熱中症の回復にかかる日数は?熱中症の応急対応から回復までを解説
真夏日や熱帯夜の増加に伴って熱中症の発生が高くなります。毎年熱中症に伴う事故のニュースは多く、みなさん注意していることでしょう。
しかし、どんなに注意していても知らず知らずにうちに体内の水分が失われて症状が出てくるのが、熱中症の怖いところです。今回はその熱中症について詳しく見ていきましょう。
目次
熱中症の重症度
熱中症の症状は、重症度によって3つの段階に分類されます。
I度
現場での応急処置で対応できる軽症。脱水症がメインであり、高体温にはならない。
熱失神、たちくらみ(脳への血流が瞬間的に不十分になることで生じる)、筋肉痛、筋肉の硬直、こむら返り(発汗に伴って塩分が不足することで筋肉内の水分が不足する)、大量の発汗などが起こる。
II度
病院への搬送を必要とする中等症。高体温となる。
頭痛、気分不快感、吐き気、嘔吐(脳に行く血流が熱くなる)、全身倦怠感、虚脱感(全身への血流が熱くなる)などいくつかの症状が重なり合う。さらに血圧の低下、頻脈、皮膚の蒼白、多量の発汗などのショック症状がみられる。
III度
入院して集中治療の必要性のある重症。
異常高体温(40℃程度)、意識障害、けいれん、血圧低下(自己温度調節機能の破綻による中枢神経系を含めた全身の多臓器障害)、多臓器不全(体内の血液が凝固し、脳、肺、肝臓、腎臓などの全身の臓器の障害を生じる)に陥ることがある。
子どもの熱中症の特徴
子どもは体温調節機能や汗腺の働きが十分に発達していません。そのため、熱中症になりやすいので注意が必要となります。
締め切った車の中や、炎天下の戸外に長時間いると、容易に熱中症になってしまいます。ちょっとだけならいいかと車の中にエンジンをつけずに子どもを放置しておくと、炎天下ですと5~10分程度で車内の温度は上昇して、瞬く間に熱中症になってしまいます。
また、熱中症は夏だけと思われがちですが、冬でも電気毛布や電気カーペットに寝かしておくことでも熱中症になることがあります。乳幼児は特に、体温調節も未熟であるため、知らないうちに熱中症になっていることも多いため、注意が必要です。
高齢者の熱中症の特徴
高齢者は、屋外だけでなく室内でも熱中症を発症する場合があります。体温調節機能が低下していたり、暑さやのどの渇きを感じにくくなっているため、乳幼児と同様に知らないうちに熱中症になってしまいます。さらに乳幼児と違って一人暮らしの高齢者も多く、発見が遅れることも多々あります。
熱中症のメカニズム
熱中症は、炎天下でのみ発症するとは限りません。気温や温度の上昇といった体の外側で起こる要素(外的因子)と、運動による体温の上昇といった体の内側で起こる要素(内的因子)の2つの因子によって体温が上がる状況が生まれます。
このとき通常であれば汗をかいたり、皮膚表面から熱を逃がしたりすることで体温が上がりすぎないように調節することができます。
しかし、水と塩分の補給、暑い場所からの避難ができないと、体温が上がり、大量の汗をかき、体内の水や塩分が減ってしまいます。そうすると脱水症状が起こってしまい、汗をかけなくなってさらに体温が上がるという負のループに陥ってしまうのです。そうなることで、体温が上昇し、熱中症を引き起こしてしまいます。
熱中症の応急対応と医療機関での治療
立ちくらみ、筋肉のこむら返り、体に力が入らない、ぐったりする、まっすぐに走れない・歩けないなどの症状が出たときは、どうしたらいいのでしょうか。まず取り組むべき応急対応を紹介します。
涼しい場所に移る
風通しのよい日陰や、クーラーが効いている室内などの涼しい場所へ移動しましょう。
身体を冷却する
衣服を脱がせたり、きついベルトやネクタイ、下着をゆるめて身体から熱を放散させましょう。
露出している皮膚に冷水をかけて、うちわや扇風機などであおぐことによって体を冷やしましょう。
また、氷嚢などがあれば、それを首の両側、脇の下、大腿の付け根に当てて、大血管(太い血管)を冷却して体温を下げましょう。
水分・電解質の補給
汗で失われた電解質も適切に補えるスポーツドリンクや経口補水液などを摂取しましょう。
水だけですと筋肉などに水分が到達できず、熱中症を防ぐことが難しくなります。目安はナトリウム40~80mg/100mlとなります。意識障害が出ている場合などは、無理に飲ませることは避けましょう。誤って水分が気道に流れ込み、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。
上記のような応急処置をしても改善しない場合、または呼びかけや刺激に対する反応がおかしい、ぐったりしている時は医療機関を受診しましょう。
医療機関でも熱中症による高体温となっている場合には、氷枕や氷嚢などを用いてクーリングする冷却療法を行います。また、脱水症状が見られる場合には、点滴で補います。
熱中症の回復までの日数・経過
回復までにかかる期間には個人差があり、あくまで目安ではありますが、軽症の場合は、応急対応することで10分程度で改善がみられてきます。長くても2~3時間程度で改善します。
逆にすぐに改善がみられないようであれば、医療機関の受診を考えましょう。中等症で医療機関を受診した場合でも点滴やクーリングを行うことでその日に改善することが多く、入院が必要となるケースは少ないです。
しかし、重症となる場合には入院が必要となり、最短でも2~3日はかかることとなります。多臓器障害の程度により入院期間も変わってきますが、処置が遅れれば遅れるほど、改善が乏しくなり、回復に時間がかかります。
症状回復期の注意点
熱中症になって回復後は、再び熱中症にならないための注意が必要となってきます。水分・塩分補給はもちろんのこと、熱中症にかかったときと同じ環境や行動を避けるように気をつけましょう。また、休憩や食事、睡眠をとることで身体に負担をかけないよう心がけましょう。
いかがでしたでしょうか。熱中症は身近に存在しており、予防方法などはみなさんよく知っていると思いますが、実際に熱中症になったときにどのような処置をとればいいのかは知らなかったという方も多いと思います。
予防方法とともに応急対応の方法も知っておくことで、迅速な行動をとることができ、重症化の回避に役立つでしょう。
<執筆・監修>
九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師
高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。