氷水はNG?火傷の深度別の対処法と間違ったケア方法

火を使って料理をする、あるいは冬場など暖房器具をつけるなどやけどを負うきっかけになる熱源は家庭内にもたくさんあります。
ここではやけどをした際の基本的なケア方法や役立つアイテム、避けた方がよい間違ったケア方法について紹介します。
目次
やけどをしたときは冷やすのが基本

やけどの応急手当としては、患部をすぐに冷却することが基本です。
熱湯や油のやけどを負った場合でも、水道水でかまいませんので衣服の上から冷やすことが重要です。体の部位や年齢により多少異なりますが、原則的にやけど部位を15分~30分間冷却すると良いでしょう。
指先や下半身などまずは患部を冷やすことでやけどの進行を止めて、痛み症状も緩和することができます。
やけどの部位を冷却しようと、あわてて衣服を脱がせると熱の作用が持続してより深いやけどになって治癒するのに余計に時間がかかってしまいます。応急処置として創部を冷やしながらできるだけ早く救急医、皮膚科医や形成外科医の診察を受けることが早期にやけどを治して傷跡を最低限にすることにつながります。
人がやけどする温度は45度以上と言われていて、45度の低音なら1時間、70度以上の高温なら1秒で皮膚組織の破壊が始まります。
やけどの重症度は、やけどを負った部分の広さと深さによっておおむね決まりますが、重症の場合でも、処置の基本はまずは冷水で患部を冷やすことです。
水道水を流しっぱなしにして、やけどをした部分をできるだけ長く、最低でも15分間冷やしながら、やけどの状態をチェックし、水ぶくれがあるときは、自分で破ってしまわないように注意を要します。
やけどのセルフケアに役立つアイテム

やけどのセルフケアに役立つアイテムを紹介します。
氷のう
やけどを負った場合は、まず流水で15~30分ほどしっかり冷却することが大切です。患部に直接流水を当てるのではなく、少し上の部分から流して当てるようにします。
患部の痛みが治まるまで氷のうを用いて冷やすと有用です。手足のやけどの場合など洗面器に氷のうを入れて冷やすとよいでしょう。
やけどの部位を効率的に冷やすことでやけどの進行を抑えて、合併する疼痛症状も和らげることが期待できます。
ラップ
現場の状況として、医療機関をすぐに受診できないときはラップをやけどに当ててください。
ラップにワセリンを塗るとさらに痛みが少なくなると言われていますし、水ぶくれが既に破れているやけどや広い範囲のやけどの場合は、浸出液が多くなるので、漏れ出た浸出液を吸い取るため、ラップの上にガーゼやタオルを当ててから包帯を巻きましょう。
やけどの面に直接ガーゼやタオルを当てないように注意して、患部にワセリン以外の軟膏も塗らないようにしましょう。
ワセリン
やけどの部位において、後々の感染症を予防するために抗生物質が含有した軟膏を塗るという治療方法もありますが、軽度の場合はワセリンで保護するのもいいでしょう。
ワセリンにはやけどによってバリア機能を失った真皮を守ってくれる作用があります。やけどの部位を洗ってきれいに拭いたあとは、ラップをやけどの部位よりも少し大きめに切って、白色ワセリンをラップに塗り、塗った面を患部に当てて保護するとよいでしょう。
誤った油薬などを患部につけてしまうとその後の治療に差し障りがでてしまうこともあるので、やけどをした部位には専門医の診察を受けるまで自分の判断だけで軟膏や油などをつけないように注意しましょう。
ヘパリン類似物質
傷あとややけど痕に対して有用なヘパリン類似物質が含まれたケア用品も市販販売されています。
軽いやけどでも、傷痕が気になるときは、ヘパリン類似物質の入った軟膏を外用するのも悪くありません。
ヘパリン類似物質は、皮膚のターンオーバーを促進して、時間をかけて肌をもとの状態へと改善してくれます。
やけどの深度別のポイント

やけどのケアをする際、深度によって注意すべきポイントが変わってきます。深度別のポイントを確認しておきましょう。
I度熱傷の対処
水ぶくれができず、皮膚が赤くなっているだけの状態は、「I度熱傷」という最も軽症のやけどです。
やけどの部位が空気に触れていると患部がヒリヒリして痛みますが、何かで覆うと症状が緩和されます。
一般的な絆創膏は空気を通すので、ぴったり貼り付いて水も空気も通さない市販の保護シートを貼るのがおすすめです。ワセリンを塗ったラップなどを患部に当ててもよいでしょう。
II度熱傷の対処
やけど部位に水ぶくれができたらII度熱傷以上のやけどになります。
温度の高い油や火によるやけどは、深達度が深くなりやすく、やけどが小さく水ぶくれが破れなければ そのまま治るまで保護する方法もありますが、ほとんどの場合には治癒する前に水疱が破れてしまいます。
その場合には、皮膚の細菌感染などを引き起こしやすくなるので、水ぶくれの皮の部分を取り除き、やけどの面を覆って保護する必要があります。
また、やけどの深さをしっかり観察するためには水ぶくれを除去して評価する必要がありますので、基本的には水ぶくれは除去したほうがよく、専門施設を受診して処置を受けましょう。
また、やけどを負って損傷した皮膚の体表面は、微生物の侵入を防ぐバリア機能が働かなくなるので、感染症を引き起こしやすく、いったん細菌感染を合併すると浅いやけどであっても重症化して、治癒までに時間もかかります。
原則として、II度以上のやけどを負った際には、できるだけ早く皮膚科など専門医師による治療を受けるようにしましょう。
III度熱傷の対処
III度のやけどは、皮下組織(皮膚の深いところ)までの深達度であり、損傷した表面は白く乾燥してひどいときは焦げて黒色や褐色になっています。
基本的に水ぶくれはできませんし、痛みを感じる神経も焼け死んでいるので、やけどに伴う痛みも自覚しにくい状態となります。
III度の場合は自然治癒が難しいため、範囲が広いときは入院をして植皮術などの外科的な治療が必要になりますので、皮膚科や形成外科など専門科が常駐する総合病院に受診することが重要です。
氷水はNG? やけどの間違ったケア方法

やけどのケアを間違えると、かえって悪化させてしまうことがあります。次に挙げるケア方法は避けましょう。
衣服を無理に脱がせる
やけどを負った際には、やけどをした人が衣服を着ているかを確認することが大切です。
服の上からやけどをしたときに、服を脱がせるか、脱がせないかが、その後のやけどの治療と治癒回復に一定の影響を与えると考えられています。
服を着たまま熱湯などでやけどをしたときに無理に服を脱がせると皮膚がめくれるので、できるだけ衣服を脱がさずに上から水をかけるべきであるという考え方があります。
衣服の上から熱湯や油がかかってしまってやけどをしたときは、すぐに脱がせたくなると思いますが、皮膚と衣服が強固にくっついている場合があるので、無理に脱がさないほうが良いでしょう。
無理に衣服を脱がせてしまうと、水ぶくれが破けて、皮膚がめくれることで細菌が入る恐れもあります。また、脱がせようとしたときに服が患部と擦れて、患部の状態を悪化させる可能性もあります。
氷や氷水で冷やしすぎる
人がやけどする温度は45度以上です。45度の低温なら1時間、70度以上の高温なら1秒で皮膚組織の破壊が始まると考えられています。
やけどの重症度は、やけどをした部分の広さと深さによって決まりますが、重症の場合でも、基本的には冷たい水で患部を冷やすことが大切です。
やけどをしたら、とにかくすぐに患部を冷やすというのは、以前からよく知られている方法であり、水道水やシャワーなどの流水で冷やす方法が適しています。
冷やす時間の目安は、通常15分~20分以上であり、患部の痛みがなくなるまでしっかりと冷却することが重要です。
患部を冷やす際に、氷や氷水、冷却パックを使って過剰に冷やすと、急激な温度低下で凍傷になるなど、かえって患部の状態を悪化させることがあるので、注意が必要です。
すぐに、水道水やシャワーで冷やすことができず、氷や冷却パックを使う場合には、それらをガーゼに包むなどの工夫が必要です。氷などを直接患部に長時間当てないように気を付けましょう。
水ぶくれを自分でつぶす
水ぶくれを無理に自分でつぶしてしまうと細菌が患部に侵入するため、できる限り水疱をつぶさないように注意しましょう。
水ぶくれの中には、創部や傷を治す成分が含まれているので極力破らずにつぶさないようにすることが推奨されています。患部に薬品類を過剰に塗布しないようにすることも大切です。
重いやけどで病院を受診しない
患部をしっかり冷やしたら、水ぶくれを自分でつぶさずに、清潔なガーゼなどでやけどの部分を覆って、水ぶくれが破れないように気をつけて、できるだけ早く皮膚科や形成外科など専門医療機関を受診しましょう。
一般的に、やけどが広い範囲にわたっている場合や、顔面や陰部のやけど、または皮膚が焦げている、患部が白くなって痛みを感じないような深いやけどの場合には、すぐに119番通報して救急医療機関を受診してください。
特に、小児や乳児、高齢者がやけどを負った際には、比較的小さなやけどでも命に関わることがあるので、格段の注意が必要です。
まとめ
これまで、やけどの対処の基本とセルフケアに役立つアイテムなどを中心に解説してきました。
日常生活には、沸騰したお湯や熱くなった暖房器具など、やけどの危険性が多く潜んでいて、万が一やけどを負ってしまったら、適切に処置することが重要です。
やけどの範囲が大きく片方の手足以上、あるいは腹部や背中全体などを受傷した場合や、患部の領域が小さくても水ぶくれができたときなどは早急に専門医療機関を受診しましょう。
やけどは、受傷面積と深さで治療方法が異なり、受傷面積が広ければ広いほど全身状態に影響を与えます。
I度熱傷でも、全身の表面積の30%以上損傷を受ければ重症になりますし、深く損傷している重症の場合、神経が壊死して痛みを感じないこともあり、患部が白色に変色している場合はIII度熱傷という重症なやけどに分類されますので、速やかに病院を受診しましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。