肺炎の分類とは?原因・炎症を起こす組織・感染場所の違い

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肺炎は日本人の死因の第3位にもなっていることからも分かるように、死に直結した病気です。

とはいえ、肺炎にはさまざまな種類があり、原因や症状、治療法も異なります。ここでは肺炎の分類について解説します。

肺の構造

肺炎について説明する前に、肺の構造について簡単に説明しておきましょう。肺は胸の中に左右に1つずつあります。さらに、右側は大きく分けて3つ、左側は2つに分かれています。

人が空気を吸うと、のどから気管へと入ります。気管は心臓の後ろの辺りで左右に分かれて気管支となり、それぞれの肺の中に入っていきます。それぞれの肺の中に入った気管支は、次々と分岐します。そして23回分岐した末端に、肺胞という風船状の構造を作ります。

この肺胞で、空気中の酸素を取り込んで二酸化炭素を空気中に排出します。

肺胞は酸素と二酸化炭素の入れ替えをするために特殊な構造をしています。肺胞の壁のことを肺胞壁といいます。肺胞壁は非常に薄いのですが、その中に弾性線維という伸ばされたら縮む線維があるほか、毛細血管が走行しています。このように、弾性線維や毛細血管がある、肺胞壁の内部構造のことを肺胞の間質と呼びます。

一方で、肺胞の内面は、肺胞上皮細胞と呼ばれる細胞で埋め尽くされています。この細胞は空気を通過させる役割のほか、粘液を分泌して肺胞の中を常に湿らせて肺胞が動きやすくし、異物が入ったときに流れ出させる作用を持っています。

さらに、異物が感染症を引き起こすような微生物だったときには、毛細血管の中から免疫を担当する白血球が上皮細胞を通過して肺胞の中に入り込み、微生物に攻撃を仕掛けます。

肺胞壁の構造は家の壁の構造に似ています。つまり、部屋の中の環境を整えるさまざまな役割を担う壁紙が、肺胞上皮細胞といえます。壁紙のうらに断熱材や配管が通っているように、肺胞上皮細胞には弾性繊維や毛細血管があり、この部分を間質といいます。

原因の違いによる肺炎の分類

健康な人の場合、感染症を引き起こすような病原体は気管や気管支の部分で排除され、肺胞まで入ってくることはあまりありません。肺胞の中は元々無菌で、きれいな場所なのです。

しかし、何らかの理由で免疫が弱くなったり、非常に感染力が強く気管や気管支の免疫では抑えきれないような病原体が侵入してきたりしたときには肺炎が引き起こされます。

細菌性肺炎

細菌性肺炎は、細菌によって引き起こされる肺炎です。代表的な菌として、肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌などがあります。これらの細菌は肺胞の中に入ると非常に増殖力が強く、免疫が正常な人でも肺胞の中に侵入を許すと肺炎が引き起こされます。

症状としては湿った咳と共に、原因となる細菌によって黄色や緑色を帯びた痰が出ます。肺胞に侵入するとその場所からどんどん増殖していくので、肺の一部分に強い炎症の像が見られることが多くなります。

増殖力が強いため、高齢者で治療を行わなかったり治療開始が遅かったりすると健康な人でも重症になる場合があります。そのため、肺炎球菌ワクチンの接種や早期に治療を開始することが勧められています。

ウイルス性肺炎

ウイルス性肺炎は、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルスなど、さまざまなウイルスが原因で起こります。なおCOVID-19感染による肺炎もウイルス性肺炎です。

細菌性肺炎とは異なり、ウイルス自体は人の細胞に侵入し、人の細胞の機能を利用して増殖し、放出されます。ウイルス自体は非常に小さいため、飛沫や飛沫核などに含まれることで空気中を漂い、感染します。肺の広い範囲に炎症を起こすのが特徴です。

症状としては、最初はかぜのような症状が出ますが、ウイルスの広がりを反映して激しい咳、高熱、倦怠感などの症状が出てきます。

非定型肺炎

マイコプラズマ、クラミジアなどの微生物によって引き起こされる肺炎です。これらの微生物は細菌とウイルスの中間的な性質を持ちます。というのは、細菌のように一つの細胞として存在できるほど強い壁を持っているわけではないのですが、ウイルスのように人の体の細胞を利用しないと増殖できないわけではなく、自分自身の力で増殖できるという特徴を持っているからです。

このような特徴から、ウイルス性肺炎のように広い範囲の肺に炎症を起こす一方で、細菌性肺炎のように一部の抗生物質であれば効果が見られるという特徴があります。

症状としては痰が少なく、乾いた咳が長く続くことが多いです。

閉塞性肺炎

閉塞性肺炎というのは、これまでに述べた原因微生物による分類とは違った概念の肺炎です。

肺は無数の肺胞でできており、肺胞は気管から気管支を通して常に換気されています。しかしこの気管支が何らかの原因で空気が通れない状態になってしまい、肺胞の中の空気がその場にとどまってしまうことがあります。

このように、空気が出入りしていない肺の部分を無気肺といいます。そして無気肺の部分では空気だけではなく微生物などがその場にとどまり、肺炎を起こしてしまうのです。

この場合、治療としては原因となる微生物に対する抗生物質などの治療も考えられますが、外へ排出されなければなかなか病状は改善してきません。多くの場合、気管支は痰で詰まっているので、痰を出しやすくする薬を併用することで無気肺の改善を図り、治療を行っていきます。

誤嚥性肺炎

通常であれば消化管の中を通過する物質を誤って気道の方に流し込んでしまうことを「誤嚥」といいます。誰でも食事中に誤ってむせてしまった経験があると思います。むせるというのは気管の中に何らかの物質が入り込むことで反射が起こり、咳が出ている状態です。

しかし高齢化や何らかの病気で咳が弱くなると、このむせ込みが弱くなってしまったり、出なくなったりしてしまいます。すると、消化管の中に入るべき物質が気管から肺に流れ込み、その場で炎症を起こします。よくあるのが口の中にいる常在菌が流れ込むことです。

特殊な誤嚥性肺炎としては、嘔吐によって胃液を含んだ消化物が流れ込む場合があります。胃液は非常に強力な消化液ですから、肺の中で強い肺炎を引き起こしてしまいます。

誤嚥性肺炎は、大抵寝ているときに起こります。重力によって流れ込むことで、背中側の肺に肺炎が起こることが多くなります。

肺炎によって炎症を起こす組織の違い

肺炎の炎症は肺胞の中、または間質で起こり、それぞれ肺胞性肺炎、間質性肺炎といいます。

肺胞性肺炎

肺胞性肺炎は、肺胞の中で起こる肺炎です。微生物や異物が入り込むことで免疫が反応し、肺胞の中や肺胞壁の細胞に炎症が起こります。炎症が起こると周囲の血管から水分がしみ出してきますから、肺胞の中が水浸しになります。

肺炎のレントゲンを見たことがある方は、医師から「白っぽいところが肺炎です」と説明されたかもしれません。レントゲンでは水分が多いところが白っぽく映るという特徴があります。つまり肺炎で肺胞の中が水浸しになっている状態が見えているのです。

肺炎を起こす原因物質によって広がり方は異なりますから、それによって像が出てくる場所が変わってきます。

間質性肺炎

間質性肺炎は、肺胞の壁の中(間質)に起こる肺炎です。この肺炎は気道から入ってきた物質によって引き起こされることは少なく、多くは自分自身の免疫の異常か、薬剤などの影響によるものです。

この場合、肺の全体で反応が起こり、肺の全体に肺炎が認められます。肺胞の中で炎症が起こって水分が肺胞の中に出るわけではないため、べったりとした肺炎の画像は見られません。

肺炎に感染する場所の違い

細菌やウイルスに感染して肺炎を起こす場合、場所によって臨床像が異なり、市中肺炎と院内肺炎に分類されています。

市中肺炎

市中肺炎とは、一般に人々が生活している環境で感染する肺炎になります。先ほど述べたさまざまな肺炎が当てはまります。

院内肺炎

院内肺炎とは、病院内や介護施設など、体が弱った人が多く一緒に生活をしている場所で起こる肺炎です。この場合、体が弱った人にかかりやすい細菌やウイルスなどによる肺炎が多くなります。

市中肺炎と院内肺炎では、背景となる患者の状態や周囲の環境が色々と異なり、肺炎の原因となる微生物も大きく異なります。そのため、市中で感染したのか病院や介護施設などで感染したのかによって治療法が変わってきます。


<執筆・監修>

郷正憲先生プロフィール画像

徳島赤十字病院
麻酔科  郷正憲 医師

麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。
麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。
本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。
「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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