加味帰脾湯(かみきひとう)は何に効く?効果がある症状について解説
加味帰脾湯(かみきひとう)は心身ともに疲労が目立つ方に処方される漢方薬です。「帰脾湯」に”柴胡”と”山梔子”という生薬を加えた漢方薬で、イライラなどの神経症状、精神的な不安によるストレス・不眠を改善します。
目次
加味帰脾湯は自律神経の不調におすすめ
自律神経は、内臓機能の調節やホルモン分泌に関わる重要な神経で、身体の調子を左右します。心拍数や体温、血圧を上げて活動的にしたり、逆に心身をリラックスさせて休息したりと、アクセルとブレーキの役割を果たします。
私たちの身体は、日中には交感神経が、夜間には副交感神経が働き、バランスが取れている状態です。しかし、いったん自律神経が不安定になると、このコントロールがうまくいかなくなります。
加味帰脾湯は「気(き)」を巡らせ、「血(けつ)」を補い、気持ちを落ち着かせます。特に、疲労感の目立つ自律神経の失調に用いられる漢方薬です。
加味帰脾湯はストレスを解消し精神安定をもたらす
仕事や家庭、友人関係、将来への不安など、現代社会はストレスの塊です。加味帰脾湯は精神不安などのストレスに悩む方にも用いられる漢方薬です。特に、日常的に貧血気味だったり、顔の血色が悪い方に適しています。
また、軽度のうつ状態や、耳鳴り、めまいにも効果があるといわれています。心療内科や精神科に通ってもあまりなかなか改善せず、塞ぎ込んでしまっているような方にもおすすめです。
加味帰脾湯は物忘れに対する効果も注目されている
症例数は少ないものの、アルツハイマー病の物忘れに対する加味帰脾湯の有効性が注目されています。古い文献にも、加味帰脾湯を構成する生薬のひとつ「遠志」の効能に”不忘”と書かれており、新たな健忘症の治療法としても期待されています。
加味帰脾湯と耳管開放症の改善について
鼻と耳をつなぐ耳管が開きっぱなしになってしまう病気を耳管開放症といいます。加味帰脾湯の投与により、症状が改善できた症例が報告されています。耳管開放症はストレスも一因なので、精神安定作用により気分が楽になり、症状が緩和されるケースがあります。
処方のポイント
健忘、不眠、動悸に対応する帰脾湯に、血行を調える柴胡、熱を下げる山梔子を加えたもの。
帰脾湯の適応症状に比べて、よりイライラ感が強い症状に適応します。
甘苦味で、温服が効果的です。
加味帰脾湯が適応となる病名・病態
保険適応病名・病態
効能または効果
虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症:貧血、不眠症、精神不安、神経症。
漢方的適応病態
心脾両虚の肝火旺。
すなわち、疲れやすい、倦怠無力感、元気がない、息切れ、食欲不振、腹が張る、軟便や水様便などの脾気虚の症候と、健忘、頭がふらつく、ボーッとする、めまい感、動悸、眠りが浅い、多夢などの心血虚の症候がみられるもので、さらにイライラ、のぼせ、ほてり、胸苦しいなどの肝火旺の症候を伴うものです。
加味帰脾湯の組成や効能について
組成
黄耆3 人参3 白朮3 茯苓3 甘草1 遠志2 大棗2 当帰2 酸棗仁3 竜眼肉3 木香1 生姜1 柴胡3 山梔子2
効能
益氣健脾・養心補血・疏肝清熱
主治
心脾両虚・肝鬱化熱
解説
加味帰脾湯は「帰脾湯」に柴胡、山梔子を加えた処方です。
柴胡は疏肝理気と同時に肝熱を清することができ、山梔子は清熱除煩の作用があるので、心熱の傾向がある症状に適しています。
主に脾虛、謄、心神不安の病証を治療します。
例えば気血不足(心脾両虚)の病証に、肝鬱化火や心神不安の症状優鬱、胸脇脹満、イライラ、怒りっぽい、不眠頭痛、舌紅、脈がやや数など)をともなうときに用いることができます。
臨床応用
◇鬱証
慢性化した鬱証では、気血消耗の状態が多くみられます。
加味帰脾湯は気血を補益する作用の生薬と安神作用のある酸棗仁遠志、竜眼肉、および疏肝淸肝作用のある柴胡、山梔子が配合されているので、精神安定の効果が期待できるでしょう。
臨床では、鬱証のほかに自律神経失調症、婦人科の不定愁訴、更年期症候群の治療に用います。