のぼせ?湯あたり?お風呂上がりの気持ち悪さの原因と対処法

お悩み

お風呂上がりに気持ち悪くなるようなら、入浴の仕方に何か問題があるのかもしれません。入浴に伴うよくあるトラブルには「のぼせ」や「湯あたり」があります。

また、より深刻な状態であるヒートショックや心臓の病気の可能性もあります。ここではお風呂上がりの気持ち悪さの原因と対処法について見ていきましょう。

お風呂や温泉でよくある不快な症状

入浴時のトラブルの中で、「のぼせ」と「湯あたり」は多く見られるものです。

のぼせ

お風呂や温泉での長時間の入浴が、体の血圧に影響を及ぼすことがあります。のぼせの原因の一つは入浴といわれています。

入浴中、体は上半身が熱くなり、足や手は冷たく感じることがあり、この状態では、脳の血流も上昇します。

この機序がのぼせの主な原因の一つであり、血管の拡張による症状と考えられています。

湯あたり

お風呂や温泉に入ると、頭痛、めまい、寒気など体調不良になることを「湯あたり」といいます。

湯あたりは、その温泉が体に合わないために体調不良になる場合と、温泉の力で治癒の途中で一時体調不良となる「好転反応」の場合があり、そのどちらなのかは判別しにくいといわれています。

湯あたりになったら1日温泉入浴を控えて、体調が回復すれば、「好転反応」と考えて入浴を再開していいでしょう。

一方で、体調が改善しなければそのお風呂や温泉に含まれる成分が体に合わないことも考えられますので、その温泉への入浴は控えましょう。

湯あたりになりやすい泉質としては、主に硫黄泉、酸性泉、放射能泉があります。

また、身体が温まってきたなと感じたらお湯から上がり、一度休憩して体温を下げるようにすることで湯あたりになりにくくなります。

入浴時の気持ち悪さの深刻な原因

入浴時の気持ち悪さの原因がヒートショックや心臓の病気の場合はより深刻です。

ヒートショック

入浴中の事故は年間約1万件以上もあり、全体の約5割が特に冬場に発生しているという報告があります。これは入浴前後で血圧が急激に変化し、ヒートショックと呼ばれる状態になることが原因のひとつです。

ヒートショックは、急激な温度差によって血圧が大きく変化することで起こり、命にかかわる脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす原因となります。

寒い季節の入浴時は、気温が低い脱衣所で衣服を脱ぐと血管が収縮し、血圧が上昇し、寒い浴室へ入ると、さらに血圧が上昇します。

そして、浴槽に入り肩まで湯につかると心臓へ水圧がかかり、血圧が上昇しますし、熱めの湯に入ると交感神経が緊張し、血圧が急激に上昇する一方で、体が温まると血管が拡張し、血圧が急激に下降するといった具合に血圧が変動しやすいといわれています。

特に、ヒートショックの影響を受けやすい人の特徴としては、65歳以上の高齢者で、糖尿病、高血圧、脂質異常症など動脈硬化の原因となる疾患がある場合、あるいは飲酒後に入浴する、42度以上の熱い湯に10分以上浸かるなどが挙げられます。

特に、冬場など寒い時期に引き起こされるヒートショックは要注意であり、風呂と脱衣所の寒暖差を無くすことで対策できます。

心臓の病気

入浴時に、脳や心臓に関連した事故が発生することがあります。

例えば、一人暮らしの高齢の方で、普段から血圧の高い場合などは、特に注意が必要です。

42℃以上の高温浴では、入浴中に血圧が著明に上昇して脳出血やくも膜下出血の原因になりやすいともいわれていますし、浴槽から出るときに血圧が急激に低下して脳虚血発作を引き起こす場合があります。

同様に、冬場など寒い時期に、高温の入浴を長時間することで、血圧の急激な変動に伴って、狭心症発作や不整脈を生じやすいといわれています。

お風呂上がりに気持ち悪くなるときの対処法

お風呂上がりに気持ち悪くなる場合には次のような対処法があります。

水分をとる

入浴前後に水分を摂り、脱水症状になることを予防しましょう。

入浴中に頭が痛くなる、めまいや吐き気がする、あるいは手足がしびれて、動かしにくくなった場合は、すぐにお風呂から出て、水分補給をしましょう。

入浴前後にはコップ1杯の水分補給が有効です。のぼせに悩む方の場合は、お風呂上がりの体の状態を注意深く見守り、適切なケアを行うことで症状の軽減や予防が可能です。

お湯の温度を低めにする

お風呂でのぼせやすい場合は、入浴時間や水温に気を付ける必要があり、適度な時間で温度の高すぎない環境を心掛ける必要があります。

熱いお湯に長時間浸かることで、身体がのぼせて体温が上昇すると、熱中症になる恐れがあります。

一般的に、湯に浸かる時間は10分以内、浴槽の湯の温度は41度以下が目安です。

長時間お湯につかる場合には、最大でも10分位が目安であり、お湯の温度を低めに設定するように意識しましょう。

また、お湯に深くつかると水圧により心臓に負担がかかるため、湯船につかる時は胸の半分くらいまでにして、入浴後は水分補給を確実に行って、しっかりと休息をとることをおおすすめします。

かけ湯をしてから湯舟に入る

お風呂上がりに気持ち悪くなる症状を予防するための方法に「かけ湯」があります。

急にお風呂に入るのではなく、心臓に遠い足先などからシャワーやかけ湯をして体を徐々に温めるようにしましょう。

かけ湯をしてから湯舟に入って、ゆっくりと体の温度を上げていくことで、湯あたりやのぼせを予防できるといわれています。

また、腰湯といわれる半身浴が体に負担をかけませんし、可能な施設であれば寝湯も良いでしょう。

気持ち悪いときは安静にする

のぼせが発症した場合、熱やほてりを感じる上半身や顔・頭部を冷却することが必要です。首や顔に冷たいタオルを当てることで、体温を下げるようにします。

暑い場所にいて気持ち悪いときには、体を涼しい場所に移動させることも重要です。屋外にいる場合は、屋内に移動し、クーラーを使用しましょう。

吐き気がするなど、もし湯疲れしてしまった時にも、まずはお湯から出て脱衣所で安静にして、濡れた体を拭いて、できればしばらく横になるか座って様子を見ます。

立ち上がるときは、立ちくらみの症状などが出ないかに注意して、浴槽の縁を支えにして出湯し、15分位は安静にするとよいでしょう。

まとめ

これまで、のぼせや湯あたりなど、お風呂上がりの気持ち悪さの原因と対処法などを中心に解説してきました。

温泉やお風呂に入ることで、体が温まったことによる血圧の変動が起こり、のぼせてしまった場合は、動悸や悪寒、立っていられないほどの立ちくらみ、めまいを自覚する場合があります。

温泉やお風呂は日々の疲れを癒すために最適ですが、入浴時は自分の体調を意識して、少しでも異変を感じたら安静にしましょう。

快適なバスタイムを過ごせるように、入浴中の事故を防ぐための対策を検討することをおすすめします。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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