においても胸の痛みや胸部違和感などの症状が出現する点が特徴的と言えます。

心臓に酸素を与える血管である冠動脈が攣縮を起こして心筋に十分な酸素が供給できなくなり胸痛発作の症状が現れます。

冠れん縮性狭心症の治療

冠れん縮性狭心症の治療ではカルシウム拮抗薬や硝酸薬などの内服剤が処方されます。

リスクファクターを回避するために受動喫煙を避ける、禁煙する、飲酒量を調整する、ストレスに対して適切に対処するなどの対策も症状をコントロールするうえで重要です。

さらに、冠動脈疾患を引き起こす因子として知られている高血圧や糖尿病、脂質異常症などが併存する場合には、食事療法や運動療法なども取り入れます。

そのほかにも、適正体重を維持する、あるいは発作を誘発するとされている過労やストレスを避ける、寒い時期に身体を急に冷やすことなどは極力回避するように心がけましょう。

まとめ

冠れん縮性狭心症の症状の特徴や治療法などを中心に解説してきました。

冠れん縮性狭心症は、心臓に栄養を供給している血管の冠動脈が攣縮することによって、一時的に冠動脈の血流が低下して胸痛症状の発作が引き起こされる疾患です。

冠れん縮性狭心症の場合には、おおむね明け方や夜中、あるいは就寝中や安静時に胸の痛みや胸部圧迫感、冷や汗、失神などを代表とする症状が自覚される点が特徴的です。

胸の痛みが生じる箇所はどこか一点にフォーカスされることは少なく、漫然として胸部全体部位の胸部症状として認識されることが多いとされています。

冠れん縮性狭心症は突然死につながることもある重大な病気と捉えられています。心配であれば、循環器内科など専門医療機関を受診しましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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