血圧が高いとどうなる?高血圧で起こりやすい病気の種類

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高血圧は、収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上の場合をいいます。初期の高血圧には自覚症状がほとんどありません。そのため、高血圧に気づかない場合もあります。

また、高血圧を指摘されても自覚症状がないことから、食事制限をしたり運動をしたりといった生活改善を始める必要性に気付きづらく、高血圧を指摘されてから医療機関に相談するまで、3年以上かかっていることが多いです。

日本には高血圧の人が約4300万人もいるといわれています。しかし、厚生労働省の調査によると、高血圧で治療を受けている人はたったの1000万人程度です。つまり、高血圧になっている人の4人に3人もの人が、高血圧に対する治療をしていないということです。

このように知らない間に進行して命に関わる合併症を引き起こすことから、高血圧は別名「サイレント・キラー(沈黙の殺人者)」とも呼ばれます。ここでは高血圧がどのような病気を合併するのか見ていきましょう。

動脈硬化

血管は全身に張り巡らされています。血液は心臓から血管を通じて体の隅々まで酸素や栄養を送り、脳などの臓器が十分に機能するように支えています。

しかし、高血圧を放置していると、動脈の血管の柔軟性が失われて動脈硬化が起こります。動脈硬化が進行すると血管の中がプラーク(コレステロールのかたまり)によって狭くなり、血液の流れが悪くなるため、さまざまな臓器に障害を引き起こします。

高血圧で起こりやすい脳の病気

脳血管の動脈硬化が進行すると、血栓(硬化した血管の一部が破けてできた血の塊)ができやすくなったり、血管に圧力がかかりやすくなったりして血管障害(脳卒中)が起こることがあります。

脳卒中は主に脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3種類に分けられます。いずれの場合にも、初期対応が大切となります。また、後遺症が残る場合が多く、脳卒中を引き起こさないためにも高血圧の治療が大切となります。

脳梗塞

日本で最も多い脳卒中であり、脳卒中の約60%が脳梗塞といわれています。血栓によって部分的に血液が流れなくなるため、脳に酸素や栄養が行き届かず、その先の組織が壊死することで麻痺やしびれ、失語や視野障害などの症状が現れます。

脳出血

脳出血は2番目に多い脳卒中となります。全体の約3割を占めます。脳の細い血管に圧力がかかり、血管が破裂するので、今までに感じたことがない程の激しい頭痛が現れます。しかし、高齢者では脳内の圧力が上がらず、頭痛が少ないこともあります。

くも膜下出血

くも膜下出血は、くも膜下腔という脳の表面で出血することで起こります。スポーツやケンカ、交通事故などで頭を強くぶつけるような場合にも生じますが、高血圧と関連したくも膜下出血は動脈瘤の破裂によるものが多いです。

ほとんどは先天性に動脈瘤を持っていることが原因であり、高血圧がきっかけで破裂します。良く起きる年齢は40~65歳の働き盛りの年齢であり、この年齢の高血圧が油断できない理由もここにあります。

自分に動脈瘤がないか脳ドックなどで調べてみましょう。もし、動脈瘤がある場合は、高血圧にならないよう治療するか、動脈瘤の治療を行いましょう。

高血圧で起こりやすい心臓の病気

高血圧は心肥大、心不全、狭心症といった心臓の病気を引き起こすことがあります。

心肥大

高血圧になると、血管が硬くなってきます。全身に血液を送り出す心臓はその圧に対抗して血液を送ろうとするため、次第に筋肉がつきます。これが心肥大という状態です。心肥大になると、心不全や狭心症、心筋梗塞などの合併症の頻度が増加します。

心不全

心不全は、心臓の働きが低下して血液の循環がうまくいかなくなり、全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態のことです。また、血流を保つため、血液を溜め込む(うっ滯)が起こるようになります。その結果、足や顔などのむくみ、動くときの息切れ、動悸などの症状が現れます。

狭心症(心筋梗塞)

心臓の動脈が狭くなって心臓に十分な血液を送れなくなることで、急に胸が締め付けられるような痛みが現れます。血管が完全に詰まるわけではないので症状は一時的です。この状態を狭心症といいます。

心臓の動脈が完全に詰まると、心筋(心臓の筋肉)が壊死して心筋梗塞となります。全身に血液を送るポンプ機能が低下するため、我慢できないほどの胸の痛み、ショック状態(血圧低下)、動悸・冷や汗などが現れ、重篤な不整脈になって心停止、ときには心破裂を起こすこともあります。

高血圧で起こりやすいその他の病気

高血圧は腎臓の病気や閉塞性動脈硬化症を引き起こすことがあります。

腎臓の病気

腎臓は血液をろ過して、体内の老廃物や余分な水分を尿として排出するという働きを円滑に行うために血圧を一定に保っています。しかし、高血圧による動脈硬化が進行して動脈の血流が低下すると腎臓機能も低下するため、余分な水分や塩分を適切に排泄できなくなります。

体内の液量が増加すれば、その分心臓の負担が増えるので血圧が上がるという悪循環につながります。

腎臓の血管が動脈硬化を起こして、腎機能が低下した状態を腎硬化症といいます。豊富な血流が必要となる糸球体(毛細血管の塊)で血液の流れが悪くなると、次第に糸球体が硬化していくため、老廃物のろ過が行えなくなり、慢性腎不全に至ります。

閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症は動脈硬化により足の血管が細くなったり、詰まったりすることで十分な血流が保てなくなり、引き起こされる病気です。歩行時の足のしびれや痛み、冷感を感じたり、休み休みじゃないと歩けなくなります(間欠性跛行)。

進行すると安静にしているときにも症状が現れ、閉塞した部分の血管を人工血管にするなどの治療をしないと、最悪の場合足の切断が必要となることもあります。

いかがでしたでしょうか。高血圧自体で症状を感じることは少ないため、「放っておいても大丈夫だろう」と思う方も多いと思いますが、高血圧の合併症は突然襲ってきます。そのときになって高血圧の治療をしておけばよかったと後悔したのでは遅すぎます。もし、自身もしくは家族で高血圧の方がいれば、早めに治療をすることをおすすめします。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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