もしかして寝不足のせい?鼻血が出やすくなる原因

お悩み

鼻血の多くは空気の乾燥や鼻炎などで鼻の粘膜が弱くなることで、細く小さな血管(毛細血管)が破れて起こります。しかし、鼻血の原因はさまざまであり、楽観視できない鼻血もあります。鼻血が出る原因について詳しく見ていきましょう。

寝不足で鼻血が出ることもある?

寝不足は鼻血と関係がなさそうですが、実は関係あります。多忙な生活や夜更かしを行うことでストレスが溜まったり、寝不足が続くと、疲れを強く感じるようになります。

そうなると自律神経失調症になりやすくなってしまいます。自律神経失調症になると、鼻の毛細血管が切れやすくなり、鼻血が出やすくなります。なかには、寝不足によるストレスが原因で朝目が覚めたと同時に鼻血が出てしまう人もいるほどです。

鼻血が出やすくなる原因

一般的な鼻血は、キーゼルバッハ部位からの出血のことを指します。キーゼルバッハ部位は鼻中隔の1cmほど奥の部分であり、粘膜が非常に薄くなっています。

また、静脈が集中していることから鼻血が出やすくなると言われています。鼻血の原因を見ていきましょう。

機械的な刺激

一番多い原因としては、機械的な刺激です。特に小児では鼻前庭炎、上気道炎、鼻アレルギーなどが原因となって鼻をこすったり、鼻の中を指ですすったりする機械的な刺激が大きな原因となります。

刺激によって血管壁が脆くなったり、赤く腫れた血管になり、鼻をかんだり、顔を洗ったり、くしゃみをしたりした刺激によって容易に出血しやすくなり、だんだん習慣化していってしまいます。

外傷以外の鼻出血の原因としては粘膜の障害や乾燥があります。冬期など、肌が乾燥する時期は鼻粘膜も乾燥しやすく、出血しやすい状態となります。また、大気汚染、空調設備による人工的な環境変化も出血の誘因となります。

高血圧

高齢になると高血圧や動脈硬化のリスクが高くなってきます。高血圧や動脈硬化によって血管が脆くなると、動脈から出血することがあります。

動脈から出血するため、出てきて止まらなくなることがあります。かなりの量が出るため、血液によって誤嚥や窒息につながる場合もあります。

特にお酒を飲んだりタバコを吸ったりすることで血圧が上昇し、高血圧になりやすい傾向があります。鼻血がよく出ると思う方は控えるようにしましょう。

糖尿病

糖尿病にかかると血糖値を下げるインスリンがうまく分泌されないため、血液中に糖が残る状態になります。

糖が多く残っている血液はドロドロになって血流が悪くなるため、血管も脆くなってしまいます。血管が脆くなるとほんの少しの刺激でも鼻血が出てしまいます。そのため、糖尿病になると鼻血が頻繁に出る人が増えます。

肝硬変

肝臓にはもともと血液を固まらせる成分をつくる働きがあります。しかし、肝硬変になってしまうと、肝臓の機能が衰えてしまうため、血液を固まらせる成分が作れなくなり、血が止まりにくくなります。

血管も脆くなるため、鼻の毛細血管が切れて鼻血が出て、血が止まらないということが起こるようになります。

オスラー病

鼻血が出る遺伝的疾患にオスラー病があります。これは、特殊な遺伝子を持つことによる病気であり、主症状は鼻血を繰り返すことになります。

血管が脆くなるため、肺や脳など体のあちこちから出血してきます。日本では5,000人〜8,000人に1人がオスラー病に関する遺伝子を持っていると報告されています。しかし、遺伝子を持っているからといってすべての方が発病するわけではありません。現時点では1万人ほどと言われています。

薬剤の影響

心筋梗塞や脳梗塞などの治療に使われる血栓予防のための、アスピリンなどの抗血小板薬やワーファリンなどの抗凝固薬などを内服していると鼻血の原因となります。いわゆる血液をサラサラにする薬です。血液を固まりにくくしているため、一度出血するとなかなか止まらないことが多いです。

抗生物質の長期服用による腸内細菌叢の変化によるビタミンK欠乏や、偏食によるビタミンC欠乏や低タンパク血症などの栄養障害によっても血管が脆くなるため、出血の誘因となります。

ほかにも鼻血が前兆となる病気には白血病や腎不全、鼻腔がんなどがあります。初期の段階で発見することができれば、鼻血の治療をすることは可能です。

実は間違っている鼻血の対処法

鼻血が出るとよく上を向いたり、テッシュを詰め込んだり、首の後ろをトントンする方いますよね。実はそれでは鼻血は止まりません。

ティッシュを詰めることで傷口を広げることもあり、逆効果になる可能性があります。また、上を向くと鼻血がのどの奥に流れ込んで飲み込んでしまいます。

血液が胃の中で酸化されると嘔気が出たり、血液が喉に詰まる可能性があります。上を向くのはやめた方がよいでしょう。

効果的な圧迫止血のやり方

鼻血が出ると慌てますが、まずは横にならずに、椅子に座りましょう。そして少しうつむいて出血している側の鼻を押さえます。

押さえる場所としては、小鼻の上になります。一番効果的な方法は圧迫止血です。しかし、ちょこちょこ手を離しては圧迫止血になりません。5分間手を離さずにじっと押さえ続けましょう。5分後、手を離してもまだ出ている場合はもう一度繰り返しましょう。だいたいの鼻血はこれで止血できます。

病院を受診した方がよい場合とは

しかし、危険な鼻血の可能性もあります。鼻血で貧血が進行していくこともあります。押さえても止まる気配がない、出血量が明らかに多い、顔色が青ざめている、歯茎など他の部位からの出血、10分経っても止まらないなどの症状がある場合は医療機関を受診しましょう。

医療機関では、止血剤を染み込ませたガーゼや、血液を吸収することで膨らむスポンジのようなものを詰めるなどして処置します。それでも止血できない場合は、耳鼻科医による出血部位の直接の止血操作を行います。

いかがでしたでしょうか。子どもの頃はよく出ていた鼻血ですが、大人になると滅多に出なくなります。そのため、鼻血が出ると慌ててしまいますよね。突然の鼻血は、慌てずに鼻をしっかりと抑えることが大切です。それでも止血できない場合は、医療機関の受診を検討しましょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。
日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

プロフィール

関連記事