三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)は痩せる?のぼせの強い便秘解消に

漢方事典

三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)は、「黄」の付く生薬が3つ使われ、それが名前の由来となっています。

3つの「黄」とは、消炎・鎮静作用のある黄連(おうれん)、体温調節・解熱作用のある黄芩(おうごん)、排便を促し、抗菌整腸作用のある大黄(だいおう)です。

なお「瀉心」には、みぞおちのつかえを取るという意味や、心にたまったわだかまりを解消するといった意味があります。

三黄瀉心湯には苦味があるので、温服が効果的でしょう。三黄瀉心湯に期待できる効果や使い分けのポイント、副作用のリスクについて確認しましょう。

痩せる?三黄瀉心湯の効果

三黄瀉心湯に限らず、漢方薬にはいわゆるダイエット薬のような直接的に脂肪を落とす効果はありませんが、漢方薬に痩身効果を期待する場合、体質を変えていくことで、痩せやすい身体を目指すという考え方になります。

三黄瀉心湯の場合は、のぼせ傾向にあり、便秘がちな方に向いています。身体に溜まった余分な熱を体外に排出する大黄の効果や、消化器や呼吸器の熱を下げる黄連、黄芩がはたらき、のぼせが強くみられる便秘を解消します。

そのほかの効果としては、不眠や不安、イライラなどの精神神経症状、更年期症状の緩和などが挙げられます。

三黄瀉心湯と黄連解毒湯(おうれんげどくとう)の使い分けは?

三黄瀉心湯と黄連解毒湯は使用目的が似ていて、黄連、黄芩など、生薬の一部が共通しています。黄連解毒湯には、消炎、解熱、止血作用がある山梔子(さんしし)、消炎、健胃、整腸作用がある黄柏(おうばく)といった生薬も含まれています。

使い分けのポイントですが、便秘がみられる場合は三黄瀉心湯を、便秘がみられない場合は黄連解毒湯を使用しましょう。

三黄瀉心湯の副作用

三黄瀉心湯を使用した場合、副作用として、食欲不振、腹痛、下痢などが起こる場合があります。

また、めったに起こらない重い副作用ですが、間質性肺炎、肝障害などが起こる可能性があります。間質性肺炎の場合は発熱、呼吸困難、異常な肺音、肝障害の場合は吐き気、発熱、食欲不振、尿の変色などの初期症状がみられます。

もし漢方薬の服用により体調がすぐれない場合は、使用を中止し、なるべく早いうちに医療機関を受診しましょう。

三黄瀉心湯が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

比較的体力があり、のぼせ気味で、顔面紅潮し、精神不安で、便秘の傾向のあるものの次の諸症:高血圧の随伴症状(のぼせ、肩こり、耳なり、頭重、不眠、不安)、鼻血、痔出血、便秘、更年期障害、血の道症。

漢方的適応病態

1)熱盛

2)血熱妄行

3)湿熱(脾胃湿熱、肝胆湿熱)

4)心火旺、肝胆火旺胃熱。すなわち、黄連解毒湯とほぼ同じで、便秘傾向のものによい。

三黄瀉心湯の組成や効能について

組成

大黄6 黄連3 黄芩3

効能

瀉火解毒・燥湿

主治

熱毒旺盛

◎瀉火解毒:火・毒の概念については「黄連解毒湯」を参照してください。

◎熱毒旺盛:熱毒の邪気が非常に盛んである病証をいいます。

解説

三黄瀉心湯は血熱による出血を治療する処方です。
「瀉心湯」「三黄湯」の名もあります。

適応症状

◇心中煩熱

イライラして、熱感をもつことです。
熱邪が心の蔵している神を乱すことによって生じる症状です。

◇吐血・衂血

「心は血脈を主る」ので、心の熱邪は、血と結びつきやすいといわれています。
血が動性のある熱とともに妄行して脈管の外へ出ると、出血症状が現れるでしょう。
熱の上昇する特性によって上部の出血が多くみられます。
熱による出血の色は鮮やかな赤色を呈することが多いとされてます。

◇尿黄・便秘

体内の実熱が盛んであることを示す症状です。

◇舌紅・苔黄

心火が旺盛なため、「心の苗」である舌(特に舌尖部)が赤くなることが多いでしょう。
黄苔も熱を示します。

◇脈数有力

実熱に属する病証なので、熱を示す数脈と実を示す有力脈が現れます。

黄連、黄芩、大黄はともに苦寒薬に属しています。
苦味は熱を下降し、寒性は火熱の邪気を清泄できます。
この三味の配合によって上部に停滞した熱毒の邪気を直接下へ引き降し、除去します。

黄連は心に帰経し、心火旺盛の病証に対し、その心火と血熱を清泄します。
黄芩は上焦の熱邪を清する作用に優れ、熱による上部の出血に多く用いられます。
また、黄連の清熱瀉火作用を強化します。
黄進黄芩の両薬はともに燥湿作用があるため、湿熱病証にも用いる大黄は瀉下通便薬です。

この処方の中では通便作用よりむしろ下行する薬性が利用され、上部の熱邪を下げる役わりを果たしています。
さらにその活血補作用によって、脈外に溢出した血(瘀血)を除去し、「去瘀生新」(瘀血を除去すれば、新しい血が生まれ出る)ことができます。
出血が多いときには大黄炭を使用することがあります。

臨床応用

◇出血証

吐血・鼻血など上部の出血証に用います。
急性、熱性の出血証に適しており、慢性、虚性、寒性の出血には用いてはいけません。

胃・十二指腸の出血、鼻血、皮膚紫斑病に用いることが多いでしょう。

冷やして服用すると涼血作用が増強されます。
出血の症状が止まれば使用を中止します。

◇火熱証

出血症狀はなくても、激しい頭痛、目の充皿、口内炎、高血圧など頭部の火盛症状に使用できます。

◎頭痛、目赤のとき+「竜胆瀉肝湯」(瀉火利湿)

◎口内炎がひどいとき+「白虎加人参湯」(清熱生津)

◎高血王のとき+「釣藤散」(清肝)

◇にきび

三黄瀉心湯は実熱による青年期のにきびに用いられます。
特に赤ら顔で、口渇、便秘をともなう場合に適しているでしょう。

関連記事