ミシミシ、ポキポキ…膝の音の違いは?疑われる病気は?
膝から音がすることはないでしょうか。膝の音には、曲げた時に時々なるポキッという音もありますし、年齢を重ねるとミシミシといった音がすることもあります。ここでは膝の音の違いから分かることや、膝の音の原因になる病気について解説します。
ひざ関節の構造
膝から音が出るとなると、膝の構造のどこかに何らかの異常があることが考えられます。ではひざ関節はどのような構造をしているのでしょうか。
まず膝を構成するものとしては、4本の骨があります。大腿骨、膝蓋骨、脛骨、腓骨の4本です。大腿骨は膝関節よりも上にある骨です。脛骨と大腿骨は関節面を持っていて、それぞれの骨がスムーズに動くような構造をしています。腓骨は脛骨に横からくっつくような形をしていて、直接膝関節には接していません。膝蓋骨は関節の前面に存在し、ふたのような役割をしています。
大腿骨と脛骨の間には半月板という軟骨があります。軟骨があることによって、直接骨と骨が接することがなくなり、骨の摩耗を防いでいます。軟骨は消耗品で、だんだんとすり減ってきます。
このような関節の構造物を覆っているのは関節包です。関節包によって、関節はすっぽりと覆われています。覆われている中には、関節液というドロドロとした液体が含まれています。また、これらの構造物を支えるために、靱帯や筋肉が周りを覆っているのです。
ミシミシ、ポキポキ…膝の音の違いは?
年齢を重ねるにつれて膝から色々な音がすることに気づくと思います。ポキッとなるような音もありますし、ミシミシするような音もあります。
「ポキポキ」は心配ないことが多い
膝関節に限らず、関節を曲げた時にポキッとなる音は、特にそれ自体は心配する必要がない音とされています。関節を動かした時には関節包の中にある関節液に強い圧力がかかります。圧力が液体に加わると液体の中に気泡ができます。この気泡がはじける時に音が鳴ります。指をポキポキ鳴らすときと同じ音の成り立ちです。このような音をクラッキング音と言います。
このポキッという音自体は強い圧力がかかったということを示しているだけで、関節の構造が壊れたり何か異常が起こったりしているわけではないので、特に心配をする必要はありません。しかし、気泡がはじける時には、周囲の関節液に振動が伝わります。この振動が周りの骨や軟骨に伝わることによって刺激となり、刺激が積み重なることによって、少しずつ骨や軟骨の変形が起こってくることがあると言われています。無理に鳴らすことはしない方がいいでしょう。
このようなポキッという音は、1回なることで気泡が破裂して無くなりますから、繰り返し音が出ることはありません。一方、同じような音でも、ポキポキという音が繰り返し起こることがあります。このような音の場合には、関節同士がぶつかる音である可能性が否定はできません。これはひざ関節が緩んでいることによって起こってきます。
膝関節が緩むと、関節の部分にほんの少しのズレが生じます。このズレが生じた状態で関節を動かすと、関節同士がぶつかって音が出ます。このような場合は、次に出てくるミシミシ、ギシギシといった音と同じように、関節の異常を示す音と考えられます。
「ミシミシ」「ギシギシ」は要注意
ミシミシ、ギシギシといった音は、何かが擦れるような音である可能性があります。スムーズな膝の動きが阻害され、膝に何らかの異常が出ていることを考えなくてはなりません。
音が出る原因は色々考えられますが、多い理由としては軟骨がすり減って、触れ合うことによって摩擦を起こしているケースです。放置していると、ダメージが軟骨や骨に蓄積され、変形がひどくなってしまう可能性があります。
特に、ミシミシ、ギシギシといった音を通り越して、ガリガリ、ゴリッと言った音がする場合には、軟骨がすでになくなっている可能性も否定はできません。
米国で行われた調査では、膝を動かした時にきしみを感じたり、音が鳴ったりすることがある人は、そうでない人に比べて、変形性ひざ関節症になる危険性が1.5倍から3倍になるという結果が出ています。
このような時には痛みが生じていることも多いです。特に痛みがある場合には、軟骨のすり減りが高度になっている可能性がありますから、早めに病院を受診するのがいいでしょう。
膝から音がするときに疑われる病気
膝から音がする時には、どのような病気が疑われるのでしょうか。
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、ひざ関節に負担が蓄積し、軟骨がすり減り、ひざ関節自体が変形していく病気のことです。女性に多く、高齢者に発症の確率が高くなっています。
軟骨がすり減ることによって、骨と骨が接するようになります。骨と骨はスムーズに連結するような構造をしているとは言っても、表面がツルツルというわけではありませんから、ザラザラした面同士が触れ合うことになります。これによって、引っかかるような感覚を感じますし、動かした時に音が生じます。また、痛みも生じます。
よく膝に水が溜まるという話を聞いたことがあるかもしれませんが、ほとんどの場合この変形性膝関節症によるものです。変形によって関節内に刺激があり、修復のために炎症が起こった結果、浸出液が多くたまることによって水が溜まってきます。
また、骨の修復に伴って、だんだんと変形もひどくなってきます。骨自体の形が変わり、関節内の骨の部分も硬く変性します。
変形性関節症の治療としては、初期段階では薬の内服や、関節内への薬の注射などが行われます。しかし段々とひどくなってきた時には、薬では痛みもなかなか抑えることはできません。また、変形したものを元に戻すこともできませんから、人工関節に変える手術や、変形した骨を矯正する手術が行われます。
半月板損傷
比較的若年者で、スポーツで膝を使う人の場合には、半月板が損傷している可能性を考えます。
半月板は、膝の内側と外側に存在し、ひざ関節の安定性と滑らかな動きをサポートしています。この半月板が損傷して傷つくと、表面に引っかかりができ、音が鳴ったり、動かした時に引っかかるような感じがしたりといった症状が出てきます。
痛みを生じないことも稀にはありますが、多くの場合には動かした時に膝の痛みを感じます。
治療は手術になります。半月板の状態によって、出っ張っている部分を切除するだけの手術になる場合もありますし、完全に断裂してしまっているような状態であれば半月板の断裂したものどうしよう結びつける縫合術が行われることもあります。
タナ障害
関節包の内側には、滑膜ヒダというヒダ状の組織があります。滑膜ヒダにはいくつか種類がありますが、その中でも膝の内側にあるものをタナと呼びます。このタナが障害されている状態のことを、タナ障害と言います。
タナが障害されるとスムーズな膝の動きが阻害されます。治療としては、凸凹した状態の場所を滑らかに整形する手術が行われます。