夜間休日もお構い無し…休みなく続く「緊張」状態に心も体も悲鳴!
退社後も休日も仕事のことが頭を離れず、緊張感が持続して疲れが取れない、常に不安や焦りがあって心が落ち着く暇がない……。
30代のプレ更年期世代の女性のなかには、このような「過緊張」の状態に悩んでいる方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
こうした自分ではどうにもならないつらい症状の緩和や体質改善には、漢方薬がよく効くことをご存知でしたか?
「健タメ!」では、読者からの体験談をもとに、お悩みに関する原因や対処法を漢方の専門家がお答えしていきます。
今回は「過緊張」をテーマに、薬剤師の中田早苗先生にお話を伺ってみました。
目次
この臨戦体勢はいつまで続くの︎…!?「過緊張」による不調がつらい!
綾子さん(36歳女性)、会社員の方からご質問をいただきました。
中堅のIT会社に勤務し、チームを取りまとめる中間管理職的なポジションの仕事をしています。特に業務内容が過酷とか、ブラックな企業体質ということはないものの、このところやけに気持ちが張り詰めてしまい、呼吸をするのも苦しくてどうにかなりそうです。
おそらく、今期にスタートしたチームの取りまとめ役になったことで、空気の読み過ぎと気の使い過ぎで精神的に疲労困憊していることに原因があるのだと思うのですが……。もともと明るい性格ではあるものの、いたって真面目で普通な私に比べ、個性派揃いの自由すぎる面々を相手にしているせいで、なんだかペースが狂ってしまって……。
夜中に突然仕事の相談をしてくる部下や、休日やプライベートな時間に急ぎの用件を伝えてくる同僚など、自分の生活を乱されるような出来事には枚挙にいとまがありません。
かといって無視すると業務に差し障りがあるのでは、とか、ここで答えないと迷惑がかかるかも、などと思うあまり全てに対応してしまい、常に気が張った状態が続いています。
最近では夜も眠れないことが増え、息苦しさ以外にもお腹が張って便秘や下痢を繰り返すようになってしまいました。いよいよなんとかしないと病気になりそうです。この異常な緊張感を緩和する方法があればぜひ教えてください。
ご質問ありがとうございます。
真面目で周囲に気を遣う方ほど、相手の要望に一生懸命に対応しようとし過ぎるあまり、自分の心や体が緊張状態に陥り、疲れ果ててしまいがちです。
今回は、「過緊張」の原因や改善方法について、詳しくお伝えしていきましょう。
過緊張は「気」「血」の滞りと自律神経の失調が原因
過緊張の状態に陥る原因は、慢性的なストレスによって自律神経のバランスが崩れてしまうことにあると考えられています。
交感神経と副交感神経からなる自律神経は、日中と夜間で変動し、常に両者のバランスを保っていますが、さまざまな要因で日中の活動時に優位な交感神経からリラックスするための副交感神経への切り替えがうまくいかなくなることがあります。
こうして緊張状態が継続したままになってしまうと、夜間や休養時にも神経を休めることができず、不眠や寝付きの悪さ、頭痛・肩こり、胃腸症状や疲労感など、さまざまな不調が生じるようになります。
東洋医学では、五臓のうちの「気(生命エネルギー)」「血(血液)」の流れをつかさどる「肝(かん)」の働きが衰えることによって自律神経が失調し、過緊張による不調が起こると考えられています。
次の章ではこのような「過緊張」を改善するための具体的な方法をお伝えしていきましょう。
過緊張を改善する簡単セルフケア3選
1.夜はスマホを閉じて深呼吸をしましょう
夜間もずっと過緊張の状態が継続し、不眠などの症状が出ている方のなかには、仕事の連絡の有無を気にするあまり、夜間でも休日でもスマホをチェックし、オンとオフの区別がなかなかつけられない方が多いようです。
また、SNSやニュースアプリなどから発信される情報の多さに脳が情報処理に追いつかなくなったり、感情や思考が常に刺激にさらされていることも過緊張の状態を引き起こす原因になっています。
夜は時間を決めて、その時間以降は仕事の対応はせず、仕事と休養のメリハリをつけることが大切です。就寝時間の前には必要以上に情報を得ようとせず、スマホを閉じ、深い呼吸で心を整えリラックスした時間を過ごすようにしましょう。
2.簡単ストレッチで心と体をリフレッシュ!
緊張感がなかなか取れず、体の筋肉がこわばったように感じるときは、ストレッチで筋肉の緊張を緩めることが大切です。
体の筋肉を緩めることは、心の緊張をほぐすことにも繋がります。長時間同じ体勢でのデスクワークをしている方は特に、こまめな休憩をとって体を動かすようにしましょう。仕事中でも簡単にできるストレッチとして、いくつか簡単なものをご紹介しますので、ぜひ実践してみてください。
◎仕事中でもできる簡単ストレッチ
①組んだ両手を上に伸ばし、そのまま胸を張って大きく「伸び」をする
②ゆっくりと首を前後左右に回す
③手を交互に「グー」「パー」の形にして大きく動かす
3.良い意味で「鈍感力」を磨いて心をラクに
周りの変化に敏感で気にしやすい方や、常に周囲の気持ちを汲んだり空気を読んで振舞いがちな方は、特に過緊張な状態を引き起こしやすいため注意が必要です。
神経が細やかで気遣いができることは素晴らしいことですが、常に周囲に気を遣いすぎるあまり、ストレスを溜め込んで体の調子を崩してしまっては元も子もありません。
良い意味での「鈍感力」や「スルーする力」を持ち、周りの些細な変化や自分がどう見られているかなどを過剰に気にし過ぎないようにしましょう。
根本的な体質改善には漢方薬が効果的!
過緊張を改善するために、セルフケアや処方薬の服用などの選択肢に加えて、根本的な改善を目的としている漢方薬の服用もオススメです。
特に、今回の相談者様のような症状に悩む方に適した漢方薬は、四逆散(シギャクサン)です。過度の緊張が持続し、胸苦しさや腹部の膨満感などのある方の「肝気(かんき)」のうっ血を和らげ、不安や緊張を緩和する効果があります。
また過緊張に加えてイライラ感やのぼせなどの症状もある方には、体内に溜まった余分な「熱」を冷まし、「血」を巡らせて症状を改善する加味逍遙散(カミショウヨウサン)も良いでしょう。
何事も過敏になり過ぎず、心と体を休めましょう
今回は、過緊張に悩む方のためのセルフケアや漢方薬をご紹介してきました。
症状の改善のためには、あまり周囲の空気に過敏に反応し過ぎないこと、帰宅後までダラダラ仕事を続けず、夜間はしっかり休養をとるようにしましょう。また、仕事中も長時間同じ体勢を続けないようにし、ストレッチで心と体の緊張を緩めるようにすることも大切です。
また、こうした気になる症状の改善には、漢方薬が大きな効果を発揮した例もたくさんあります。セルフケアを試してもなかなか改善しない場合は、ぜひお近くの漢方医や漢方薬局に相談してみてくださいね。