下半身がだるい・疲れやすい原因と対処法

お悩み

日中に筋肉を酷使したときは下半身がだるく感じられます。また、筋肉はそれほど疲労していなくても、立ち仕事などで足の筋肉がこわばっていると、血行が悪くなって下半身がだるく感じられることもあります。

下半身の血行を良くする上で重要な役割を担うのがふくらはぎの筋肉です。ここでは、ふくらはぎの筋肉の役割に注目し、下半身がだるい・疲れやすい原因や対処法について解説します。

第二の心臓!ふくらはぎの筋ポンプ機能

ふくらはぎに手を添える女性

ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれるほど強い筋ポンプ作用を生み出しています。

立つ、座る、歩くなどの動作で足の筋肉は収縮と弛緩を繰り返し、この動きが静脈を圧迫してポンプのように血液を心臓へと押し上げる働きとなります。

静脈と連動した筋肉の収縮と弛緩は「ミルキングアクション」とも呼ばれ、これは牛の乳しぼりに似ていることから名付けられています。

足の静脈は心臓から離れた場所にあり重力の影響を受けやすいため、上半身と比べると心臓へ戻る血液の流れが滞りやすくなっています。

また、動脈と違って心臓に直接つながっていないので、心臓の拍動(ポンプ作用)によって血液を流す力がほとんど及ばないため、足の静脈は筋肉と連動して静脈血を心臓へ戻します。

足の静脈には、血液の逆流を防ぐ弁が血管の内側に一定の間隔で存在していて、静脈弁と呼ばれるこの弁は、血液が心臓へと流れるときには開いて、下方へ逆流しそうになると閉じて血液の逆流を防ぐ機能を持っています。

下半身がだるい・疲れやすい原因

下半身がだるいとき、疲れやすいときの原因はいくつも考えられます。代表的な原因を見てみましょう。

筋肉の疲労

足が重くだるい症状を起こしている状態は日常的に起こりやすい症状です。

スポーツをしたり長時間歩き回ったりすれば、肉体的疲労から足がだるく、重く感じます。

また、疲労の心当たりはないのに「なんとなく足がだるい・重い」と感じることもあり、例えば長時間の立ち仕事に従事している方など、慣れているつもりでも疲労が蓄積して感じることもあります。

筋肉が少ない、筋ポンプ機能が低い

運動などで筋肉を酷使したわけではないのに、下半身にだるさや倦怠感を感じる場合、疲労の蓄積が考えられます。

立ち仕事などで疲労がたまり、筋肉が硬くこわばってくると、筋肉ポンプが十分に働かないため血流循環が悪くなり、老廃物が蓄積して足にだるさを感じるようになります。

足のだるさやむくみでお悩みの場合、朝にはほとんど症状がなく、夕方から夜に強い症状が起こりやすいケースがほとんどです。

こうした症状がある場合、疲労が原因だと誤解されやすいのですが、実際には血液が心臓に戻れずにたまってしまう「うっ滞」が原因になっていることが多いといわれています。

うっ滞を起こすと、足への栄養素や酸素の供給量が減って筋肉が十分に働けなくなり、疲労物質の排出も滞ってしまうために、下半身のだるさを引き起こします。

血管の病気の可能性も?

下半身がだるい、疲れやすい原因として、下肢静脈瘤など血管の病気になっている可能性も考えられます。

下肢静脈瘤は静脈弁がうまく働かなくなったり破壊されることで血流が逆流し、血液がうっ滞して血管が太くなり蛇行してくる病気です。

年齢が上がるにつれて下肢静脈瘤を発症しやすくなるのは、静脈弁がとても薄く壊れやすい構造であることや、加齢によってふくらはぎなど足の筋肉が衰え、筋ポンプ作用が弱くなることが原因です。

朝よりも、夕方から夜になるほど足がだるくなり、むくんでくる慢性的な症状に悩んでいる人は結構いますが、これは下肢静脈瘤などに伴って血流が滞る状態である「うっ滞」が原因かもしれません。

下半身に酸素や栄養分が供給されず、筋肉などの組織が十分な働きができなくなるために、下半身がだるく感じられます。

うっ滞が起こる主な原因は、血液循環の乱れです。

特に、ふくらはぎの筋肉は足のポンプとして重力に逆らって血液を心臓に向けて押し上げていますが、蓄積疲労などで足がうまく働かなくなると、静脈の血流が悪くなって血管内の圧力が上がります。

その結果、血液の逆流を抑制している静脈弁にも大きな負荷がかかって血液の逆流が起こり、血液が滞留するうっ滞現象を起こして、足がだるくなるだけでなく、赤血球が血管から浸みだして、皮膚に赤茶色の色素斑や紫斑が現れることもあります。

下半身がだるい・疲れやすいときの対処法

下半身・股関節のストレッチをする女性

下半身がだるいとき、疲れやすいときに有効な対処法を紹介します。

足を頻繁に動かす

準備運動などで行われる屈伸運動やアキレス腱を伸ばす運動は、ふくらはぎに滞留した血液を抜く効果があります。

滞留した血液には老廃物がたまっているので、これを抜くことで足が楽になりますし、少しのスペースがあれば実施できますので、仕事の合間にこまめに行ってみましょう。

寝るときに足を高くする

寝る時に足を心臓よりも高い位置に上げて眠ることで、滞りがちな血液やリンパ、体の下の方に溜まった余分な水分や老廃物をスムーズに流すことができます。

日常生活にこの習慣を取り入れると、足のむくみや倦怠感の改善が期待できます。

通常、立位時には、体の水分や血液は重力の影響を受けるため、下の方に血液は溜まりやすいといわれていて、ふくらはぎの筋肉がポンプ役となって心臓に戻してくれています。

寝る時は、心臓と足の位置がほぼ同じ高さになるので、立っている時よりも水分や血液が心臓へ戻りやすくなります。

その際に、少しだけ足の位置を心臓よりも高くすることで、足に溜まった水分や血液をよりスムーズに心臓へ戻すことができるため、足の疲労回復につながりやすいと考えられます。

また、睡眠時に足を上げるだけという簡単な動作なので、誰でも気軽に取り入れることができます。

弾性ストッキングを活用する

足を強い力で締め付ける医療用の弾性ストッキングの着用も効果的です。

弾性ストッキングは足首あたりがもっとも締め付けが強く、上部に向かうにしたがって圧迫力が緩くなるように設計されています。

血管を絞るように締め付け、血液を下から押し上げてふくらはぎのポンプ機能をサポートすることで、血行を回復させます。

圧迫力によって弱圧・中圧・強圧があり、ドラッグストアなどで市販されているものは弱圧であり、それ以上のものは医療機関で取り扱われます。

まとめ

これまで、下半身がだるい・疲れやすい原因と対処法などを中心に解説してきました。

長時間の立ち仕事などで足がむくんだり、だるくなったりする場合もあります。

その原因は、第2の心臓といわれるふくらはぎの筋肉に疲労が蓄積してうまく機能できなくなり、足に老廃物がたまり、血行が悪くなって酸素や栄養が不足気味になるからです。

これらの症状を解消するには、ふくらはぎが血流を押し上げるポンプ機能を回復させ、血流を健全な状態に戻すことが大切です。

専門医療機関で診察を受けた上で医師の指導で弾性ストッキングを着用するなど、少しでも症状が緩和できるように努めましょう。

また、下肢静脈瘤によって足に血液がたまると、足のだるさ、足の疲れやすさを感じることがありますし、しばしば、ふくらはぎの筋肉のこわばりを伴います。

足を酷使していないにもかかわらず、足のだるさや疲れやすさを感じたときには、血管外科専門外来などに相談しましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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