まさか動脈出血!?高血圧持ちの私の止まらない鼻血に家中が大騒ぎに!
イライラしてカーッと頭に血がのぼると鼻血が出る、高血圧のための薬を服用し始めたら鼻血が出ることが多くなった…。
50〜60代の女性のなかには、こうした「高血圧による鼻血」に悩んでいる方も少なくないのではないでしょうか。
そんな自分ではどうにもならないつらい症状の緩和や体質改善には、漢方薬がよく効くことをご存知でしたか?
「健タメ!」では、読者からの体験談をもとに、お悩みに関する原因や対処法を医師や薬剤師がお答えしていきます。
今回は「高血圧による鼻血」をテーマに、薬剤師の中田早苗先生にお話を伺ってみました。
目次
高血圧からくる鼻血にアタフタ…落ち着いて対処するにはどうすれば?
芳江さん(64歳女性)、主婦の方からご質問をいただきました。
長年のグルメ生活がたたったのか、会社を定年退職して以来、高血圧気味で頭痛や肩こり、のぼせなどに悩まされる日々です。
体力はある方なので年齢の割にはシャキシャキと動き回れているとは思うのですが、やはり、寄る年波には勝てません。
高血圧症状がつらいときは、イライラして夫にどうでもいいことで当たり散らしてしまったり、なんだか気持ちが高ぶって眠れないこともあるんです。それに加えて、最近はなぜかのぼせを感じたときに突然鼻血が出ることも多くて。閉経して以来、血を見慣れなくなっているせいか、結構な量の出血があるといつもアタフタしてしまい、それだけで血圧が急上昇してしまいそうなほどです。
先日も、あまりに出血が止まらないので、「まさか動脈からの出血なのでは?」と家中が大騒ぎになり、息子が病院まで付き添ってくれたのですが、結果はただの心配のない鼻血。降圧剤の副作用で鼻血が止まりにくくなることもあるそうで、このときほど自分の持病を恨めしく思ったことはありません。
まずは高血圧を改善して健康を取り戻さなくては、と思いますが、いつ起こるかわからない鼻血の症状も心配で……。
また出血が起きたらどう対処すれば良いのでしょうか。何か良い改善方法があれば教えてください。
ご質問ありがとうございます。
突然出る鼻血にびっくりして血圧が上がると、余計に出血がひどくなったり血が止まりづらくなるため、どうしても不安になってしまいますよね。
今回は、高血圧による鼻血の原因や改善方法について、詳しくお伝えしていきましょう。
高血圧による鼻血は血圧の変動による鼻粘膜の刺激が原因
鼻血とは鼻腔からの出血を指し、鼻血の多くは鼻の穴の入り口、小鼻の内側にあるキーゼルバッハ部位という場所から出血します。
特に高血圧や動脈硬化など循環器系の持病がある方に鼻血の出る症状が多く見られるのは、血圧が高いためにキーゼルバッハ部位から出血しやすくなるためです。キーゼルバッハ部位には網の目のような毛細血管が集中しており、粘膜も薄いため、些細な血圧の変動や刺激で出血しやすいといえます。
多くの場合は鼻の粘膜からの出血や高血圧のための処方薬の副作用による鼻出血で脳出血による出血ではありませんが、鼻の奥の方からの出血で喉から大量の出血があった場合必ず病院で診断を受けるようにしましょう。
また東洋医学では、高血圧から起こる鼻血症状は、自律神経や血液の流れと関係の深い「肝」に余分な熱が溜まって生じると考えられています。
次の章ではこのような「高血圧による鼻血」を改善するための具体的な方法をお伝えしていきましょう。
高血圧による鼻血を改善するための対処法3選
1.気持ちを落ち着かせて止血しましょう
突然鼻血が出ると、多くの方が慌ててしまうことと思いますが、動揺して血圧が上昇することにより出血が止まりにくくなるため注意が必要です。
まずは気持ちを落ち着かせて前傾姿勢をとり、血液を飲み込まないようにして小鼻の脇をしっかり押さえましょう。口呼吸だけで呼吸がしづらい場合は出血がある方の鼻を押さえ、深呼吸して気持ちを落ち着かせます。
5分〜10分で出血は止まることが多いですが、その後もしばらくは安静にすることを心がけてください。
2.再出血を防ぐように気をつけること
鼻血が出た日の長時間の入浴や飲酒は、血管の拡張や血圧の上昇による再出血を招く可能性があります。入浴する際は短時間のシャワーなどで済ませ、呼吸が乱れるほどの激しい運動は避けるようにしましょう。
また、鼻血が止まってからも、数日後にかさぶたが取れる頃に再び出血しやすくなることもあるため、しばらくは鼻をかむときなども十分注意して鼻を刺激しないようにすることが大切です。
3.血圧改善&鼻血に効くツボ押しをする
高血圧により鼻血が出やすい場合は、血圧を安定させるツボ「天柱」を押してみましょう。
天柱は、高血圧や低血圧の方の血圧を正常化するだけでなく、慢性鼻炎や副鼻腔炎による鼻づまりなどに加え、鼻血や耳鳴り、むくみ、頭痛や目の疲れなど、幅広い効果があるツボとして知られています。
◎天柱(てんちゅう)
場所:後頭部のうなじの生え際部分の外側のくぼみの左右にあるツボ。
左右のくぼみに指をあて、頭頂部の方向に向かって力を入れて押します。
痛みを感じない程度の心地よい強さで5秒ほど、ゆっくりと数回押してみましょう。
根本的な体質改善には漢方薬が効果的!
高血圧による鼻血を改善するために、降圧剤の服用や鼻血を止めるためのレーザー治療などに加えて、根本的な改善を目的としている漢方薬の服用もオススメです。
特に、今回の相談者様のような症状に悩む方に適した漢方薬は、三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)です。不安やイライラ感をともなう高血圧症状に加えて、鼻血や痔などの出血症状がある方の、体内にこもった「熱」や炎症を鎮めて症状を和らげる効果があります。
また体力がなく、頭痛や耳鳴り、めまいなどの症状をともなう方の鼻血症状には、「気」や「血」を巡らせて、加齢とともに上昇する血圧を安定させる効果のある七物降下湯(シチモツコウカトウ)も良いでしょう。
出血部位を見極めて適切に対処しましょう
今回は、高血圧による鼻血に悩む方のためのセルフケアや漢方薬をご紹介してきました。
症状の改善のためには、まずは気持ちを落ち着かせて血圧の上昇を防ぎつつ、しっかり止血することが大切です。
また、高血圧や動脈硬化によって血管がもろくなっている場合は、鼻の入り口の毛細血管ではなく、動脈から出血することがあります。鼻の奥からどくどくと血があふれたり、喉からも大量に出血しているような場合は必ず病院で診断を受けるようにしましょう。
こうした気になる鼻血の症状改善には、漢方薬が大きな効果を発揮した例もたくさんあります。セルフケアを試してもなかなか改善しない場合は、ぜひお近くの漢方医や漢方薬局に相談してみてくださいね。