血管運動性鼻炎とは?アレルギー性鼻炎との違いと治し方

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血管運動性鼻炎という病名を聞いたことはあるでしょうか。一般的な鼻炎はアレルギーなどによるものですが、アレルギーとは関係なく鼻炎症状が起こってくる事があります。血管運動性鼻炎もそのひとつです。ここでは血管運動性鼻炎とアレルギー性鼻炎の違いや、治療法などについて解説します。

血管運動性鼻炎とは

血管運動性鼻炎は、鼻粘膜に作用して鼻水の分泌などをコントロールする自律神経系が異常になることによって、鼻水やくしゃみと言った症状が出てくるものを言います。特に自律神経系に異常が起こりやすいのは季節が変わる頃です。

風邪でもないのにくしゃみや鼻水がなかなか止まらないことから、アレルギー性鼻炎と思って検査をする事が多いのですが、検査では何も異常がないことがほとんどです。

気温の変化が7度以上になると症状が起こりやすいと言われています。このような寒暖差によって症状が出てくるアレルギー反応のことを寒暖差アレルギーと言います。アレルゲンとなる物質があるわけではありませんから正確にはアレルギーではありませんが、症状がアレルギーのようなのでアレルギーと呼ばれています。

血管運動性鼻炎はこのような寒暖差アレルギーを含め、様々な原因によって鼻炎の症状を起こしてくるものを指します。

血管運動性鼻炎の原因となるのは主には寒暖差ですが、他にもタバコ・排気ガスと言った化学物質や精神的ストレスなども原因になると言われています。

寒暖差が鼻の異常を来す原因として言われているのが自律神経系の異常です。鼻水の分泌や鼻粘膜の腫脹などは、自律神経系がコントロールしています。

乾燥が強い時には鼻汁を増やしたり、異物が侵入してきたときには鼻粘膜を腫脹させたりといった反応をすることで身体は守られています。

血管運動性鼻炎の場合には、こうした自律神経系のコントロールがうまくいっていない状態が考えられます。体調を崩したり、周囲の環境が変わったりすると交感神経と副交感神経のバランスがうまく取れなくなってしまうのです。

血管運動性鼻炎とアレルギー性鼻炎の違い

血管運動性鼻炎の症状は、アレルギー性鼻炎とおなじようなくしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの鼻の症状です。

一方、アレルギー性鼻炎で診られるような眼のかゆみ、充血といった症状は診られません。アレルギー性鼻炎はアレルギーの原因となる物質アレルゲンが体内に入ってくることによって、それに対する免疫反応が目や鼻などで起こり、症状が出ます。鼻粘膜を支配する神経の異常によって起こってくる血管運動性鼻炎では、眼には関係しませんから眼の症状は出現しません。

アレルギーが関与しているかいないかという観点から言うと、他にも違いは見られます。例えば鼻水の中に好酸球という白血球の一種が増加してくるのがアレルギー性鼻炎です。アレルギーの際に好酸球が鼻汁の中に増加してくるのですが、血管運動性鼻炎ではアレルギーが関与していないため検査をしても通常の量しかみられません。

またアレルギー疾患は1つだけ発症する事はあまりなく、複数のアレルギー疾患を発症する事が多いです。そのためアレルギー鼻炎の場合には他のアレルギー疾患を持っている場合が多いです。ただし、もちろん血管運動性鼻炎でも他のアレルギーを持っている事はありますので、それだけで鑑別をすることはありません。

鼻水の分泌に関わる後鼻神経について

後鼻神経は、鼻の中に通っている神経の一種で、鼻の中の感覚を感じるための神経です。また、鼻水の分泌も司っている神経になります。つまり感覚を司る神経と自律神経とが混じった神経となっています。

後鼻神経が通っているのは、下鼻甲介という部分です。鼻の中にはヒダが2つあり、その下側のヒダの下にある溝のところが下鼻甲介です。その中に神経が通っています。

血管運動性鼻炎の治し方 

血管運動性鼻炎はどのように治療すれば良いのでしょうか。

自律神経を整える

血管運動性鼻炎は自律神経系の異常によって起こってくる病気でした。そのため自律神経系の乱れを整える生活習慣をすることによって症状の改善がみられることがあります。

例えば、睡眠のリズムを整える事は自律神経系の活動を安定化させ、交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズにします。十分な睡眠時間を取ることももちろんですが、入眠時間をなるべく毎日同じ時間にすることによってリズムを保つことが大切です。

また、食事も重要です。アルコールやタバコなどの嗜好品は自律神経系を崩す原因となります。

適度な運動は自律神経系を整える良い生活習慣です。毎日の運動は難しいかもしれませんが、週2回程度の運動をすることによって自律神経系を整えるのに良い影響を与えます。

入浴も大事な要素です。身体をきれいにするだけではなく身体を温めることによって代謝をスムーズにし、自律神経系を整えます。また、一度上がった体温が下がるときに入眠しやすくなるので、睡眠にも良い影響があります。

薬で症状を和らげる

症状が強い場合や、種々の生活習慣の改善によっても症状が落ち着かない場合には薬による治療も行われます。

ここで使うのはステロイドの点鼻薬や抗ヒスタミン薬などです。これらの薬はアレルギーを抑えることによって鼻炎症状を改善する薬です。血管運動性鼻炎はアレルギーではありませんから効果はそこまで明らかなものではないことも多いです。

後鼻神経切断術

上記の様に薬による治療はなかなか難しいと言うこともあり、症状が非常に強い場合には手術を行う場合があります。前述の後鼻神経が原因となるので、神経を切断することによって鼻炎症状を抑えます。

このような血管運動性鼻炎の患者さんは多くの場合、副鼻腔炎や鼻中隔弯曲症を併発していますから、これらの手術とともに行う事が多いです。

手術では、粘膜の中を走行している神経を探し出して電気メスなどで焼灼をします。

鼻水の分泌は後鼻神経のみで行われるわけではなく、他の神経も関与していますから手術で神経を根絶しても完全に鼻水の分泌が止まるわけではありませんが、くしゃみや鼻水と言った鼻炎症状はかなり軽減されると言われています。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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