痛風を治すには? 痛風発作と高尿酸血症に対する治療薬
そのため、1回の投与量も規定量のみとし、増量も行われません。発作が実際に起こって強い痛みがあるときも、既に白血球が炎症を起こしてしまっていますから、白血球の作用を抑えてもあまり効果はありません。あくまで発作が起こりそう、あるいは起こり始めているときのみの使用となります。
尿酸値が高くて痛風が起こるかもしれないと指摘された方も、既に痛風発作が起こったあとの方も、これ以上進行しないためにさまざまな治療が必要になります。ここでは痛風の治療について解説します。
痛風の治療の流れ
痛風発作が起こっているときには、痛み止めを使用するのが基本となります。この時期は、とにかく痛みに合わせて使用する薬を調節するのがポイントです。
一方で、痛風発作が起こっていないときには、尿酸値を下げる治療が大事です。この治療には、内服によって尿酸値を下げる一方で、食事内容の調節など、生活習慣の是正が必要になってきます。
というのは、高尿酸血症の状態が続くと、痛風発作が繰り返されるだけではなく、尿酸が変性してできる痛風結節というものが体の各部分にできます。痛みが起こる関節はもちろん、皮下にもさまざまな痛風結節ができてきます。さらには腎臓にも結節ができる事により、痛風腎という腎臓病を発症し、腎機能が低下します。
このように全身に影響が出る前に、尿酸値を下げる治療を開始しなければならないのです。では、痛風発作時期、ならびに発作が起こっていない時期にそれぞれ行われる治療についてみていきましょう。
痛風発作の治療薬
痛風は、もともと血液中の尿酸値が高い状態に、何らかの誘因が加わることで激烈な痛みの発作をきたす病気です。そのため、治療としては発作に対する治療はもちろん、再発を予防する治療、あるいはまだ発作が起こる前に予防をするための治療が必要になってきます。
痛風発作は、関節内に尿酸がたまって結晶化することで関節包を傷つけ、痛みを発症します。この際に、傷ついた関節包に対して修復をしようと白血球が集簇し、炎症が起こります。これによって痛みはもちろん、関節の発赤や腫脹が起こってきます。
炎症はだいたい2日から3日程度続き、次第に落ち着いてきます。それに伴って、痛みの程度もマシになってくるのです。
このような経過から、痛風発作のときの治療薬も時期によって異なってきます。
コルヒチン
まず、症状が出はじめた頃や、症状が出そうだと感じている時期(前兆期)には、コルヒチンという薬剤を使用します。
コルヒチンという薬剤は、白血球の働きを抑える作用です。それによって、痛風発作の発症を抑えたり、実際におこってきている炎症を最小限にとどめたりします。しかし白血球の機能を抑えることは体にとって負担になりますから、副作用として消化器症状(腹痛、下痢、嘔吐など)があり、漫然とした使用はできません。
NSAIDs
発作が実際に起こっているときは、NSAIDsという種類の痛み止めを使用します。NSAIDsというのは非ステロイド性抗炎症薬という薬剤の略称で、その名の通り、ステロイド薬ではなく、炎症を抑える薬です。痛風発作は炎症によって強い痛みを感じていますから、炎症を抑えて痛みを抑えます。とくに痛みが非常に強い時期はしっかりと痛みを取るために、通常より高用量で使用することもあります。
痛風発作の痛みは2~3日で治まりますが、最大の痛みは1日程度で治まります。その後は痛みも小康状態となりますので、NSAIDsの使用量も通常量程度にまで減らします。だんだんと痛みがなくなるにつれて使用量を減らし、中止します。
副腎皮質ステロイド薬
副作用などの理由でNSAIDsが使用できない場合は、代わりに副腎皮質ステロイド薬を投与することもあります。こちらも、発作の特に強いときに限定してやや多めに使用します。
なお、発作中は後述の尿酸値を下げる薬は使用してはなりません。発作中に使用すると、発作の期間を長期化させたり、収まってもすぐに再発したりするなど、発作を悪化させる可能性があるからです。理由ははっきりしていませんが、尿酸値が急激に低下することも尿酸血症ができやすい条件であるためと考えられています。
高尿酸血症の治療薬
痛風発作が落ち着いている時期には、尿酸値を下げることで発作の再発を防ぎます。尿酸値を下げる薬としては、尿酸の産生を抑制する薬や尿酸の排泄を促進する薬があります。
尿酸の産生を抑制する薬
尿酸を産生するのを抑制する薬はアロプリノールという薬です。この薬は尿素が代謝されて尿酸が生成されるのをブロックすることで尿酸値を下げます。副作用は皮膚過敏症や消化器症状などがありますが、軽微なことが多く使用がしやすい薬です。
尿酸の排泄を促進する薬
一方で、尿酸の排泄を促進する薬としてはプロベネシドやベンズブロマロンなどがあります。これらの薬は腎臓で尿酸が尿に排出されるのを促進することで血液中の尿酸値を下げます。
尿酸排泄を促進させる薬には注意点があります。血液中の尿酸を尿に排出させる薬ですから、血液中の尿酸値は下がりますが、尿中の尿酸値は上昇してしまいます。尿中の尿酸値があまりに上昇すると尿中で尿酸が結晶となってしまい、尿管結石を作ってしまう可能性があるのです。
そのため、これらの薬剤を使用するときは尿量が十分確保されるように水分をしっかり取る必要がありますし、尿が酸性になるとより結石ができやすくなりますので尿をアルカリ化する薬剤を併用して内服するなどの工夫が必要になります。
また、尿酸を尿に出すためには腎臓が働くのが前提ですので、腎機能が低下している場合には使用ができません。
生活習慣の改善が大切
痛風発作が起こっているときはもちろん、痛風発作が起こっていないときにも生活習慣には気をつけなければなりません。いくら尿酸を下げる薬を使用しているからと言っても、尿酸が大量に作られるような状態になってしまっては薬の効果が不十分となってしまいます。
具体的には、尿酸の原料であるプリン体が含まれる食物の摂取量を控えるほか、アルコールの摂取量も適量にとどめる必要があります。また、尿酸は酸性の環境だと析出して結晶になりやすいため、なるべく体をアルカリ性に傾けるような野菜、海藻等の摂取量を増やすのが良いでしょう。
尿酸が排出されることによって尿管結石ができてしまう可能性がありますので、水分をしっかりすることも大事です。
また、肥満の是正も必要です。食事量が多く、脂肪分を多く合成している場合、体の中の脂肪代謝が亢進します。そうすると、脂肪代謝に必要な酵素も活発に働くようになります。この酵素は脂肪代謝だけに関わっているのではなく、尿酸の生成にも関わっていますから、脂肪代謝の亢進は尿酸生成を亢進させる効果があるのです。
痛風の患者さんには肥満の傾向がみられ、元々の体型自体が尿酸値を上昇させる可能性があるといえます。痛風になった場合や尿酸値が高いと言われた場合には、他の合併症がなくても減量に取り組む必要があるでしょう。
もちろん、発作の最中には運動などは痛くてできないですが、発作が治まっている間にしっかり運動する習慣をつけて体質から改善していくことが再度の発作予防になります。他の病気を予防するという意味でも、しっかりと生活習慣を是正することが大切です。