長続きするつらい便秘やしぶり腹に!桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)
桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)は、桂枝加芍薬湯に「大黄(だいおう)」という生薬を加えた漢方薬です。伝統中国医学の古典「傷寒論」にも収載されています。
目次
桂枝加芍薬大黄湯を構成する生薬
桂枝加芍薬大黄湯は芍薬(しゃくやく)、桂皮(けいひ)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、そして大黄の6種類の生薬で構成されている漢方薬です。
傷寒論の基本処方である桂枝湯から、益気、補血効果のある芍薬を増量したのが桂枝加芍薬湯です。さらにそこに大黄を加えたのが桂枝加芍薬大黄湯になります。
長続きするつらい便秘やしぶり腹への効果
桂枝加芍薬大黄湯は、冷え性が目立ったり、高齢者などのしぶり腹によく処方されます。身体を温め、便を出す方法なので、自然と胃腸も活発化し、消化や吸収力も高まっていきます。
薬の服用とともに、食物繊維を多く摂取したり、精神的なストレス要因の解消などを同時に行いつつ、治療していきます。
お腹の調子が悪い?しぶり腹とは何か
しぶり腹とは、お腹が張ってしまい、便がきちんと出ない状態です。便意があるのにも関わらず少量しか出ない、あるいはまったく出ない状態を指します。排便してもお腹の痛みが治まらず、スッキリとしないためストレスも溜まります。
しぶり腹は大腸炎などの炎症が原因で引き起こる場合があります。潰瘍性の大腸炎のほか、伝染病の赤痢が原因になっている場合もあります。
過敏性腸症候群にも桂枝加芍薬大黄湯
過敏性腸症候群とは、下痢や便秘などが慢性的に起こる便通の異常です。ストレス等の心因性、粘膜の炎症、腸内細菌、神経伝達物質など、様々な要因が考えられます。
過敏性腸症候群の第一選択としては、桂枝加芍薬湯を用いますが、便秘が目立つ場合は桂枝加芍薬大黄湯を処方する場合もあります。
桂枝加芍薬大黄湯で痩せるって本当?
便秘は腸内の悪玉菌を増殖させ、腸内環境が悪化し、老廃物を溜めやすい身体になっていきます。新陳代謝の低下に繋がり、痩せにくく太りやすい体質に変わっていきます。桂枝加芍薬大黄湯を服用し、便秘を解消して腸内環境を正常な状態に取り戻せば、痩せやすい身体になる可能性はあります。
ただ、桂枝加芍薬大黄湯はあくまで「気」や「血」のバランスを整え便秘やしぶり腹を解消するための漢方薬で、ダイエット薬ではありません。痩身効果を求め闇雲に乱用するのは控え、医師や薬剤師に相談のうえ正しく服用しましょう。
処方のポイント
冷えて膨満感のある腹痛に用いられる桂枝加芍薬湯に、強い瀉下作用をもつ大黄を加えたもの。
お腹が張って痛む便秘、しぶり腹(便意を催すのに排便がない、あるいは少量しか出ない)などに適応します。
甘苦味があります。
桂枝加芍薬大黄湯が適応となる病名・病態
保険適応病名・病態
効能または効果
比較的体力のない人で、腹部膨満し、腸内の停滞感あるいは腹痛などを伴うものの次の諸症:急性腸炎、大腸カタル、常習便秘、宿便、しぶり腹。
漢方的適応病態
裏寒腹痛。
すなわち、脾虚や気血不足のもので腹痛便秘あるいは熱痢があるもの。
慢性便秘、急性下痢のいずれもにも用いられます。
より深い理解のために
裏急後重を伴う急性下痢の場合、大黄は消炎止瀉に働きます。
桂枝加芍薬大黄湯の組成や効能について
組成
桂枝3 白芍薬6 大棗4 甘草2 生姜1 大黄3
効能
温陽・和裏・通便
主治
脾気不和による便秘
◎温陽・和裏・通便:邪気が脾虚に乗じて侵入した病態に対して、脾の陽気を温通し、通便させることによって腹部の症状を除去する治法です。
解説
桂枝加芍薬大黄湯は「桂枝湯」の芍薬を増量し、これに大黄を加えた処方です。
太陽病を解表法で治療すべきところを誤治したため、邪気が胸中に入り、脾気が停滞することによって生じる腹痛、便秘などに用います。
桂枝加芍薬大黄湯の主治については論争が多く、次の2つに大別されます。
①桂枝湯の組成が主体となっているので、表証をともなう腹痛に用います。
②芍薬の量が桂枝よりも多いので解表ではなく、温陽和裏の作用が主体となり裏証に用います。
適応症状
◇腹満・腹痛・便秘
表邪が脾胃に入りこみ、脾の運化機能が失調すると気の流れが滞るために腹部の脹満感が生じます。
気滞が長引くと血の流れも悪くなり腹痛がおこります。
脾と胃は表裏関係にあるので、脾の昇清機能失調と胃の降濁機能失調が同時に現れ、腑気不通の便秘になります。
◇苔膩
糟粕糞便の停滞によって胃濁が上逆した舌象です。
◇脈弦
腹痛が強いときにもみられる脈です。
大黄は寒性ですが、処方全体の薬性はやや温に偏っており、「承気湯」(寒下剤)とは区別しなければなりません。
大黄は瀉下作用が強く、腸に停滞している積滞を取り除きます。
血の停滞に対しては樹枝、芍薬が気血を調和します。
不通状態を解決すれば腹痛は緩和されるでしょう。
臨床応用
◇下痢
悪寒、発熱などの表証と同時に、腹痛、しぶり腹など急性下痢がみられるときに用います。
「桂枝湯」で解表去邪、芍薬で緩急止痛、大黄で瀉下通便の目的を果たします。
急性でもなく、表証もみられない、慢性の下痢に用いてもよいでしょう。
腹部が冷えて痛む症状を弁証の要点とします。
◇便秘
虚弱体質者、脾胃虚弱者、病後の人などの便秘で寒証をともなう場合に適しています。
中国では、便秘をともなう頑固な蕁麻疹に用いることもあります。
「桂枝湯」の陰陽・営衛を調和する作用、大黄の瀉下作用によって疹毒を除去できます。