健康診断で赤血球が多いと言われたら?多血症の種類と原因

赤血球は酸素や二酸化炭素を運搬する役割を担っています。赤血球の基準値を超えた場合は多血症という病気にかかることがある一方、赤血球の基準値を下回った場合は貧血状態になります。
ここでは赤血球が基準値よりも多い場合と少ない場合を取り上げ、特に多血症について詳しく解説します。
目次
健康診断の赤血球数(RBC)とは

赤血球は血液中で最も多い細胞成分であり、赤血球の数や形状、そして内部にあるヘモグロビンの量を検査することで、さまざまな病気の診断や治療を行うことができます。
赤血球の数は、健康な人の場合は一定の範囲内に収まっており、その範囲を赤血球基準値といいます。
赤血球の基準値は、一般的に男性で4.5〜5.9百万/μL、女性で4.0〜5.4百万/μLですが、年齢や健康状態によっても異なる場合があります。
赤血球の指標としては、酸素を運ぶヘモグロビン量、血液中に占める割合のヘマトクリット値、そして赤血球の容積を示す平均赤血球容積(英語のmean corpuscular volumeの略称であるMCV)があります。
ヘモグロビン量
ヘモグロビン量は貧血の診断に重要な指標です。
正常値は男性で13.1~16.3g/dL、女性で12.1~14.5g/dLで、この値が低下すると酸素不足を引き起こし、疲れや息切れなどの症状が現れます。
ヘマトクリット値
ヘマトクリット値は、赤血球の容積の比率を示し、正常値はおおよそ40%であり、この値が低下すると貧血となります。原因となる疾患を特定するためには、さらなる検査が必要となります。
MCV
MCVは、赤血球の容積を示す指標で、赤血球に関する病気を大まかに分類・判断するために必要な検査項目です。
正常値は80~100fL程度であり、MCVが低下すると鉄欠乏性貧血やタンパク質欠乏性貧血などが疑われる一方で、高値の場合には、ビタミンB12欠乏性貧血や薬剤性貧血などが疑われます。
赤血球は、体内の酸素を運ぶため、非常に多く作られますが、赤血球の寿命は約120日であり、寿命が尽きた赤血球は、肝臓や脾臓によって排除されます。
これから詳しく見ていくように、赤血球数が少ない場合は貧血と呼ばれる状態になり、貧血は鉄欠乏性貧血やビタミン欠乏性貧血など、様々な原因が考えられます。
赤血球数が多い場合には、赤血球増多症と呼ばれる疾患にかかっている場合があります。
赤血球が基準値よりも低くなる「貧血」

赤血球の数値が基準値を下回ると、貧血の症状が現れることがあります。貧血の症状は、ふらつき、皮膚や爪の色が薄くなるなどを含めて多彩です。
例えば、子宮筋腫などに伴う鉄欠乏性貧血や再生不良性貧血、胃切除後の巨赤芽球性貧血などさまざまな原因疾患の存在が考えられます。
特に、鉄欠乏性貧血は、体内の鉄分が不足することで赤血球中に含まれるヘモグロビンが作成できなくなることで引き起こされる病気であり、貧血の中で最も疫学的な頻度が高い疾患として知られています。
貧血になると、酸素の運搬能力が低下するため、通常よりも少ない運動量で息切れが起こることがありますし、脳への酸素供給が不足するため、めまいや頭痛、失神などの症状が現れることがあります。
常日頃から疲れやすい場合には、貧血に伴って酸素運搬能力が低下し、体内の細胞が必要とする酸素の供給が不十分になっている可能性が考えられます。
赤血球が基準値よりも高くなる「多血症」

多血症とは、血液中の赤血球の数が通常よりも多くなる病気です。この状態になると、血液がどろどろになり、心臓や肺などの臓器に負担がかかり、様々な症状が現れることがあります。
多血症の原因
喫煙は多血症の原因となることがあり、タバコに含まれる有害物質が、赤血球を増やす働きを持つエリスロポエチンの分泌を促進し、多血症を引き起こすことがあります。
また、喫煙により、体内に含まれる酸素の量が減少し、肺の機能が低下する結果、酸素不足が起こり、骨髄に働きかけて、血球の生成を促進するため、喫煙者に多血症が発症する可能性が高くなると考えられています。
また、睡眠時無呼吸症候群が慢性的に進行すると、体内の酸素不足が慢性的に続き、骨髄で赤血球を増やすエリスロポエチンの分泌が亢進し、多血症を引き起こすことがあります。
エリスロポエチン産生腫瘍は、腎臓が作り出すエリスロポエチンを過剰に産生する腫瘍で、腎臓がんや肝臓がん、脳腫瘍など、さまざまながんに起因することがあります。
これらのがん細胞から分泌されるエリスロポエチンが、体内の赤血球の生成を促進し、多血症を引き起こすことがあり、この場合には、がん自体の治療とともに、多血症の治療に取り組みます。
多血症の症状は、人によって異なる場合があり、初期段階ではほとんど症状が現れず、病気に気づかずにいることがあるため、定期的な健康診断を受けることが大切です。
多血症の種類
多血症には次に挙げるような種類があります。
相対的多血症
相対的多血症は、血液中の赤血球の数自体は変わらないものの、血漿の量が減少することで相対的に赤血球の濃度が高くなる病気です。
主な原因は下痢、嘔吐、発汗による水分の喪失です。
このタイプの多血症は、真性多血症とは異なり、赤血球自体が異常に多くなるわけではありませんが、相対的に赤血球の濃度が高くなるため、ストレス多血症とも呼ばれます。
赤血球の量が多いことによって、血液の粘度が上がり、血流が悪くなり、血栓症や心筋梗塞、脳梗塞などの合併症を引き起こす危険性が高くなるとされています。
代表的な治療法としては、失われた水分の補充が必要であり、点滴による静脈注射や水分・電解質補給剤などが使用されます。
また、予防のためには、十分な水分補給が必要であり、特に暑い環境下や激しい運動時には適切な水分補給が必要です。
真性多血症
真性多血症は、遺伝子変異による赤血球の増殖を促すエリスロポエチン受容体の異常によって引き起こされる骨髄増殖性疾患です。
エリスロポエチン受容体に異常があるため、通常よりも多くのエリスロポエチンが循環血液中に存在しても、過剰な赤血球の増殖が止まらず、多血症を引き起こします。
真性多血症は、特に女性や高齢者に多く見られ、その発症原因は不明ですが、特定の遺伝子変異が関与している可能性があると考えられています。
二次性多血症
二次性多血症は、他の疾患や環境要因によって引き起こされます。
例えば、肺疾患、心疾患、高山病、喫煙、腎臓疾患、あるいは過剰なエリスロポエチン投与によって、酸素不足や低酸素血症が引き起こされる結果、エリスロポエチン産生が亢進し、多血症を引き起こすことがあります。
多血症の治療後も定期的に血液検査を受けることが重要であり、定期受診することが病状の進行状況を把握し、再発や合併症の早期発見につながります。
特に、血液検査は、赤血球の数や血漿の濃度、血小板の数などを測定し、治療効果の評価や再発の早期発見に役立ちます。
まとめ
多血症は赤血球の数が増える病気で、その原因は喫煙、睡眠時無呼吸症候群、エリスロポエチン産生腫瘍、真性多血症などがあります。
多血症は酸素が十分に供給されない状態に起因して、頭痛やめまい、意識障害、手足のしびれや痛みなど様々な症状を呈することがあります。
多血症予防には規則正しい生活習慣が重要であり、治療後は医師の指示に従い、薬の服用や受診を心掛けましょう。
心配であれば、血液内科など専門医療機関を受診してください。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。