膀胱に違和感? 更年期の膀胱炎、尿漏れなどに効果的な漢方薬
プレ更年期(30代〜40代)や更年期(40〜50代)と呼ばれる時期は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に低下することで自律神経が乱れ、さまざまな不調が起こりがちです。
その中でも膀胱炎や尿漏れなどの下半身のトラブルは、人に相談し辛い症状のため、お一人で悩まれている方も多いのではないかと思います。
この記事では、更年期の女性に起こりがちな下半身の症状をいくつか取り上げ、その原因とセルフケアについて解説していきます。
目次
更年期の膀胱炎の原因と効果的な漢方
若い時は抗生剤を飲めばすぐに治った膀胱炎。更年期に入ってからは、治療をしても症状を繰り返してしまう方も多いのではないでしょうか?
ここでは更年期の女性の繰り返す膀胱炎の原因と対処法を紹介します。
膀胱炎の原因
膀胱炎は、尿を貯める臓器である膀胱の粘膜に炎症が起こる病気です。
主に尿意を我慢したり細菌に感染することで起こります。
更年期の女性に多く見られるのは、自律神経が乱れやストレスで免疫力が低下し、細菌に感染しやすい状態にあるためと考えられます。
東洋医学では「腎」や膀胱が弱ると体力や免疫力が低下しやすくなり、膀胱炎や頻尿など細菌感染によるさまざまな症状が起こりやすくなると考えます。
膀胱炎に効果的な漢方
膀胱炎になってしまった時は、尿を排出する必要があります。
いつも以上に水分を多く摂り、尿量を増やしてトイレの回数を増やしましょう。
食事に膀胱炎に効果的な食材を取り入れるのもオススメです。
バナナなどのカリウムを多く含む食材は、利尿作用を持つため、尿量を増やすのに効果的です。
「腎」の働きをサポートする食材を摂取することも、膀胱炎予防には効果的です。
くるみや黒ごま、ブロッコリー、山芋、うなぎ、オクラ、黒キクラゲや豚肉などが代表的な食材です。
これらを日常生活に取り入れて、生命力や活力の源となる「腎」の働きを助けましょう。
根本的な体質改善には漢方薬もオススメです。
排尿時の痛みの原因となる炎症を鎮め、排尿を促して毒素を排出する「竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)」や、膀胱の粘膜を保護しながら菌の排出を促進する「猪令湯(チョレイトウ)」などが効果的です。
更年期の尿漏れの原因と効果的な漢方
ふとした拍子に尿もれしてしまい、普段から尿とりパッドが手放せないというお悩みを持つ更年期世代の女性も多いのではないでしょうか?
人前では言えない尿もれにお悩みの方に、尿漏れの原因とその対処法を紹介します。
尿漏れの原因
更年期の尿もれは、膀胱や尿道、子宮などの骨盤内の臓器を支える筋肉である骨盤底筋群が緩み、骨盤内の臓器が支えられなくなるために起こります。
東洋医学では加齢による「腎」の衰えで水分代謝がうまく進まずに、尿もれを引き起こすと考えます。
また「気」の不足や滞りのストレスから尿意を我慢できなくなったり、「血」が滞る「血瘀(けつお)」の状態も「腎虚」を引き起こします。
尿漏れに効果的な漢方
尿もれ改善には、弱くなった骨盤底筋を鍛えることが効果的です。
仰向けになって膝を立て、肛門を引き締めながらお尻をあげる「腰上げ運動」や、スクワットで骨盤底筋を鍛えましょう。
冷え対策も重要です。
「丹田(たんでん)」はへそから指3本分下にあります。
ここを温めることで膀胱の働きがよくなると言われているので、湯たんぽやカイロでじんわり温めましょう。
根本的な体質改善には漢方薬も良いでしょう。
尿もれに加えて疲れやすく、冷えやむくみ、尿量減少や口の渇きがある方には「牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)」。胃腸が弱く食欲不振が出やすい方には「真武湯(シンブトウ)」がオススメです。
更年期の頻尿の原因と効果的な漢方
夜中に何度もトイレに起きてしまう、漏らしてしまう恐怖で寝付けないなど、頻尿のトラブルでお悩みの女性も多いのではないでしょうか。
ここでは更年期に起こる頻尿の原因とその対処法について解説します。
頻尿の原因
加齢により生殖や泌尿器の機能をもつ「腎」が衰えると、水分代謝が滞って頻尿を引き起こします。
また「気」が不足することで尿意が抑えられなくなったり、「気」の滞りで尿意を起こしてしまうこともあります。身体の冷えも頻尿の大きな原因の一つと考えられます。
頻尿に効果的な漢方
頻繁にトイレに行くクセがつくと、膀胱が尿をたくさん溜められなくなってしまいます。
「膀胱訓練」で膀胱の本来持っている能力を取り戻し、症状を改善しましょう。
まずは、尿意を感じてから5分くらいトイレに行くのを我慢する訓練を1週間ほど続けましょう。
その後10分、15分と徐々に時間を伸ばしていき、最終的に2〜3時間ほど我慢できるようになれば目標達成です。
このように尿意を我慢する練習を、短い時間から初めて少しずつ長い時間我慢できるように訓練していきましょう。
漢方薬による根本的な体質改善にもオススメです。
身体を温め、泌尿器や生殖機能を司る「腎」を補うことで「腎」の衰えや冷えを改善する「八味地黄丸(ハチミジオウガン)」や、頻尿に加えて胃腸虚弱、動悸や不眠などがある場合には「清心蓮子飲(セイシンレンシイン)」などが効果的です。
更年期のデリケートゾーンのかゆみの原因と効果的な漢方
デリケートゾーンの痒み、なかなか人に相談することもできないし、病院に行くのも恥ずかしい…と密かにお悩みの女性も多いのではないでしょうか?
ここでは、更年期に起こるデリケートゾーンの痒みの原因とその対処法について解説します。
デリケートゾーンのかゆみの原因
更年期になると、おりものや粘液が減って乾燥状態になり、かぶれや痒みが起こりやすくなります。
さらに、更年期症状のほてりや多汗による蒸れや、加齢による筋肉低下から尿もれが起こると肌を刺激してしまい、痒みにつながります。
東洋医学では、「腎」に蓄えられている生命エネルギーの「精」が不足して「腎虚」の状態となり、デリケートゾーンの潤いがなくなることで痒みを引き起こすと考えます。
また、体内に停滞した余分な「水」と「熱」により「湿熱」になることもデリケートゾーンの痒みにつながります。
デリケートゾーンのかゆみに効果的な漢方
デリケートゾーンの痒みは乾燥が大きな原因です。痒み改善には保湿が重要です。
とくに入浴後は乾燥が進みがち。入浴後すぐの水分が少し残った状態で、デリケートゾーン専用の保湿剤をつけましょう。
保湿によって細胞が柔軟になり、血流が促されて老廃物排出にも効果的です。
デリケートゾーンの蒸れも痒みにつながるので、通気性の良い下着を身につける、こまめに立ち上がったり歩いたりする、生理用品をこまめに交換する、などの工夫を日常生活に取り入れましょう。
根本的な体質改善には漢方薬もオススメです。
痒みの原因となる下半身の「湿熱」を解消する「竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)」や身体に必要な「血」や潤いを補う「温経湯(ウンケイトウ)」などが効果的です。
更年期の性交痛の原因と効果的な漢方
性交痛はデリケートな問題で夫婦やパートナー間でも話し合えず、一人でお悩みの女性も多いのではないでしょうか?
ここでは、更年期に起こる性交痛の原因とその対処法について解説します。
性交痛の原因
女性は更年期になると女性ホルモンのエストロゲンが減少し、膣の粘膜が薄くなって乾燥しやすくなります。
十分な体液が分泌できなくなることで潤滑性が不十分となり、性交痛につながります。
東洋医学では「気」と「血」に滞りがあることで、身体は冷えるのに熱が体内にこもり、潤いを蒸発させてしまうため痛みが起こると考えます。
性交痛に効果的な漢方
性行為はその時の思考や気分が大きく影響してくるもの。
パートナーとの関係性や痛みへの恐怖、緊張感がストレスになり、膣分泌液が十分に分泌されないことがあります。
まずはお互いがリラックスできる環境づくりが必要です。
暗めの照明で親密感のあるコミュニケーションをとりましょう。
また、潤滑ゼリーなどの性交痛解消グッズなどで挿入時の痛みを軽減するのも一つの方法です。
安全性の高い成分のみで作られた、水溶性の潤滑ゼリーがよいでしょう。
根本的な体質改善には漢方薬も効果的です。
冷えた身体を温め、「気・血・水(生命エネルギー・血液・水分)」を増やし巡らせる効果のある「八味地黄丸(ハチミジオウガン)」や、乾燥しがちで「血虚」状態の方には「四物湯(シモウツトウ)」もオススメです。
まとめ
更年期が原因の尿もれや頻尿などさまざまなトラブルは、なかなか人に相談しにくい症状も多く、一人で悩まれている女性も多いのではないかと思います。
こちらの記事で取り上げた症状に対して、漢方薬が役立つこともあるでしょう。
セルフケアだけでは解決しないときは、漢方薬を選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。