ロキソニンを長期服用するとどうなる?頭痛や皮膚の異常などの副作用
ロキソニンは薬局でも購入が可能な鎮痛薬として多くの人に利用されています。しかし数年前までは、薬局では販売されず処方だけで手に入るような薬剤でしたし、現在も薬剤師がいないと薬局で販売できないという制限がついている薬剤です。
これは、ロキソニンには危険性や副作用があり、慎重に使用する必要があるということに他なりません。ここではロキソニンの危険性や副作用について解説します。
目次
ロキソニンとは
ロキソニンはロキソプロフェンという成分を含んだ鎮痛薬です。痛み止めはどのようなメカニズムで痛みを抑えるのかを解説する前に、人はどうして痛みを感じるのかを確認しておきましょう。
人の肌や筋肉には、痛みを感じるセンサーがあります。皮膚に傷がついたり、筋肉が痛んだりすると、そのセンサーが反応し、神経が痛みの情報を伝達し、脳が痛みを認識します。
そのとき同時に、傷ついた皮膚や筋肉を修復しようと炎症反応という反応が起こります。炎症反応は、シクロオキシゲナーゼ(COX)という物質を産生し、血液中に放出することで、全身から組織を修復するための細胞や物質が集まってくることによっておこります。
この炎症反応が起こると、組織の修復が始まるのですが、一方では痛みを感じるセンサーが過剰に反応するようになります。そのため、炎症が起こっている場所では通常では痛みを感じない程度の刺激でも痛みを感じるようになります。怪我をしたところを触るだけで痛みを感じるのはそのためです。
ロキソニンの働き
ロキソニンをはじめとした多くの痛み止めは、COXという物質の働きを阻害する薬です。
それにより、炎症反応を鎮め、痛みのセンサーが過剰に反応するのを防ぐことで痛みを抑えます。また、痛みに加えて炎症によって引き起こされる発熱も抑えるため、解熱薬としても使用できます。
しかし一方で、炎症が関わらない痛みには効果がありません。例えば胃腸の痛みは炎症が関わる痛みではありませんので、ロキソニンは効きません。あくまで皮膚や筋肉、骨などの痛みに限定して使える薬であるとお考えください。
ロキソニンを長期服用するとどうなる?
ロキソニンはよく効く痛み止めですが、前述の通り販売を制限されている危険性のある薬剤です。では、安全に使用するにはどのように使用すれば良いのでしょうか。
ロキソニンの服用期間の目安
ロキソニンは、副作用が多い薬ですので、長期間頻回に使用することは避けなければなりません。
具体的にどれだけの期間連用してはならないという記載は添付文書にはありません。適切な服用期間は、その人の元々の全身状態、副作用の起こりやすさ、一日に何回内服するのかという内服頻度などが関わります。大まかにではありますが、元々元気な人の場合、2~3日であれば、1日2~3回の内服を続けても大丈夫なことが多いと思われます。しかし、元気な人でも1週間も内服を続ければ、胃のあたりの違和感を感じることが多いようです。
1日1回程度であれば、1~2か月程度飲み続けても症状がないことも多いです。しかし、実際には症状がなくても体の中ではさまざまな副作用が起こっていることもあるため、1か月以上毎日飲むのであれば他の痛み止めの使用や、痛みの原因に対する直接的な治療を行うことを検討すべきでしょう。
長期服用はなぜ危険?
では、長期に服用するとなぜ危険なのでしょうか。先ほど説明したように、ロキソニンはCOXの阻害薬です。このCOXにはCOX-1、COX-2という2種類があり、ロキソニンはそのいずれも阻害します。
このCOXのなかで、炎症の際に働くのはCOX-2です。では、COX-1はどのような働きをしているかというと、全身さまざまな場所で身体機能の維持に関与しています。ロキソニンを長期服用するとこれらのCOX-1も阻害されてしまうので、全身のさまざまな場所に影響が出てきてしまうのです。
服用期間を問わず中断した方がよい場合
服用期間が長いと悪影響が出やすいということに加えて、短期間の服用でも、ロキソニンによる副作用と思われる症状が出現した場合には服用を中止しましょう。
具体的には、胃が痛い、便秘が起こる、むくみがひどくなるといった症状が出る場合は、さまざまな副作用が起こっていることが考えられます。これらの症状があってもさらに内服を続けると、さらに障害が強くなってしまい、吐血を起こしたり不可逆的な腎機能障害が起こったりすることがあります。副作用と思われる症状は、体からの警告であると考え、内服をすぐにやめるようにしましょう。
ロキソニンを長期服用した場合の副作用とは
では、ロキソニンを長期間服用した場合にはどのような症状が出現するのでしょうか。長期内服の影響も、基本的にはCOX阻害による副作用がほとんどです。
すぐに症状が起こる場合もありますし、徐々に起こる副作用もありますから、内服する場合は症状がないからといって安心することなく、これらの副作用が起こっているかもしれないと考えて適切に使用しましょう。
薬物乱用頭痛
ロキソニンは非常に優秀な痛み止めで、さまざまな痛みに使用されます。特に頭痛の人の場合、病院にかかるまでもないと考えて市販薬のロキソニンを内服して対応している人も多くいます。
膝が痛い、肩が痛い、腰が痛いなどの症状であれば整形外科を受診して、痛み止めを飲むだけではなくそれ以外の対処法を得ようとすることが多いのですが、頭痛であればそのような対応は必要ないと考えることが多いのでしょう。
しかし、ときどき頭が痛いときに数回ロキソニンを飲むだけであればかまわないのですが、常に頭痛に悩まされるからと痛み止めを内服し続けてしまうと、薬物乱用頭痛という頭痛が起こることがあります。薬物乱用頭痛は比較的新しい概念で、近年では日々頭痛に悩まされている人の多くがこの頭痛ではないかといわれています。
この症状はどうして起こるのか、はっきりとした原因が全て分かっている訳ではないのですが、頭痛薬を頻回に内服すると、それにより脳が痛みに過敏になってしまうのが原因ではないかといわれています。薬を内服することで痛みをあまり感じなくなってしまっている状態を脳がおかしいと感じ、鋭敏に痛みを感じることで身を守ろうとするようです。
この薬物乱用頭痛のやっかいなところは、痛みの原因がまさか痛み止めであるとは思わないため、痛みが強くなるとさらに痛み止めを多くのんでしまうことにあります。痛み止めを飲めば飲むほど痛みが強くなり、さらに痛み止めの効果が弱くなってしまうという悪循環が起こってしまうのです。
専門医の受診が必要なケース
具体的には、月に10回以上痛み止めを飲んでいる場合は薬物乱用頭痛を起こしている可能性がありますから、専門医の受診をオススメします。
専門医を受診した場合、まず行われるのは頭痛の原因を考えることです。頭痛には片頭痛や緊張性頭痛(筋緊張性頭痛、緊張型頭痛などとも呼ばれます)、群発頭痛などさまざまなものがあり、それぞれに適した薬剤があります。これらの薬剤を開始するとともに、痛み止めの減量を行っていくことで、適切に痛み止めを使用できるようにします。
胃腸への影響
胃は食物を消化するために非常に強力な酸である塩酸を含んだ胃酸を分泌しています。この胃酸は食物を消化する一方で、自分自身の体に対しても影響を与え、傷害してしまいます。それを防ぐため、胃粘膜からは胃粘膜を守るための防御因子が分泌され、粘膜面を覆うことで胃酸が胃粘膜へ届かないようにしています。
この防御因子の分泌を促進するために重要な役割を果たすのがCOX-1です。ロキソニンを内服するとCOX-1が阻害されてしまいますから、胃粘膜を守る防御因子が減少し、胃粘膜障害が起こってしまいます。
軽度であれば胃炎で済みますが、重度になると粘膜が消化されてしまい、胃潰瘍や、胃潰瘍がさらに深くなり、胃に穴が空いてしまう胃穿孔へと至ってしまいます。
また、近年ではロキソニンによる胃腸への障害として、小腸や大腸の狭窄が起こることが分かってきました。以前は添付文書にも書かれていなかったのですが、稀ながら数例報告されたとのことで追記されています。狭窄が起こる詳しい機序は分かっていませんが、粘膜のただれと修復が繰り返されることによってだんだんと腸管壁が肥厚したり、癒着したりすることで腸が狭くなっていくのではないかといわれています。
腎機能への影響
ロキソニンによる副作用の主なものは胃腸障害と腎障害といわれています。もともと腎臓は血液を濾過して尿を産生する臓器です。血液を濾過するため、非常に多くの血液が流れていますし、必要に応じて血管を広くすることで腎臓に血液を多く流して尿の量を多くするような調節が行われています。
この調節を行っている物質の1つがCOXです。ですので、ロキソニンを内服するとCOXが阻害され、腎臓への血流調節が阻害されます。具体的には腎臓への血流が減少してしまうので、腎臓での尿の産生が減少し、急性の腎不全が起こります。
しかも、それだけではなく慢性的にCOXが阻害されると腎臓自体を栄養する血流も不足してしまい、腎臓自体の機能が低下してしまうこともあります。
腎機能が低下すると尿の産生が阻害されるため、体に水分が多くたまってしまい、むくみとして現れてきます。ただし、むくみがなくても体の中の有害物質を体外に排出する機能が落ちている場合はありますから、むくみがなければ腎機能は低下していないと判断はできません。
消炎鎮痛薬による慢性蕁麻疹
ロキソニンをはじめとする消炎鎮痛薬を内服した後に蕁麻疹が起こってくることがあります。
それらの薬を使用した後、数分から半日程度経過した後におこってくる物で、地図上に盛り上がったかゆみを伴う蕁麻疹が見られます。また、唇やまぶた、顔面が腫れてしまう血管浮腫という副作用も出てくることもあります。
蕁麻疹の原因はさまざまありますが、医薬品が原因となる蕁麻疹のなかでも消炎鎮痛薬による蕁麻疹は特に多いことが知られています。慢性蕁麻疹の患者さんの20~35%は消炎鎮痛薬で悪化すると言われていますし、とくに慢性蕁麻疹がない人でも消炎鎮痛薬を使用したときだけ蕁麻疹が出てくる場合もあります。
一般的には薬の効果が強いほどこのような副作用が起きやすく、症状も重篤化しやすいことが知られています。ロキソニンは消炎鎮痛薬のなかでも強い方の消炎鎮痛薬になりますから、蕁麻疹も起こってきやすいと言えます。
蕁麻疹の症状が皮膚のかゆみだけであれば様子を見る方法もありますが、蕁麻疹が重篤化すると唇やまぶた、舌、口の中、顔、首が大きく腫れて息苦しくのどが詰まったようになったり、話をしづらくなったりする場合があります。このような場合はアナフィラキシーといって気道の粘膜が腫れ、空気が通りにくくなっている状態が想定されますから早急に病院を受診する必要があります。
医薬品が原因になる急性汎発性発疹性膿疱症
2022年にロキソニンの副作用に急性汎発性発疹性膿疱症が追加されました。
急性汎発性発疹性膿疱症とは、38℃以上の高熱が出るとともに急速に全身が赤くなり、赤い斑点ができてくる病気です。赤い部分には多数の小膿疱と呼ばれるちいさな白っぽい膿のようなブツブツした皮疹ができてきます。
ほとんどの場合は医薬品を飲んだ数日以内に発症し、原因医薬品の服用を中止すると約2週間で発疹が軽快してきます。
発症メカニズムは、医薬品などにより生じた免疫やアレルギー反応と考えられます。原因となる医薬品としては種々の抗菌薬や抗真菌薬、痛風の治療薬、抗てんかん薬、降圧薬などがあります。そこにロキソニンも追加されました。
急性汎発性発疹性膿疱症が疑われる症状
高熱、皮膚の広い範囲に発赤が見られる、発赤の上に白いぼつぼつができる、全身倦怠感や食欲不振があるといった症状がある場合、急性汎発性発疹性膿疱症が疑われます。特にこれらの症状が急激に出現してきたり、急に増悪してきたりした場合には強く疑われます。
症状が出現するまでには数日以内となっていますが、原因薬剤に既に暴露された経験がある上に再度薬剤を内服した場合には数時間から数日以内に発症してくるのに対し、初めて内服する薬を継続して内服している場合には服用開始後1~2週間後に発症してくる場合もあります。このような時間のズレがあるために診断が遅くなってしまうことも時折あります。
リスク因子として感染症や乾癬、関節リウマチ、白血病、糖尿病などを基礎疾患として有している場合に発症しやすいという特徴もあります。また、高齢者や肝機能、腎機能が低下している患者さんの場合には症状が重症化しやすいという特徴もあります。
ロキソニンの使用を避けた方がよい人
副作用が起こりやすい人や、既に副作用が起こっているような人はロキソニンの使用を避けましょう。例えば胃痛が起こっている場合や、むくみがある場合は内服を避けましょう。また、頭痛が続いて頻回に内服している人も、内服自体が頭痛の原因である可能性が高くなりますから内服を避けましょう。
他にも高齢者は内服を避けるべきといわれています。高齢者はもともと胃潰瘍を持っていたり、腎機能が低下していたりしますから、ロキソニンの内服で副作用が出てきやすくなります。また高齢者はもともと体内の水分量が少ないことから、薬の血中濃度が上がりやすく、副作用が出やすいといわれています。
ロキソニンを避ける場合は、どのように痛みに対処すれば良い?
ロキソニンはやめた方が良いといわれても、実際に痛みがある場合には痛み止めを飲みたくなると思います。そんなとき、市販の他の痛み止めを内服すると考える人も多いのではないでしょうか。
しかし、市販の痛み止めの多くはロキソニンと同じく、COXを阻害する薬剤が使われています。イブプロフェンやボルタレンといった薬はいずれもCOXを阻害することで痛みを抑える薬になりますから、ロキソニンを避けてもそれらの薬を内服すれば同じような副作用が出てしまいます。
代替として使える痛み止め
代替として使える痛み止めとしては、アセトアミノフェンという薬剤があります。アセトアミノフェンはロキソニンやその他の鎮痛薬と違い、COX阻害をしない鎮痛薬になりますから、副作用がほとんど無く使用できます。
一部の市販薬にはアセトアミノフェンのみが使用されている薬剤もありますから、探して使用してみると良いでしょう。アセトアミノフェンはロキソニンなどと異なり、即効性には欠けますが、むしろ定期的に内服することで安定した効果が得られる薬剤です。慢性的な痛みに向いています。市販の薬はや含有量が少ないため、すこし痛み止めとしては弱い印象があるかもしれませんが、医療機関では必要に応じて多めに処方することで対応している場合が多いです。
もう一つの痛み止めとしては、セレコキシブがあります。こちらはロキソニンと同じくCOX阻害薬ですが、炎症に関与するCOX-2のみを阻害する薬です。COX-1はほとんど阻害しませんから、胃粘膜障害などの副作用はあまり起こりません。ただし、腎機能にはCOX-2も関わっていますから、腎機能障害がある場合は使用をためらいます。
これらの鎮痛薬を使用するのも1つの手段ですが、最も大事なのは、痛み止めはあくまでも症状を抑えるだけの薬剤で、原因の治療ではないことを理解することです。
痛み止めを使って一時的に痛みが治まったとしても原因が改善しなければ痛み止めの効果が切れるとまた痛みがやってきます。痛みが続くのは体からのサインだと考えて、痛みの原因を治療することに意識を向けるようにしましょう。