生あくびとは?普通のあくびとの違いと関連する疾患

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眠気を感じないのにあくびが出ることはないですか? そのようなあくびは「生あくび」と呼ばれています。身体の健康に関する警告サインかもしれません。ここでは生あくびについて詳しく見ていきましょう。

生あくびと普通のあくびの違いは?

ベッドの中であくびをする女性

一般的にあくびは眠いときや退屈なときに出る生理現象のひとつです。あくびは副交感神経が優位なときに出やすいとされています。疲れているときや退屈を感じているとき、眠いときは副交感神経優位なため、あくびが出るのです。

反対に何かに集中していたり、活動的なときには交感神経優位になっているため、あくびは出にくくなります。

しかし、副交感神経優位なときに出やすいあくびに対して、交感神経優位なときに出やすいあくびがあります。これが生あくびです。緊張やストレスが多いときなどの防御反応として出ることもありますが、脳梗塞や貧血など治療が必要な病気が潜んでいるときにも出るため、注意が必要です。

生あくびの原因は?代表的な説を紹介

脳のイメージ

最も多いあくびの原因は睡眠不足ですが、まれに病気や体の異常によって生あくびが症状として出ることがあります。生あくびだけが起こることはあまりありませんが、生あくびが発生する原因に関しては3つの説が提唱されています。

脳内の酸素不足

1つ目は、何らかの原因で脳内が酸素不足に陥った場合に、その酸素不足を改善させる目的であくびが出てくるという説です。

これはあくびをすることで一度に大量の空気を吸い込み、血中の二酸化炭素の濃度を下げて、酸素濃度を高める作用があると考えられています。脳内の酸素不足が長期に継続すると、心臓や脳といった重要な臓器に十分な酸素が供給されず、酸素欠乏症を起こすことがあります。

酸素欠乏症になると、脈拍数増加や呼吸数増加、集中力低下、筋力低下、頭痛、耳鳴り、悪心、吐き気など、さまざまな症状が現れます。

脳の温度調節

2つ目は、脳が高温になりすぎると機能障害が起こることがあり、外気を取り込んで脳の温度を下げて、脳を保護しているという説です。

脳のリフレッシュ

3つ目は、あくびをすることで脳の覚醒を促しているという説です。あくびをするときは大きく口を開けることが多いと思いますが、この動作によって頸動脈や頸静脈が圧迫されて脳がリフレッシュします。緊張しているときや退屈なときなどは、あくびをすることで脳がリフレッシュを求めるのです。

生あくびと関連する疾患

あくびをする女性

生あくびが頻繁に出るようになったときに、疑われる病気には次のようなものがあります。

貧血

貧血は、鉄分不足やビタミンB12や葉酸などの不足により、血液中のヘモグロビンが少なくなった状態のことです。脳の酸素量が減るため、あくびが出やすくなります。そのほかにも立ちくらみやめまい、息切れ、ふらつき、頭痛、胸の痛みなどの症状が起こります。

自律神経失調症

自律神経を構成する交感神経と副交感神経の2つの神経のバランスが保たれている状態が正常となります。しかし、ストレスが心身に影響を及ぼすと、この2つの神経のバランスが崩れ、不調となります。これが、自律神経失調症となります。

自律神経失調症の症状は、大きく分けて身体的症状と精神的症状の2つがあります。

身体的症状

自律神経失調症の主な身体的症状の一つが手足のしびれとなります。ストレスの蓄積によって筋肉の硬直や血行不良を引き起こし、結果としてしびれ症状を出現させます。しびれ以外にもめまい・耳鳴り、立ちくらみ、息切れ、慢性的なだるさ、便秘・下痢、手足の震え・しびれ、睡眠の質の低下、肩こり・頭痛などの症状が一時的ではなく、慢性的に発生します。

その身体的症状の一つに生あくびがみられることがあります。

精神的症状

自律神経失調症の精神症状は、パニック障害・不安障害・不安神経症などと症状が似ています。イライラ、不安感、落ち着きがない、情緒不安定、やる気が起きない、緊張状態などの症状が出現します。また、精神的症状が悪化すると、うつ病の併発リスクが高まります。

睡眠時無呼吸症候群

ベッドで頭を抱える女性

生あくびが出る原因として睡眠の質から考えられるのが睡眠時無呼吸症候群です。睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)とは、主に睡眠中に空気の通り道である上気道が狭くなることによって無呼吸状態(10秒以上呼吸が止まること)と大きないびきを繰り返す病気のことです。

成人男性の3〜7%、成人女性の2〜5%程度に見られる比較的頻度の高い病気となります。

無呼吸は脳の酸素不足を引き起こします。睡眠時無呼吸症候群は寝ている間だけではなく、日中の生活においてもさまざまな症状が出現する危険性があります。

脳疾患

脳疾患として生あくびに関係するものに脳梗塞や脳腫瘍があります。

脳梗塞は、何らかの原因で脳動脈が詰まってしまい、その結果、脳細胞が壊死してしまう病気です。脳腫瘍は、頭蓋骨の中の脳にできる腫瘍の総称で、各部位からさまざまな種類の腫瘍が発生します。頭蓋骨の中は閉じられた空間のため、腫瘍によって脳が圧迫されて機能障害を起こします。

また脳腫瘍によって血管が詰まりやすくなり、脳梗塞を発症するリスクを上げる可能性もあります。脳腫瘍は悪性のものだと、5年生存率が50%を切る恐ろしい病気です。

脳梗塞・脳腫瘍のいずれにおいても、体の左右どちらか一方に力が入らなくなったり、呂律が回らなかったりなどの身体障害、体の左右どちらか片側の手がしびれるなどの感覚障害、言葉がうまく出なくなったり物忘れが増えたりなどの高次脳機能障害、そしてめまいやふらつきという症状が見られます。

いかがでしたでしょうか。このように生あくびは病気を警告するひとつの指標となります。頻繁な生あくびは脳が発信するSOSだと考えられます。いつもと様子がおかしいあくびが頻繁に出るようであれば、激しい運動は厳禁でなるべく暗い部屋で頭を冷やして安静にしましょう。

そして、脳内に酸素をじゅうぶんにいきわたらせるため、深呼吸がおすすめです。それでも生あくびが頻繁に起こるのが改善しないようであれば一度医療機関を受診してくわしく検査をしてみることをオススメします。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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