【生薬解説】山査子(さんざし·さんさし)とは

漢方事典

別名:山査肉(さんざにく)、山楂子(さんざし)、山査(さんさ)、山楂(さんさ)

中国原産のバラ科の落葉低木のサンザシ(㊥野山楂Crataeguscuneata)、あるいは高木のミサンザシ(㊥山楂C.pinnatifida)の成熟果実を乾燥したものを用います。
日本には江戸時代に伝わり、多く植栽されている身近な樹木です。

ミサンザシは大型の果実で、核を除いたものは山査肉(さんざにく)と呼ばれます。
サンザシの果実は中国では一般に紅果(こうか)と呼ばれ、甘酸っぱいため干菓子の山査片(さんざへん)や羊羹の山査羮(さんざかん)、ジュースなど広く用いられています。
料理では魚を煮るときに入れると骨まで柔らかくなり、また肉料理の後で食べると消化を促進すると言われ重宝されているようです。

果実の成分にはクラテゴール酸やケルセチン、クロロゲン酸、タンニン、サポニン、ビタミンC、タンパク質などが含まれ、抗菌、血管拡張、強心、降圧作用などが報告されています。
クラテゴール酸には胃液分泌を促進し、消化を助ける作用が知られています。
漢方では消食の効能があり、おもに消化不良や下痢の治療に用いられ、とくに油っこいものや肉類などの消化不良に適しています。
また、産後の腹痛など瘀血による疼痛や血便などにも用います。

弱火で淡黄色に炒めたものを炒山査(しゃさんざ)、強火で焦がしたものを焦山査(しょうさんざ)、黒く炭にしたものは山査炭(さんざたん)といいます。
いずれも消化不良に用いますが、瘀血には生山査を、止血や下痢には山査炭を用います。
焦山査に焦神麴と焦麦芽を合わせたものを「焦三仙」といい、消化不良の基本薬となっています。

さらに焦檳榔を加えたものは「焦四仙」といいます。

なおヨーロッパでは同属植物のホーソン(セイヨウサンザシC.oxyacantha)の葉を強心薬、果実は降圧・強心薬として用いています。(→ホーソン)

健胃消化作用

消化不良や胃腸機能の低下に用います。
小児の消化不良には人参・白朮などと配合し用いるとよいでしょう(浄府湯)。

慢性の胃腸虚弱には山薬・茯苓などと配合します。(啓脾湯)。

食べ過ぎや食積が停滞して、胸やけなどのみられるときには神麴・莱菔子などと配合して用います(保和丸)。
ただし胃酸過多や胃潰瘍には、山査子は用いないほうがよいでしょう。

処方用名

山楂子・山楂・山楂肉・生山楂・生楂肉・炒山楂・焦山楂・山楂炭・サンザシ

基原

バラ科RosaceaeのミサンザCrataeguspinnatifidaBge.var.majorN.E.Br.やサンザシC.cuneataSieb.etZucc.の成熟果実。

性味

酸・甘、微温

帰経

脾・胃・肝

効能と応用

方剤例:保和丸

①消食化積

食積とくに油膩肉積による腹満・腹痛・下痢・あるいは小児の傷乳による下痢に、単味であるいは麦芽・神麴・萊菔子などと用います。

②止痢

細菌性下痢に、炒炭して単味の粉末を冲服します。

③破気化瘀

産後瘀阻による腹痛・悪露の停滞あるいは血瘀の月経痛などに、当帰・川芎・益母草などと用います。

④消脹散結

疝気(ヘルニアなど)の下腹部の脹った痛み・陰囊腫大などに、橘核・小茴香などと使用します。

⑤その他

活血疏肌・透疹に働くので、麻疹の初期や透発が不十分なときに使用します。

臨床使用の要点

山楂子は酸甘・微温で、健脾開胃に働いて消化を増強します。
とくに油賦肉積・小児乳積に有効であり、血分に入って破気散瘀し、炒炭すると止瀉痢に働きます。

宿食停滞・油膩肉積あるいは傷食の腹痛瀉痢、産後瘀阻腹痛・悪露不尽、疝気墜脹疼痛などに適すでしょう。

参考

炒用(炒山楂・焦山楂)すると消食に、炒炭(山楂炭)すると止痢・化瘀に、生用(生山楂)すると透疹にそれぞれ働きます。

用量

9~15g、煎服。

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