外反母趾とは?よくある原因と基本的な治療法
外反母趾は女性の5人に1人が悩んでいると言われるほど身近な足の病気です。どのような原因で発症するのでしょうか。また、どのような対策をするのがいいのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
外反母趾とは
外反母趾とは、足の親指の付け根が飛び出して、親指が小指側に向かってくの字に曲がってしまう状態のことを言います。
医学的に詳しく言うと、足の親指の基節骨と第一中足骨の間にあるMTP関節という関節で、通常であればまっすぐあるはずの基節骨と中足骨が斜めになり、その部分が突出します。基節骨の軸と中足骨の軸が作る角度のことを、外反母趾角といい、この角度が20度以上になると外反母趾と言われます。
外反母趾角は、重症度分類にも使われます。外反母趾角が30度未満を軽症、30度から40度を中等症、40度以上を重症と言います。
外反母趾は変形するだけではなく、痛みを生じることから非常に辛い病気となっています。痛みが起こってくるのは、靴によって圧迫されていることに加え、圧迫されることによって滑液包炎や神経の絞扼(こうやく)が生じることによって痛みが生じてきます。
滑液包炎は、MTP関節の内側に生じることがほとんどで、その場所が肥厚してきます。痛みや赤みを帯びてくることに加え、腫れることもあります。医学的にはパニオンと言います。パニオンが生じてくるのはほとんどが外反母趾で、他には強靱母趾、ガングリオンなどで生じてきます。
また痛いのは、母趾だけではありません。曲がってきた母趾によって押されることによって、第2第3中足骨にも荷重がかかってきます。それによって、足の裏に流通性の胼胝(べんち)、すなわちタコができることがあります。こちらも痛みを生じてきますので、足のいろいろな場所が痛くなってくるということが問題になります。
外反母趾のチェック方法
自分の足の指が変形していて、もしかして外反母趾かもしれないと思った場合には、 簡単にチェックすることができます。
足の内側に定規やペンなどをまっすぐしたものを当てます。そして、足の親指の爪部分と定規やペンなどの間に手の人差し指を入れます。通常であれば、足の指はまっすぐですから、隙間がないので指は入りません。そこに指が入ってくるようであれば、 外反母趾の可能性があります。
外反母趾かもしれないと思った場合には、整形外科を受診するのがいいでしょう。病院でレントゲンをとることによって、確定診断になります。外反母趾がある状態で痛みがないからといって放置してしまうと、関節の脱臼や、体全体のバランスが崩れることで腰や膝の痛みや頭痛、肩こりなどの症状が起こってくることもあります。
外反母趾のよくある原因
外反母趾がどのような原因で起こってくるのか見てみましょう。
ハイヒールの影響
最も大きな要因と言われているのが、靴です。ハイヒールを履く機会が増えたことによって、外反母趾の割合が急激に増えたとされています。
ハイヒールの問題は先端が尖っていること、そしてかかとが上がっていること、その両方が非常に悪い条件となっているのです。
先端が尖っていると、それだけ親指が小指側に向くように抑えられることになります。圧迫によって変形が進んでくるのです。さらに、踵が高くなっていることによって、重力の影響で体重がつま先にかかるようになり、変形がより起こりやすくなってしまいます。
また、靱帯の働きから考えても、かかとが上がっていることは悪条件と言えます。親指の付け根にはたくさんの靭帯がありますが、特に内側の内側側副靱帯は、親指が人差し指の方向に曲がろうとする時に突っ張って、なるべく曲がらないようにする働きがあります。しかしかかとを高くして、親指が背屈すると、内側副靭帯が緩んでしまうため、親指が内側に向きやすくなるのです。
ハイヒールを履き続け、繰り返し負担がかかることによって、だんだんと関節自体が変形を起こし、元に戻らなくなってしまうのです。
関節が柔らかい
生まれながらにして足の骨格の構造が強い方と弱い方がいます。骨格の構造が強い弱いというのは、靱帯の力によって決まってきます。もし構造が弱いと、体重に関係なく、立つだけで足がつぶれて、本来の形を保てなくなってしまいます。
元々の関節の柔らかさに加えて、足の形が外反母趾の形成に大きく関わってきます。例えば、骨格構造がどんなに弱かったとしても、形が良ければ外反母趾にはなってきません。しかし、骨格構造が弱くて足の形が悪い人は、だんだんと変形が進み、外反母趾となってしまいます。もし関節が硬くて、足の形が悪い状態であれば、強靱母趾になる可能性があります。
足のアーチの崩れ
足にはアーチ構造があります。土踏まずの部分を作って、縦にも横にもアーチを作ることによって、踏み出す力を強く、また踏み込んだ時に力が分散されて吸収されるようになっています。このアーチ構造は、足の裏の足底筋膜という強靭な繊維の束によって作られています。このうち、縦のアーチが弱いタイプを扁平足、横のアーチが弱いタイプを開帳足と言います。
このアーチの構造が正常であれば、足の内側は地面に接することがありません。そうすると、親指に力がかかることもあまりなくなってきます。しかし扁平足や開張足など、アーチの構造に異常があると、土踏まずの部分にも力がかかり、その力が親指にもかかってきます。結果として、外反母趾になりやすくなってしまうのです。
足のアーチの構造だけではなく、指の並びも外反母趾に関わってると言われているため、元々の足の形が外反母趾に与える影響は非常に大きいと言えます。
外反母趾の基本的な治療法
外反母趾はどのように治療すれば良いのでしょうか。
適切な靴選び
軽症であれば、足に負担をかけないことが一番の治療になります。具体的には、靴による圧迫をなるべく避けることが良いでしょう。もちろんハイヒールなどは避けた方がいいです。
最近では、足の横幅が広い人に対応した広い横幅の靴も多く発売されるようになっています。外反母趾で親指の付け根が当たって痛い場合にはそうした靴を選ぶことで痛みを抑えることもできますし、外反母趾の進行をなるべく抑えることができるでしょう。
装具療法
外反母趾の装具療法で一番よく使われるのがインソール(靴の中敷き)です。先に説明した通り、扁平足や開張足などの足の構造異常が負担となって、外反母趾がひどくなることがあります。それを避けるために、インソールを入れて調節することで、歩行時の足のアーチの崩れを修正し、拇趾の付け根に強いストレスがかからないようにします。
他の葬具としては、足の親指と人差し指を引き離すように固定する装具があります。変形を矯正したり、痛みを軽減させる効果が期待できます。
手術が必要なことも
外反母趾が酷くなった場合には、手術が必要となる場合もあります。
手術では中足骨を切ってまっすぐな位置に矯正しますが、変形の程度によって、 骨を切る場所が変わってきます。
いずれにしても、骨がつくまでに4~6週間、完治するまでには3か月程度かかります。骨がつくまでの間は、手術をした場所に力がかからないように、松葉杖を使ったり、かかとで歩いたりします。
こうした手術が必要になる前に、外反母趾にならないように予防すること、あるいは重症化しないようにすることが大切です。