発熱を伴う風邪や頭痛に用いられる川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)の効果

漢方事典

川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)は、風邪の初期症状の頭痛や片頭痛に用いられる代表的な漢方薬です。頭痛を抑えたり、痛みの軽減を期待できます。

川芎茶調散を構成する生薬

川芎茶調散は、鎮痛作用や血行改善、生理不順にも用いられる川芎(せんきゅう)を中心に、解表作用があり頭痛などを軽減する荊芥(けいがい)、防風(ぼうふう)、薄荷(はっか)、痛みや生理不順に対処する香附子(こうぶし)などが含まれています。

そのほかには白芷(びゃくし)、羌活(きょうかつ)、甘草(かんぞう)、茶葉(ちゃよう)もしくは細茶(さいちゃ)の計9種類の生薬を組み合わせた漢方薬です。

風邪や片頭痛に効く?川芎茶調散の効果とは

川芎茶調散は中国・宋時代の「和剤局方」という有名な薬剤の処方集に収載されている漢方薬で、主に風邪の初期や突発性の頭痛・片頭痛に用いられます。

また、寒気や発熱のほか、血の道症(女性ホルモンの変動による心身の不調)にも使用されることがあります。頭痛を発散させるだけでなく、血行を促進し生理状態を改善し、痛みを和らげてくれます。

川芎茶調散と五苓散(ごれいさん)の違いは?

五苓散は水分代謝の異常を緩和する代表的な漢方薬です。むくみや脱水症状を改善します。川芎茶調散と同じく頭痛にも対処できますが、川芎茶調散との使い分けは口の乾きの有無や、顔のむくみ、雨の日の湿気による頭痛といった点に注目しましょう。

もしそれらの不調がみられるなら五苓散を、頭痛のみが目立つ場合は川芎茶調散を服用します。

甘草との併用に注意!川芎茶調散の副作用

川芎茶調散の副作用としては、胃の不快感や吐き気、食欲不振、下痢などが挙げられます。

また、川芎茶調散には甘草が含まれているので、甘草が含まれているほかの漢方薬と併用すると、偽アルドステロン症が引き起こされる場合があります。稀に起こる重大な副作用としては、低カリウム血症や血圧上昇、手足のしびれ、筋肉の震えや脱力などがあります。

異常を感じた場合は、ただちに医師や薬剤師に相談してください。

処方のポイント

特に頭痛に対する止痛効果をもつ川芎、羗活、白芷の構造を中心に、血流を補助し止痛効果のある香附子、頭部不快感を軽減する薄荷、解熱鎮痛作用の荊芥、防風で構成されます。
初期の感冒の頭痛、偏頭痛等に適応し、顔面神経痛、鼻づまりにも応用されます。
辛味で、温服が効果的です。

川芎茶調散が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

かぜ、血の道症、頭痛。

漢方的適応病態

風寒の頭痛。
すなわち、突発性の頭痛で、悪寒、発熱、鼻づまりなどの表証をともないます。
めまいがする場合もあります。

川芎茶調散の組成や効能について

組成

川芎6 白芷3 羌活3 荊芥6 防風2 香附子3 薄荷6 甘草3 茶葉

効能

疏風止痛

主治

風邪頭痛

◎疏風止痛:風邪の侵入による頭痛に対し、邪気を発散法で対外へ追い払う治法です。

解説

川芎茶調散は風邪に効く薬が多く配合され、外感風邪による頭痛を治療する処方です。
川芎を主薬とする散剤で、お茶により服用することから「川芎茶調敞」と名付けられています。
なお中医弁証では、頭痛は外感頭痛と内傷頭痛に分けられます。

適応症状

◇頭痛

頭は「諸陽の会」「清陽の府」といわれ、手の三陽経・足の三陽経・一身の陽を主る督脈が集合し、陽気が充満している所です。
風邪が寒と湿の邪気をともなって頭部を侵し、清陽の気を塞ぐと頭痛が現れます。
風寒の邪気が主である場合は頭痛が激しく、風湿の邪気が主である場合は頭が重く感じるでしょう。

◇悪寒・発熱

風寒の邪気の侵入により、表証がみられます。
衛陽が体表を温煦できないため悪寒症状が見れ、正気と邪気の抗争により発熱症状が現れます。

◇鼻塞

風邪が肺に侵入して、肺気の流れが塞がれるため、肺の竅である鼻が詰まります。

◇舌苔薄白

舌苔薄は病位が表であることを示し、白苔は病因が風邪と寒邪であることを示します。

◇脈浮

邪気を追い払おうとして体内の正気が体表に浮き上がるため、浮脈が現れます。

川芎、白芷、羌活は疏風止痛の作用を持ち、風邪を発散させて頭痛を止めます。
中でも川芎は頭痛の専門薬で、止痛作用が優れ、特に少陽胆経(側頭部)と厥陰肝経(頭頂部)の頭痛に多く用いることがあります。
川芎には活血作用もあるので、瘀血による頑固な痛みを治療できます。
白芷は陽明経(前額部)の頭痛を治療し、また、鼻竅を通じさせる作用を兼ね備えているので、鼻づまり、蓄膿症、鼻炎などをともなう頭痛に適しています。
さらに白芷には利湿作用もあるので、風邪と湿邪の侵入による風湿頭痛、頭重にも効果があります。
羌活は主に太陽膀胱経(項部と後頭部)の頭痛を治療します。
利湿作用もあるので風湿頭痛と頭重に用いられます。

荊芥、防風、薄荷は去風薬で、上の3つの生薬の作用を増強できますが、頭痛を止める作用はそれほど強くありません。
荊芥と防風は一緒に用いることの多い去風薬で、全身の風邪を取り除き、身体の疼痛を緩和します。
防風の方が強い薄荷は、去風作用は荊芥よりも辛涼解表薬で風熱の邪気を発散します。
その涼性によって辛温薬の温燥性を抑えることができ、質が軽いので上昇して、去風作用を増強します。
原文の用量は川芎の倍になっています。
また、薄荷は芳香性が強いため、鼻塞にも効果があります。
香附子は肝に帰経し、舒肝理気の作用により気血の流通を促進します。
茶葉は苦寒の性味をもっています。
寒性により清熱し、薄荷とともに温性を抑え、苦味により頭部の病邪を下降させることができます。

臨床応用

◇顧痛

薬性が辛温で発散作用が強いので風寒、風湿など陰邪の侵入による病証、特に風邪の頭痛に用います。
薄荷、茶葉などの辛凉薬も配合されているので、発熱、舌紅などの軽い風熱頭痛に用いることもできます。
頭痛を止める作用が強く外感頭痛以外の頭痛(例えば耳鼻科疾患による頭痛、眼科疾患による醐市など)に他剤を配合して用いることもできます。
ただし、発散作用と温性が強いため、虚の病証あるいは熱症状が著しい場合は適しません。
川芎の活血作開は瘀血による頭痛に用いることも可能です。
下記のような血分剤を併用することにより、月経期間中の頭痛、神経性の頭痛、頑固な頭痛、外傷性頭痛などを治療することもできるでしょう。

◎血分薬を増やしたいとき+「四物湯」(養血活血)

または+「加味逍遥散」(養血・舒肝・健脾)

または+「桃核承気湯」(活血化瘀)

◎悪寒、発熱、身体痛など(表証)が多いとき+「葛根湯」(辛温解表)

または+「銀翹散」(辛凉解表)

◇鼻疾患

鼻竅を通じさせる白芷、薄荷と、活血薬の川芎が配合されているので、特に鼻づまりに効果があります。
蓄膿症、急・慢性鼻炎、アレルギー性鼻炎などに使用されます。
鼻の症状が著しいときは下記の方剤を併用します。

◎鼻水が薄く白い、量が多い、舌苔薄白(風寒)のとき+「葛根湯加川芎辛夷」(解表通竅)

◎鼻水が黄色く濃い、舌苔黄膩(風熱)のとき+「辛夷清肺湯」(清肺開竅)

または十「麻杏甘石湯」(宣肺清熱)

◎粘って量の多い鼻水、舌苔厚膩(痰湿)のとき+「二陳湯」(燥湿化痰)

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