立効散(りっこうさん)は歯の痛みや非定型歯痛になぜ効く?
立効散(りっこうさん)は、主に歯の痛みに対して処方される漢方薬です。江戸時代の漢方書、『衆方規矩(しゅうほうきく)』に収載されていることでも有名です。”立効”には「すぐに効く」という意味合いがあり、立効散の名前の由来になっています。
内服以外にうがいでも用いられ、辛味があります。
目次
立効散は歯痛や非定型歯痛になぜ効く?
立効散には、止痛作用のある防風(ぼうふう)、細辛(さいしん)、歯茎の腫れを緩和する升麻(しょうま)といった発散性の生薬、解毒や熱感・炎症を冷ます作用のある竜胆(りゅうたん)、緩和の役割を持つ甘草(かんぞう)の計5種類の生薬で構成されています。
歯痛や歯の炎症・熱感を始め、抜歯後の痛み、歯茎の腫れなどの口腔トラブル、口内炎や舌炎、舌痛症、歯痛にともなう頭痛の緩和も期待できる漢方薬です。
また、立効散は非定型歯痛(非歯原性歯痛)にも効果が期待できます。非定型歯痛は、歯に原因がないのに、歯や歯茎周辺に神経性の痛みを感じる症状を指します。非定型歯痛の発生機序はまだ解明されていない部分が多いものの、立効散は神経学的要因に作用すると考えられており、非定型歯痛が軽減されたという報告もあります。
立効散は代用できる?葛根湯(かっこんとう)や黄連湯(おうれんとう)の使い分けは?
立効散と葛根湯は、同じく歯痛に対して使用される漢方薬です。使い分けのポイントは、胃腸障害や肩こりの有無です。比較的体力があり、胃腸障害がなく、症状の初期に肩こりが目立つ場合は葛根湯を、そうでない場合は立効散を使用しましょう。
また、口内炎症状の使い分けに関しては、みぞおち辺りに重圧感やつかえ感がある場合は黄連湯を、そうでない場合は立効散が適しています。
立効散で副作用は起こる?
立効散によって起こる副作用は、胃の不快感、吐き気、食欲低下などです。また、非常にまれではありますが、甘草による副作用の偽アルドステロン症で、四肢の脱力、全身の倦怠感、むくみ、動悸などが起こる可能性があります。
もし漢方薬を服用後に不調を感じた場合は、ただちに医療機関を受診してください。
立効散が適応となる病名・病態
保険適応病名・病態
効能または効果
抜歯後の疼痛、歯痛。
漢方的適応病態
歯痛、頭痛(細辛、升麻、防風は主として顔面部の疼痛に有効とされ、発汗、解表にも有効)。
立効散の組成や効能について
組成
細辛2 升麻2 防風2 甘草 1.5 竜胆草1
効能
清熱・散風・止痛
主治
風熱歯痛
◎清熱・散風・止痛:体内で亢進した熱邪と外から感受した風が原因する歯痛に対し、清熱、散風によって痛みを止めます。
解説
立効散は歯痛の治療に使用される処方です。
特に抜歯後の歯痛、効果があります。
適応症状
◇歯痛
胃経は上歯の歯ぐきを巡り、大腸経は下の歯ぐきを走行しています。
体内の熱特に胃と大腸の熱邪が盛んな場合、熱邪は経絡に沿って上行し、歯ぐきの気血の流通を塞ぐため疼痛が生じるのです。
風邪の侵入によって、急に歯が痛くなることもあります。
◇舌紅・苔黄
紅舌と黄苔はともに熱の存在を示します。黄苔は胃熱が盛んな場合に現れます。
◇脈浮数
浮脈は風邪の侵入、数脈は熱邪の存在を示します。
細辛、升麻、防風はともに発散性をもち、解表薬に属します。
細辛は芳香性が強く、発散去風・止痛の作用をもち、歯痛、頭痛などの痛証によく配合されます。
升麻は胃や大腸に帰経し、胃火を清する作用があり歯痛の専門薬。
防風は優れた去風作用によって風邪の侵入を除去するでしょう。
急性の歯痛には、発散去風薬を配合する必要があります。
竜胆草は清熱利湿薬で、升麻の清熱作用を補佐するほかに口臭、苔媒などの湿熱内蘊の症状を治療します。
生甘草には清熱解毒の作用と胃気を保護する作用です。
臨床応用
◇歯痛
清熱、散風、止痛の作用があるので、急性の歯痛に適し、抜歯後の疼痛にも用いられます。
補益薬は加味されていないので、腎虚に属する歯槽膿漏などの慢性歯痛には効果がありません。
◇鼻炎
通鼻竅の細辛、肝胆鬱熱を清する竜胆草が入っているので、鼻塞、鼻水などの鼻症状に用います。
止痛作用があるので、鼻の疼痛に対しても一時的に使用することができます。
◎鼻水が濃く、量が多いとき+「辛夷清肺湯」(清肺開竅)