爪剥がれそう!女性に多い爪甲剥離症の原因と治療
何もしていないのに、爪が剥がれそうになっている人はいないでしょうか。それは爪甲剥離症かもしれません。爪甲剥離症の原因や治療について見てみましょう。
爪剥がれそうになる爪甲剥離症とは
爪甲剥離症は、爪が剥がれそうになる状態を指します。もともと爪とその下の皮膚とはくっついていますが、それが先端から剥がれて浮き始めてしまいます。
爪の下の皮膚のことを医学的に爪床と言います。爪自体のことを爪甲と言います。つまり、爪床から爪甲が剥がれてしまうことを爪甲剥離症というのです。
爪甲が爪床にくっついている状態では、爪甲は透明に見えて、下の爪床の部分がすけて見えます。しかし、爪甲が爪床から離れた部分では、表面から見ると白色や黄色に見えることが一般的です。時折爪床と爪甲の間にゴミやホコリが入いることもあります。
爪甲剥離症は1本の指の爪だけのこともあれば、複数の爪、さらには手だけではなく足の爪に起こってくる場合もあります。全身様々な場所の爪に起こってくる場合には全身疾患の症状の一つとして起こっている可能性があり、検査が必要です。
爪甲剥離症の原因
爪甲剥離症は、どのような原因で起こってくるのでしょうか。
マニキュアや洗剤の刺激
爪に対する何らかの刺激が原因になることがあります。例えばマニキュアや除光液、洗剤、 有機溶剤、ガソリンなどに触れることによって接触性皮膚炎という皮膚の病気が起こり、爪が弱くなって爪がはがれてくることがあります。他には、爪と皮膚の間にトゲなど細いものが刺さることによっても起こってきます。
これらの刺激は、爪の表面に与えられても、爪がはがれてくるようなことはあまりありません。多いのは、爪床と爪甲の間に刺激物が流れ込み、爪床の細胞がダメージを受けることによって接着力が低下し、爪甲剥離が起こってきます。
甲状腺機能亢進症
爪甲剥離症を引き起こす全身疾患の中で、最も多いのは甲状腺機能亢進症です。甲状腺機能亢進症というのは、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが異常に多くなってしまう病気です。
甲状腺は喉仏の下にある、ホルモンを分泌する組織です。ここから分泌される甲状腺ホルモンは、体全体の機能を亢進させる効果があります。心拍数は増加し、血圧は上昇します。呼吸回数は増加しますし、体の様々なものの分解が亢進しますから、食べても食べても痩せてしまうといった症状が出てきます。
このような症状のひとつとして、爪にも症状が出てきます。爪がだんだんと平たくなったり、 反り返ったりしてくるのです。この爪の形の変化に伴って、爪甲剥離が起こってきます。このような症状をプランマーズ・ネイルと呼ぶ事があります。始めは1本の爪から症状が見られますが、徐々に複数の爪、そして足の爪にも見られるようになってきます。
全身疾患によっておこってくる爪甲剥離症は、他には貧血や、甲状腺機能低下、 糖尿病、肺がんをはじめとした肺の病気などでも起こってきます。
感染症
皮膚感染症が爪の周囲におこることによって、爪甲と爪床の接着力が弱くなり、爪甲剥離症が起こる場合があります。皮膚の感染症には様々なものがありますが、特に爪甲剥離症を引き起こしやすいのは、カンジダです。
カンジダによる爪甲剥離症の特徴としては、爪床の皮膚がガサガサした感じになります。その部分の皮膚を採取して顕微鏡で確認すれば、すぐにカンジダと確定ができます。
他には、爪に感染する水虫である爪白癬なども爪甲剥離症の原因として挙げられます。
皮膚疾患
様々な皮膚疾患の一部として、爪の症状が出てくることがあります。
特に爪甲剥離症を引き起こすような疾患としては、全身性強皮症、乾癬、掌蹠多汗症などがあげられます。
全身性強皮症というのは、内臓や皮膚に繊維化が起こって、硬くなってくる病気です。特に重要な臓器の合併症としては、肺の病変があります。肺に線維化が起こってきて、咳や呼吸困難が生じ、酸素吸入を必要とすることもあります。他には、腎機能の低下や、逆流性食道炎などが起こってきます。
全身性強皮症のときの皮膚の変化としては、皮膚の硬化があります。手や指が腫れ上がることから始まり、そこから中心部分へと皮膚が硬くなっていきます。皮膚が硬くなる変化の一つとして、爪床が硬くなり、爪甲と接着できなくなる結果、爪甲剥離が起こってきます。
乾癬は原因がはっきりせず、皮膚の一部が非常に早く増殖するために生じてくる病気です。早いスピードで細胞が分裂し、どんどんと皮膚が脱落していくため、白色の鱗屑と呼ばれるウロコ状のクズを伴う病気です。全身の様々な場所に発生します。この病気が、爪床の部分にできると、爪甲剥離症となります。
掌蹠多汗症は、手のひらや足の裏に多く汗をかく病気です。汗をかくと、それだけ皮膚がふやけやすくなります。皮膚がふやけて弱くなり、それに伴って爪甲剥離が起こってくる場合があります。
他にも様々な全身疾患で爪甲剥離症は起こってくることがあります。
光線過敏症
光線過敏症は、日光に当たることによって皮膚に何らかの変化が起こってくることを言います。皮膚そのものが弱くて変化することもありますし、何か物質を摂取したり皮膚に塗ったりした後に日光に当たり、過敏に反応してくることもあります。
日光は夏に強くなって冬に弱くなるものですから、夏に症状が悪化し、 冬に症状が軽快することが多いです。
多くの場合、爪だけではなく、皮膚全体に何らかの異常が起こっていて、光が当たる皮膚のほとんどに皮膚炎の症状が起こってきます。時々、爪だけの症状のこともあります。
また、テトラサイクリンという抗生物質の一種を内服している最中に、爪に日光を受けると爪甲剥離が生じることがありますが、理由についてはよく分かっていません。
原因不明のもの
これまでに述べてきたように、様々な病気によって、爪甲剥離症は起こってきます。しかし、原因がわかることは実は少なく、ほとんどの場合には原因が分かりません。爪の形にも異常がなく、そのままの形の爪が剥がれてくるのです。
ただし、原因がよくわからない場合については、症状の進行があまり激しいものではないことが多いです。
爪甲剥離症の治療
爪甲剥離症の治療は、原因を特定することから始まります。
大きな力が加わったり、外傷があったりした場合には、 様子を見ているだけで治ってくることが多いです。
外傷がない場合には、剥がれた爪を顕微鏡で見て、細菌や感染症の疑いがないか確認をします。並行して血液検査を行って、貧血や甲状腺機能の異常がないかを確認します。
原因が分かった場合には、その原因に対する治療を行います。
甲状腺機能亢進症があった場合には、甲状腺機能を是正するためのホルモンの治療が開始されます。全身性強皮症であるならば、ステロイドによる治療などが開始されます。
爪白癬やカンジダなどの感染症があった場合には、抗真菌薬の内服や外用などによって感染症治療を行っていきます。
原因がはっきりしない場合には、感染症が起こっている可能性を考慮して抗生物質や抗真菌薬を投与したり、ステロイドを使用したりすることもあります。
これらの治療をしても、一度剥がれてしまった爪がまたくっつくことはありません。ですが、爪は根元から伸びてきます。剥がれた部分はだんだんと先端へと移動して最終的には除去することができます。原因に対処することができていれば、新しく生えてくる爪はしっかりと指にくっつくので、時間とともに健康な爪に置き換わるのを待つことができます。