大人のADHD(注意欠陥多動性障害)は多動症が減り、不注意が目立つ?

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ADHD(注意欠陥多動性障害)は、子どもだけにみられる障害ではありません。子どもは20人に1人の割合、成人は40人に1人の割合で生じると言われています。

仕事で単純なミスを繰り返したり、いつも忘れ物をしてしまったりといった状況が多くなることで、ADHDではないかと医療機関を受診するケースもあります。ここでは大人のADHDについて詳しく見ていきましょう。

ADHDが疑われる職場での困りごと 

大人のADHDが疑われる職場での困りごととして、以下のような項目があります。

  • 騒音や雑音があると、すぐに注意が散漫になる
  • 周りが気になって目の前の仕事に集中できない
  • 仕事や家事などで優先順位をつけることや、その通りに実行することが難しい
  • 些細なことで自分を見失うことや、突発的に怒り出すことが多い
  • 課題を遂行できず、途中で投げ出してしまう
  • 衝動買いをしてしまう
  • 約束の時間に遅れる、約束を忘れる、締め切りや期限に間に合わない
  • 鍵や財布などをしばしば紛失する
  • 仕事や生活で忘れ物が多い
  • 注意力や集中力に欠け、他人と話していてもストーリーを追えない、内容を忘れてしまう
  • 単調な仕事や読書、計算を持続することが苦痛
  • 他人の話をさえぎり、一方的にしゃべり出してしまう
  • 落ち着いてじっと座っていることが苦手
  • 衝動的に不適切な発言や行動をする、激昂しやすい

これらの項目で当てはまるものが多い場合はADHDの可能性があります。

ADHDの3つのタイプ

ADHDには次に挙げる3つのタイプがあります。

不注意優勢型

不注意優勢型は、周りの状況によって気が散ってしまう、集中し続ける忍耐力がない、単純なミスや忘れ物などが多いなど不注意による特性が目立つタイプです。

  • 上司の指示を聞いていたつもりが、違うことに気を取られて聞き逃してしまう
  • 電話で聞いた約束の日時などをすぐに忘れてしまう
  • 整理整頓ができず、大事な書類をなくしてしまう
  • ケアレスミスが多く、書類などの記入不備が多い
  • 職場で周囲の話し声やOA機器の音が気になって集中できず、作業が遅れてしまう

上記のような簡単に見えることでもミスしてしまったり、大事な約束を忘れてしまったりすることから、周囲の人からはやる気がない、誠実ではない、仕事ができないといったイメージがついてしまいます。

本人としては、一生懸命やっているのですが、なかなかうまくいかず、もどかしい思いをする場合もあります。

多動・衝動性優勢型

多動・衝動性優勢型は、じっと座っておくことができない、感情をコントロールすることが苦手、呼ばれてもいないのに答えてしまうなど、多動性および衝動性の特徴が色濃く出るタイプです。

  • どの作業から始めるといいかなど、物事の優先順位をつけるのが苦手
  • 長時間の会議などでじっと座っているのが苦痛でイライラしてしまう
  • 相手の発言を最後まで聞かずに自分の意見を言ってしまう
  • 怒りの感情などを抑えられず、相手が上司や取引先の人であっても衝動的に怒ってしまう

このように話を聞かない、すぐに怒るといったイメージを持たれ、対人関係でトラブルを起こしてしまうこともあります。

混合型

不注意優勢型と多動性・衝動性優勢型の2つのタイプの特徴がどちらも出現するタイプを指します。

不注意優勢型と多動性・衝動性優勢型の現れ方の度合いについては、人によって差があり、すべての人が同じような特徴を持つタイプではありません。自分の興味があることややりたいことについては、周りの物音などに影響されない集中力を発揮するようなこともあります。

大人になると多動症が減り、不注意が目立ちやすい?

大人のADHDは不注意優勢型が多いです。そもそもADHDは発達障害のため、ADHDの傾向は子どもの頃から見られます。

しかし、幼少時から不注意優勢型のADHDである場合は、多動・衝動型のADHDより学校生活で問題視されにくく、学業や学校生活に支障がなければ見過ごされてしまうことが多いのが原因です。

社会に出ると、自身でスケジュール管理やタスクを把握し、ミスなく確実に遂行する能力が求められます。そこでADHDの不注意症状が顕在化するのです。

大人のADHDをコントロールするためには?

白い錠剤

ADHDの治療としては、薬で症状をやわらげることや、行動の改善を図り、対処法を身につけることなどが行われます。

大人のADHDの治療薬として認可されているものには、メチルフェニデート徐放錠、アトモキセチン、グアンファシンがあります。これらの薬の副作用として頭痛、食欲不振、吐き気などがみられることがあり、様子を見て容量を徐々に増やしていきます。

しかし、薬はADHDそのものを根本的に治療するものではありません。一時的に自己コントロールの困難を改善しますが、薬だけで生活全般が改善するわけではないため、行動の改善を図ることも大切です。

まずは、教育を通してADHDの特性をよく理解することが重要です。自分を理解することで、自己肯定感を高めることにもつながります。そして、実生活における具体的な場面の対処方法を身につけ、習慣化していくことが必要になります。

その方法の一つとしてグループ・プログラムがあります。知識やスキルの習得だけでなく、同じ悩みをかかえる仲間と出会い、悩みを共有し共感することで、自己理解が深まることが期待できます。

いかがでしたでしょうか。実社会に出て仕事をすることで、ADHDの可能性に気づくことがあります。自分に合った環境で働けるように工夫したり、必要に応じて医療機関を受診したりしてみましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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