尿潜血のプラス・マイナスの違いは?原因になる疾患と追加で行う検査

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健康診断や人間ドックの検査項目に尿潜血が含まれている場合があります。尿潜血によって尿路からの出血(血尿)の有無を調べることができ、尿路結石症や腎臓がん、前立腺がんなどの疾患の発見につながります。ここでは尿潜血について詳しく解説します。

血尿の種類

血尿は肉眼的血尿と顕微鏡的血尿に分類されます。

肉眼的血尿

尿成分に血が混じるということは、尿の自然な通り道である尿路のどこからか出血して尿に血が混在しているという状態を指しています。

尿路とは腎臓、尿管、膀胱、前立腺(男性の場合)、尿道から構成されており、これらのいずれかの部位に病変があって患部から出血している場合には、血尿として症状が現れる可能性があります。

血尿には、大きく分類すると肉眼的血尿(目で見て明らかに尿に血が混じっていることが判断できる場合)と顕微鏡的血尿(目で見ても血尿として明確にわからない尿であるが、顕微鏡で詳細にチェックすると血が混在している場合)があります。

肉眼的血尿は、小児や25歳以下の若年者を除くと、泌尿器疾患によることがほとんどであり、主に膀胱癌、膀胱炎、腎臓がん、前立腺肥大症、前立腺がん、尿路結石症、外傷性腎損傷、腎動静脈奇形、腎梗塞、ネフローゼ症候群など糸球体疾患が原因として想定されます。

顕微鏡的血尿

肉眼的血尿をきたす疾患が存在しても、出血量が少ないと顕微鏡的血尿として認識されることがあります。

また、ヘモグロビン尿(体の中で赤血球が壊れたときに出てくる尿)、あるいはミオグロビン尿(筋肉が壊れたときに出てくる尿)でも、尿潜血は陽性と変化することがあります。

精密検査を実施した結果、明らかな症状はないものの顕微鏡的血尿や尿潜血が陽性の場合には健診などで偶然発見された無症候性顕微鏡的血尿と捉えられることもあります。

顕微鏡的血尿は、健常に比べて長期的に末期腎不全への進展リスクがあると考えられますので、精密検査で異常がなくとも、血尿所見が消失しないかぎり、泌尿器疾患の除外を始めとして年に1回以上の診察や再検査が重要となります。

尿潜血「プラス」「マイナス」「プラス・マイナス」  の違い

尿潜血は、一般的に知られている尿検査で測定するもので、採尿した尿を試験紙に浸して色の変化で陰性か陽性かを判断し、万が一陽性であれば腎臓や膀胱、尿道など尿の通り道の病変や出血イベントが存在することによって、赤血球が尿に混ざっていることを示します。

テステープによる尿潜血検査によって、尿潜血を始めとして尿糖、尿タンパクの有無をチェックすることができます。

尿潜血の結果は、「-(マイナス)」、「±(プラス・マイナス)」、「+(プラス)」、「2+(ツープラス)」というように記号で判定します。「-」は陰性で異常なし、「±」は擬陽性、「+」以上が陽性と判断されます。ただし、測定方法や医療機関によって、基準値の範囲が異なる場合があります。

尿潜血陽性の場合に考えられる病気には、膀胱炎や腎盂腎炎などの感染、糸球体腎炎、腎臓・尿管結石、尿路の悪性腫瘍などが挙げられますし、激しい運動後や外傷、婦人科系からの出血で尿潜血反応が陽性になることもあります。

尿潜血が陽性の場合に追加で行う検査

健康診断や人間ドックではおよそ10%の方に顕微鏡的血尿(尿潜血陽性)が見つかります。

検診やドックで血尿が発見された場合には、症状はなくても腎臓内科や泌尿器科などの専門科の受診を推奨します。

ここからは血尿が発見されたときに追加で行う検査について解説します。

尿沈殿検査

泌尿器科を受診した場合には、受診時に採尿し、新鮮な尿で精密な検査を行ないます。

尿潜血を指摘されたら、詳しく調べる尿沈殿検査(尿沈渣)と呼ばれる検査を行い尿に混じっている赤血球の「数」と「形」を評価して、おおよそ腎臓から出血しているのか、尿管・膀胱から出血しているのかに当たりをつけます。

尿潜血陽性の際にまず行う検査は、尿沈渣であり、尿を採取して、その尿を遠心分離機で分離し沈殿物を顕微鏡でみる手法となります。

尿潜血反応には、偽陽性もありますので、尿沈渣にて赤血球が本当に尿中に出てきているかを調べて、尿沈渣で赤血球がでていれば、血尿と確定します。

尿細胞診

尿に血が混じるということは、尿路(尿の通り道)のどこからか出血して尿に血が混じっているということであり、尿路とは腎臓、尿管(腎臓から膀胱へ尿を運ぶパイプ)、膀胱、前立腺(男性の場合)、尿道(膀胱から尿を出すパイプ)から構成されています。

尿路のいずれかから出血した場合、すべて血尿として症状が現れる可能性があります。

尿細胞診は、主に膀胱がんなど悪性の細胞が尿に含まれないかを調べる検査であり、患者さんの年齢などを考慮して必要に応じて行います。

基本的に、血尿と確定すれば、その尿の中にがん細胞がいないかどうかを調べる方法が尿細胞診になります。

画像検査

尿潜血陽性の場合に、画像的な精密検査として腹部超音波を行います。

超音波検査は被爆や痛みがなく安全に行えるのがメリットですが、尿管などを評価したいときは、CT検査が情報量を多く獲得できるために推奨されることもあります。

尿沈渣で血尿と確定すれば、腎臓、膀胱、前立腺に関する超音波検査を行います。

超音波検査で結石や悪性腫瘍が見つかる場合があり、結石が見つかれば腹部レントゲン写真を追加で行う、あるいは悪性腫瘍の疑いがあれば、CT検査を行います。

超音波検査でも何も異常がない場合は、膀胱内視鏡検査を行うことがあります。

膀胱内視鏡検査では、尿道から内視鏡ファイバーを挿入し、膀胱や前立腺を実際に見て、悪性腫瘍がないかなどを評価します。

通常、女性ではほぼ痛みなく検査が可能ですが、男性はペニスがあり尿道が長いため女性より痛みを伴います。

腎生検

尿潜血陽性の原因となる疾患としては、尿路結石、膀胱炎、前立腺肥大症、尿路悪性腫瘍(膀胱がん、腎がん、腎盂尿管がん、前立腺がん)、糸球体腎炎などの内科的疾患(多くは尿タンパクも同時に陽性)などが挙げられます。

腎生検を実施する目的は、蛋白尿、血尿、腎機能低下の原因となっている腎臓病を診断して、専門的治療に役立てることです。

腎生検は、主に、血尿が持続して進行する慢性糸球体腎炎が疑われるとき、急激な腎機能低下がみられ、蛋白尿や血尿がみられるとき(急速進行性糸球体腎炎)などに推奨されます。

腎生検は、局所麻酔をして超音波ガイド下で針生検を行います。

実際に、採取できる組織は、鉛筆の芯くらいの太さで、長さ1~2cmくらいです。

患者さんをうつぶせにして、背中から超音波をあてて、腎臓に針を刺す位置を決定します。

皮膚の表面から痛み止めの注射(局所麻酔)を腎臓の表面まで十分に行い、麻酔した部位に生検針を刺し、腎臓の表面まで針を進めます。

その後、息を吸ったところで呼吸を止めてもらい、その間に腎組織を採取して、針を抜く操作を1~5回繰り返して行います。

終了すると5~10分間の圧迫止血をした後に仰向けになり6~12時間ベッド上で安静にする必要があります。

尿潜血陽性のときに考えられる疾患

尿潜血陽性のときに考えられる代表的な疾患を紹介します。

尿路結石症

尿潜血陽性となる尿路の疾患の一つとして、尿路結石症が挙げられます。

尿路結石症とは、腎臓で作られた尿の通り道である腎盂腎杯、尿管、膀胱、尿道などの部分に結石ができることです。

尿路結石の発症には食生活が大きく関係していると分かってきており、特に日本人の場合は、シュウ酸カルシウム結石症と呼ばれるものが圧倒的に多いです。

日々の生活における食事内容などでこのシュウ酸を摂りすぎることによって結石の主な原因に繋がるといわれています。

仮に結石病変が尿管にひっかかると、尿管の動きとともに激しい側腹部の痛みが生じます。

さらに、尿が下流の膀胱へと流れないために上流で尿が貯留して淀んでしまうため、腎盂腎炎などの尿路感染症を引き起こして腎機能障害などが生じることになります。

腎臓がん

尿潜血陽性となる腎臓の疾患の一つとして、腎臓がんが挙げられます。

腎臓がんは女性よりも男性の発症率が高く、近年は罹患する患者数が増加傾向であると言われています。

健常人において腎臓を構成している細胞は、尿が通る管である尿管組織に存在する尿細管上皮細胞や、尿を産生する部位である糸球体とよばれる小器官を支える間質細胞、そして腎臓内に無数に走行している血管筋細胞など多種多様です。

腎臓がんは、そのほとんどが疫学的には尿細管上皮細胞から由来する腎細胞癌であるといわれています。

これらの腎臓がんを発症させる原因としては、喫煙歴、高血圧既往、肥満体形、そして末期的な腎不全や血液透析状態などの関与が示唆されており、こうした背景によって腎臓の細胞の遺伝子異常が生じて悪性腫瘍が発症すると考えられています。

前立腺がん

尿潜血陽性となる前立腺の疾患の一つとして、前立腺がんが挙げられます。

前立腺がんは、前立腺細胞が無秩序に増殖を繰り返す疾患であると認識されており、加齢と共に罹患率が増加する病気です。

前立腺がんは、前立腺の細胞が正常な増殖機能を失って緩徐に自己増殖することが知られており、早期に発見すれば根治的に治癒することが可能な疾患とされています。

前立腺がんの多くの症例でがんの進行度は比較的ゆっくり進展すると言われていますが、時に前立腺の近傍リンパ節や骨、肺、肝臓などに転移することが認められます。

早期の段階における前立腺がんは、ほとんど自覚症状がなく経過しますが、症例によっては尿が出にくい排尿困難、あるいは排尿の回数が多い頻尿症状が出現することもあり、がんが進行すると、血尿、腰痛など骨転移に伴う疼痛症状が合併して認められることもあります。

前立腺がんによる有意症状が自覚されずに経過することも多いため、周囲リンパ節、骨、肺、肝臓など他臓器に転移した進行がんの状態で初めて発見されることも少なくありません。

前立腺がんにおける明確な発症メカニズムは解明されていないのが現状ですが、前立腺がんの発症リスク要因は、アンドロゲンと呼ばれる男性ホルモン、あるいは遺伝性や加齢などの要素、そして肥満体形や喫煙歴なども関連していると指摘されています。

また、日常生活において動物性脂肪やカルシウムの過剰摂取など日々の食生活習慣の乱れが前立腺がんの発症にリスク因子として関与しているという見解もあります。

前立腺がんを早期に診断するために、血液検査でPSA値(基準値は0~4ng/mL)を調べる方法は簡便で有用な検査といえます。PSA値が4~10ng/mLであれば、約3割程度の割合で前立腺がんが発見されると言われています。

まとめ

これまで、尿潜血のプラス・マイナスの違いと原因になる疾患などを中心に解説してきました。

血尿は肉眼で分かる「肉眼的血尿」と、顕微鏡でしか確認できない「顕微鏡的血尿」がありますが、主に自覚症状などから尿路の病気が疑われる場合に、尿検査で尿潜血を調べます。

尿潜血は、健康診断や人間ドックの検査項目に含まれている場合もあり、顕微鏡的血尿の場合も反応しますので、明らかな血尿と自覚していない場合でも、尿潜血で陽性となることが見受けられます。

尿潜血は尿中の赤血球の有無が判明するだけであり、その原因を特定できるという性質のものではなく、尿潜血陽性であれば様々な疾患が隠れている可能性がありますので、心配であれば腎臓内科や泌尿器科など専門医療機関を受診しましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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