風邪の発熱にこそ漢方!発熱タイプと症状に合わせた漢方薬の選び方
風邪をひいた時、のどの痛みや鼻水だけであれば仕事や家事も何とかなるものですが、熱が出てくると急に体がだるくなったり、しんどいと感じるようになるものです。
一方で、非常に強い寒気がするにも関わらず熱が出ないこともあります。実は発熱するかしないかは、風邪の原因となるウイルスなどの「外邪」(がいじゃ)の種類だけでなく、その人の体質や胃腸の状態などと関係があり、回復を促すには適した漢方薬を選ぶことが大切です。
そこで今回は風邪の発熱に効く漢方薬の選び方と発熱時におすすめのセルフケアについてご紹介します。
目次
風邪で発熱するかどうかは体質の差?
一般的に西洋医学では、発熱があれば解熱剤、鼻水が出ていれば抗ヒスタミン剤などのように症状を抑え込むことを目標にして治療を行います。一方漢方では、その人の症状だけを見るのではなくて体質や胃腸の丈夫さなども加味して処方を選びます。風邪をひいた時に必ず高い熱が出てしまうという人もいれば、殆んど熱が出ないという人もいますよね。それぞれの体質に合わせて処方を選べることが漢方薬を使うメリットの一つです。
風邪で比較的高熱がでやすいタイプの人は、基本的には体力があり、胃腸が丈夫なタイプです。体の防衛反応が強い分、激しい反応が出がちで、じわじわ出てくるような汗をかかないことも特徴です。汗は漢方薬を選ぶときの大事な指標となります。健康な状態では体表には「気」によってできたバリア機能があり、汗が漏れ出るのを防いでいます。このようなタイプは、温めて発汗を促すことで解熱させるような漢方薬が適しています。
一方、発熱しにくいタイプの人は体力が落ちていて、胃腸が弱い人に多い傾向があります。体の防衛反応が弱い分、症状は比較的穏やかな傾向があり、熱が出ても微熱だったり、体表を覆っている「気」が不足しているため、風邪の初期から汗が漏れ出る症状があることも特徴です。しかしだからと言って病気が軽いというわけではなく、症状も慢性化したり、こじれたりしがちなのもこのタイプです。このようなタイプには、胃腸の働きを助ける作用があり、発汗を促さない処方が適応になります。
発熱を伴う風邪におすすめの漢方薬
発熱を伴う風邪の時に適応になる漢方薬にはいくつかの種類があります。熱の他にどのような症状があるのかや、もともとの体質傾向などを元に自分に合った漢方薬を選びましょう。
ただし、風邪に使う漢方薬を選ぶ際には、体質とは関係なく、体力がある人でも時によっては弱い反応を示したり、逆に体力が落ちている人でも強い反応を現すこともあるので、風邪に対する防衛反応(発熱など)が強いのか弱いのか、その時の状態をきちんと見極めることがなによりも大切です。また風邪はかかっている時期によって症状がどんどん変化していくので、症状に応じて適切に使い分けていくことも重要となります。そのため使い方がわからない場合は、医師や薬剤師などの専門家に相談して使用するようにしましょう。
風邪の初期で首のコリや悪寒がある
風邪のひき始めで首筋が凝ったり、寒気が強い場合で汗をかかずに発熱があるという場合には「葛根湯」が適しています。葛根湯は体を温める代表的な漢方薬であり、発汗を促すことで解熱させます。発熱や頭痛、悪寒があり、ほとんど汗をかかない胃腸が丈夫なタイプであれば葛根湯を早めに飲むと良いでしょう。葛根湯を服用したときは、体を暖かくして過ごすようにするとより発汗が促されます。
風邪の初期で発熱や関節痛、咳が出る
高熱(38.5度以上)が出て、強い筋肉痛や激しい悪寒がするなど、比較的重い風邪の時には葛根湯よりも強い発汗作用のある麻黄湯が適しています。麻黄湯は頭痛や高熱、咳などの症状を改善する効果がありますが、汗が出ない体力が充実している人に適しています。インフルエンザの症状を緩和するためにも使われる漢方薬です。麻黄湯に含まれる麻黄や桂皮などの生薬が陽気を補い、発汗させることで体に入り込んだ邪気を追い出します。
寒気が強く微熱と喉の痛みなどを伴う
葛根湯や麻黄湯は発汗作用が強いので、体力の無い虚弱な人には適しません。体力が低下し温める力も低下している陽虚タイプの方の微熱には、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)が適応になります。高齢の方や女性の方で体力がない方に適した漢方で、喉のチクチクするような痛みや手足の冷え、悪寒などを改善します。体表に入りこんだ寒邪を陽気を温めて巡らせることで追い出します。
日頃から気分がすぐれず、胃腸が弱くて虚弱な人の微熱、頭痛などに
平素より気分がすぐれず、胃腸が弱く、体力が低下している人で、特に高齢者の風邪によく用いられるのが香蘇散(こうそさん)です。気分がすぐれない、ふさぎこむなどの「肝」の気の乱れが元にあり、そこに寒邪が入り込んだことで微熱、頭痛や食欲不振などの症状が出ているときに適しています。「肝気」の流れを良くするとともに、胃腸の働きも助けることで「脾気」を補う作用もあります。
発熱したときのセルフケア
葛根湯や麻黄湯のように発汗を促す漢方薬が適応となる症状のときには、体を冷やさないように暖かくすることが大事です。また体を冷やすことになるため、仕事で無理をしたりせず、冷たい飲み物や食べ物の摂りすぎには注意しましょう。食事では温かいお粥のように胃腸に負担の少ないものを適量とるようにします。
ただし、40度以上のような高い熱の時には解熱剤を用いて熱を下げる必要があることもあります。漢方薬を飲んでも熱が下がらない場合や体調が回復しないなどの場合には早めに病院を受診しましょう。
風邪の発熱には適した漢方薬を使って対処しよう
風邪をひいたとき、高い熱が出ることもあれば、微熱が続いたり、強い悪寒がするのに熱が出ないなど、症状の現れ方には個人差があります。漢方薬はそれぞれの体質に合わせて適した処方を選ぶことができるので、理に叶った治療法と言えるでしょう。自分の症状と体質を見極めて自分に合った漢方薬を使うことが回復への近道となるはずです。ぜひ風邪をひいたときにこそ漢方薬を使ってみてくださいね。