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脳梗塞からの回復に向けた急性期・回復期・維持期のリハビリテーションとは

お悩み

脳梗塞になると、神経機能が障害されます。この障害された神経機能の回復のメカニズムはまだ厳密には分かっていません。しかし、早期からリハビリテーションを開始すると、機能予後は格段に良くなることがわかっています。

脳梗塞を発症した後のリハビリは大きく分けて「急性期」「回復期」「維持期」の3段階となります。それぞれの段階で適切なリハビリを行うことが必要です。

ここでは脳梗塞のリハビリの目的と、3つの段階のそれぞれで行うリハビリの内容について詳しく見ていきましょう。

脳梗塞のリハビリの目的

脳梗塞におけるリハビリテーションは身体の運動機能の回復に加え、心理的・社会的な回復を目的としています。

一人ひとりの障害の程度に応じたリハビリテーションを早期から行うことで、その人がもともと行っていた日常生活にスムーズに戻れるように支援します。

また、リハビリテーションは本人だけではなく、家族や友人などの周りのサポートや理解も重要なポイントとなってきます。

急性期のリハビリテーション

発症後から14日程度を急性期といいます。かつては、脳梗塞発症後すぐに体を動かすと、さらに症状が悪化するといわれていました。しかし、治療ガイドラインが見直され、現在では発症直後からのリハビリが推奨されています。

基本的に発症から48時間以内に開始することが望ましいとされています。これは、寝たきりの期間が長くなると、筋肉が萎縮したり関節が固まって動きが悪くなる拘縮(過度な緊張で手足がつっぱっている)が起きるからです。

それに加え、体力の低下や認知機能の低下も起こります。このような状態を廃用症候群といいます。この廃用症候群を予防するために、次に示すような訓練が行われます。

関節可動域訓練

自力で身体を自由に動かすことが難しい患者が関節の拘縮・変形を起こさないための訓練となります。

この訓練には、看護師やリハビリ士など他者が介助する「他動運動」、患者が自ら実施する「自動運動」の2種類があります。自力で動かせない場合は他動運動から始め、拘縮してしまわないようにします。

離床訓練

ベッドから徐々に離れて生活の範囲を広げていくための機能訓練です。寝たきりの期間が長くなればなるほど、心肺や消化器官などの低下を招き、廃用症候群へとつながります。

また、寝たきりとなると精神の活性にもつながらなくなります。そのため、立ったり座ったりする訓練の他、ストレッチを行ったり車椅子に移乗する訓練を早期から始めます。

機能回復訓練

手足の曲げ伸ばしを自動的もしくは他動的に行います。そうすることで筋力を回復させるとともに、拘縮・変形しないように維持していきます。

急性期では運動麻痺があっても、回復期に麻痺が改善してくることがあります。しかし、そのときに拘縮してしまっていると機能回復ができません。そのため、急性期から訓練を始めます。

失語症に対しても、簡単な単語や文を読んでもらったり、短文の日記を毎日書くなどのリハビリを通して、失語を解消していきます。身体の機能を回復させ、少しずつ本来の力を取り戻すことが目標となります。これらを通して次のADL訓練へとつなげていきます。

ADL訓練

食事・着替え・入浴・トイレ・整容などの日常生活に必要な動作が自力または介助でできるように行う訓練となります。

退院して自宅で過ごすためには、このADLが自力もしくは介助で安全に行うようにならないと生活できません。そのため、箸や歯ブラシ、櫛などが使えるように訓練します。

摂食・嚥下訓練

嚥下機能が低下すると十分な栄養や水分をとれず体調不良になったり、誤嚥性肺炎などを発症してしまうことがあるので、嚥下訓練は非常に大事となります。

食べ物を飲み込むことができない場合は、自力で食事を取れるように慎重に訓練を行います。栄養摂取は健康維持に欠かすことのできないものなので、この訓練は非常に重要になってきます。

以上のような訓練を急性期から行っていきます。急性期には、脳の血流が改善して脳のむくみがとれてくるので、ある程度麻痺が回復してきます。そのため、急性期からリハビリを行うことが大切です。

回復期のリハビリテーション

発症から3か月~6か月頃までを回復期といいます。回復期のリハビリでは、症状の改善に加えてベッドから一人で車椅子に乗り移ったり、日常生活を送る上で必要となる機能を高めていき、自宅で生活が行うことができるようにするための訓練が行われます。

次に紹介するような治療法が行われるのも回復期の特徴です。

ボツリヌス療法

ボツリヌス菌が作り出すボツリヌストキシンと呼ばれる毒素を筋肉内に注射し、筋肉の緊張を緩める治療法です。

後遺症の中でも拘縮で行われています。拘縮が和らぐことでリハビリが行いやすくなったり、着衣がしやすくなったりします。

磁気・電気刺激療法

電気を用いて手足を動かす神経や筋肉を刺激する治療法です。磁気刺激では磁場による渦電流を筋肉内に発生させて、無痛で連続かつ長時間の刺激が可能です。

また電気刺激では、手足の筋肉が自分で動くときの電気信号を感知して、その筋肉を電気刺激でアシストします。これにより、筋肉を動かして運動を学習させ、筋萎縮の予防や拘縮の予防を行います。

最近では、脳に磁気や電気を流して刺激を与える経頭蓋磁気刺激療法があります。これは八の字型コイルを頭部に当てて、頭蓋を通して健側の大脳を刺激する治療です。その結果、健側の脳が抑制される代わりに患側の脳が活性化されることで、リハビリ効果を発揮します。

ロボットリハビリ

ロボットが脚などの筋肉の動きをサポートしながらリハビリ患者の歩行をサポートします。訓練を通して歩行を可能にし、また体を支えることでバランスを修正することができるので、歩行に関するさまざまな訓練にロボットが用いられています。

失語に対するリハビリ

失語は言葉が浮かばなかったり、言葉が理解できない状態です。短い文章やテレビ、新聞などを用いて内容に関して質問したり、言葉を復唱して話すトレーニングが行われます。

維持期のリハビリテーション

6か月以降を維持期と言います。維持期のリハビリは患者の自宅や施設で行われることが多いです。リハビリが行いやすいように回復期から維持期にかけて自宅や施設などで生活環境を整えていきます。

自宅の段差をなくしたり手すりを付けたりして転倒を予防し、自立した生活が送れるようにします。

脳梗塞は治療を行ってそれで終わりではなく、治療をしながらリハビリを始めていき、急性期から回復期、そして維持期へとリハビリを続けていきます。

脳梗塞による症状は人それぞれであり、その人に合ったリハビリを行っていくことで、日常生活へと早く戻っていけるようにしていくことを最終的な目標としています。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

プロフィール

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