喘息の検査方法は?咳喘息との違いや識別が必要なよく似た病気
喘息はつらい病気です。咳が続くだけではなく、呼吸困難が起こることもあります。非常に重症の喘息発作が起きると、呼吸がまったくできなくなってしまい、命に関わることもあります。
しかし、逆に咳が続くだけで喘息と診断されてしまうと、輸血ができなかったり、種々の薬剤が使用できなかったりと、かなりの不都合が生じてしまいます。
正しい検査による喘息の診断は非常に重要なのです。ここでは、そんな喘息の診断のための検査方法と、喘息に似た病気について解説します。
目次
喘息の検査方法
喘息の診断のためには、問診やいくつもの検査を行います。
問診
病気の診断のまず第一歩は問診と身体診察から始まるといわれています。問診や身体診察からある程度の病気を絞り込んでから、必要な検査を実施し、診断を確定するという手順が一般的な病気の診断方法になります。
喘息の場合、特に自覚症状が診断の上で重要です。そのため、問診による喘息の状態を聴取することは診断の第一歩であり、最も重要な要素となります。
問診ではまず症状の状態を聴取します。咳があるかどうか、痰や呼吸困難感、息切れやヒューヒューいうかどうか、喘鳴はあるか、発作的に症状が悪くなることがあるか、などを聴取します。
そしてその症状がいつからあるか、どれぐらいの頻度で起こるのか、どのぐらい強いのか、何か特定のことをしているときに症状が出るのか、などを聴取します。特に発作がある場合は、発作の頻度や発作が起こる季節なども重要になります。
診断の補助としては、過去に喘息があるか、他に病気があるか、アレルギーの症状は他にあるのかを聴取するほか、家系的にアレルギーをよく持っているかを聴取します。
喫煙やアレルギーによって症状は悪化しますから、自分や家族の喫煙歴や家の状況を聴取します。
このような問診を通して、喘息らしいかどうか、そして喘息であれば原因が何なのかについてを類推していきます。
血液検査
血液検査はアトピー型喘息の診断の補助として有用です。アレルギー反応が起こっているかどうかと、どのような物質に対してアレルギー反応を起こすのかを調べることができます。
血液中の好酸球の数はアレルギーがあると数値が上昇します。白血球のうち4%以上が好酸球となっている場合、もしくは300個/mm3以上の好酸球数の場合は有意所見としてアレルギーがあると診断します。
総IgE値も参考となります。IgEとは、アレルギーの際に実際に原因物質に反応する抗体のことで、この値が大きいほどアレルギー反応が起こりやすいといわれます。一般に200IU/ml以上が異常値と判定されます。
また、IgEについては抗原特異的IgE抗体を調べます。IgEは特定の物質に特異的に結合しますから、アレルギーを起こしやすい物質に対するIgE抗体というものは決まっています。
血液中のIgEのうち、どのような物質に反応しやすいIgEが多いのかを調べることで、どのような物質に対するアレルギー反応が起こりやすいかを調べることができます。アレルギーの原因としては、例えばダニやカビ、動物表皮やハウスダスト、花粉(杉、ヒノキ、ブタクサなど種類も特定します)などが多く見られます。
これらの検査でアレルギー反応を起こしやすいか、またどのような物質にアレルギー反応を起こしやすいかを調べることができます。ただし、これはあくまでアレルギー反応を起こしやすいというだけであって、その結果喘息を引き起こしているかどうかまでは確定できません。
呼吸機能検査(スパイロメータ)
呼吸機能検査はいわゆる肺活量検査と似ていますが、もう少し細かく検査を行います。喘息の患者の場合、気道が狭くなることで息苦しさを感じますが、特に息を吐くことが難しくなります。
喘息の人で呼吸機能検査において最も異常が出やすいのは一秒率という値です。これは、息をできる限り、思いっきり吸い込んで、そして可能な限り勢いよく、可能な限り多く息を吐き出すことで測定します。
通常、一気に吐き出すと全ての息を吐き出すのにかかる時間は1.5秒程度です。そしてそれだけ頑張って吐き出した空気のうち、最初の1秒間に吐き出した空気がどれぐらいの割合なのかを調べます。この割合が一秒率です。
通常であれば70%以上となります。すなわち、思いっきり吸い込んで吐き出したとき、最初の1秒間に70%以上が吐き出せるということになります。喘息患者の場合は、吐き出すことが難しいので、この値が下がり、70%を下回ります。
1秒率が70%を下回るのは気管支喘息や気管支炎のほか、肺気腫などの病気でも低下します。いずれも息を吐き出すことが難しい状態を示しているのです。
呼吸機能検査では他にもさまざまな呼吸の特徴を検査しますが、気管支喘息のときには特に1秒率に注目します。
呼気NO検査
NOとは一酸化炭素のことです。好酸球による炎症が起こると、体内で生成され、呼気中に排出されます。そのため、呼気中のNO値を測定することで気道での炎症の状態を把握することができます。
喘息であれば36ppbを超える事が多いといわれていますが、他の病気でも上昇してきます。
気道過敏性テスト
喘息は気道に炎症が起こり、種々の刺激に過敏に反応してしまう病気です。そのため、気道を刺激する薬剤を吸入することで、気道が反応して気道が狭くなってしまうかどうかを調べます。
この検査は、喘息であるかどうかの診断にも使用されますが、反応度合いが計測できるため喘息の治療状況や重症度を調べることができます。
喀痰細胞診断
喀痰細胞診は多くの場合、肺がんの診断に使用されますが、喘息でも診断の補助として使用されます。
喘息の場合は気道粘膜で炎症が起こって好酸球が増加していますから、喀痰中に好酸球や、炎症で剥がれ落ちた気道上皮が含まれてきます。喀痰を染色して観察すると、それらの細胞を見ることができます。
画像検査
喘息は気道粘膜、すなわち気管や気管支の内面の病気ですから、画像検査ではなかなか確認することができません。
画像検査は、喘息以外の病気で喘息と同じような症状をきたす病気を鑑別するために行う場合がほとんどです。
咳喘息と喘息の違いと関係
喘息ではなく、咳喘息という病気もあります。どのようなもので、喘息とはどのように違うのでしょうか。
長引く咳の多くは咳喘息が原因
咳が長引いて困るといった症状で、最も多い原因と言われているのが咳喘息です。
咳喘息はアレルギーによって起こってくる病気です。2週間以上にわたって長い咳が続きます。特に特に花粉アレルギーが多い時期に咳が長引いて止まらないということがよくあります。冷たい空気に触れたり、部屋を変わったりした時のように、空気が変わった時にもよく咳が出ます。
また、タバコの煙や、飲酒、会話などの刺激によっても咳が出てくるのが特徴です。夜に咳が出てしまい、なかなか眠れない、あるいは眠っていても咳のせいで目が覚めてしまうということもあります。
これらの症状は、治療すると一旦収まることが多いです。しかし、治療しない状態でしばらく様子を見ていると、また同じような刺激で咳が再発し、なかなか止まらないことになってしまうのです。
反対に、咳喘息では咳以外の症状はあまりないというのも特徴です。喘鳴や痰など、風邪や気管支喘息の時に起こってくるような症状はあまり見られません。痰は見られたとしても少量で、白っぽいものとなります。
咳喘息と気管支喘息の違い
咳喘息と気管支喘息の症状の違いとしては、咳喘息は咳だけの症状であるのに対し、気管支喘息であればそれに加えて、息苦しさや、ヒューヒュー言うような症状が起こってきます。
咳喘息は単に気道過敏性が亢進して、刺激に対して過敏に反応して咳が出ているだけなのに対し、気管支喘息はそれに加えて、気道分泌が亢進し、気管支が狭くなっています。
咳喘息の問題点は、放置することによって、だんだんと気管粘膜が変性し、気管支喘息へと移行してしまうことにあります。刺激を受けている間に、刺激に対して反応をして気管粘膜は硬くなり、分泌物を多く分泌することによって、刺激に対抗するようにします。
しかし、それが過剰になっていくと、少しの刺激でも分泌物が大量に出て気管支が狭くなるようになり、気管支喘息の発症につながります。
咳喘息の診断基準
次の条件を満たす場合に咳喘息と診断されます。
・喘鳴を伴わない咳が少なくとも8週間以上続くこと、また咳だけの症状で、聴診をしても特に喘息のような音がしないこと
・気管支拡張薬が有効で、投与することによって咳が軽快すること
また、末梢血や喀痰の好酸球増多、FeNO濃度の高値を認めることがある、気道過敏性が亢進している、咳は季節性や日による差があり、夜間や早朝に有意に起こってくる、などの所見が参考となります。
喘息への移行を防ぐには?
咳喘息を放置すると、喘息になってしまう可能性があります。咳喘息と診断された人のうち、およそ3割から4割程度の人が気管支喘息に移行すると言われています。
気管支喘息に移行するのは、気道に刺激が与えられ続け、その刺激によって、気管支粘膜が変性してしまうことによります。そのため、早い段階から、可能な限り刺激を避け、また刺激に反応しないように治療を進める必要があります。
咳喘息の治療は、概ね喘息の治療と同じです。アレルギーを治療する内服薬を内服し、吸入薬を吸入することによって、気管支が変性するのを防ぎます。それによって、症状を抑えるだけではなく、気管支喘息へ移行するのを防ぐことができます。
喘息とよく似た病気との鑑別
喘息とよく似た病気は他にもいくつかありますから、簡単に紹介しましょう。
肺気腫、慢性閉塞性肺疾患
慢性閉塞性肺疾患には慢性気管支炎も含まれますが、ほとんどが肺気腫を指します。肺気腫は長年の喫煙によって起こる病気で、喫煙によって肺胞が壊れてしまう病気です。
肺胞はそれ自体が収縮する力を持っていますが、その構造が壊れてしまうことで肺がしぼむ力を失ってしまい、息を吐くことが困難となります。さらに、痰を排出することも困難となってしまいますから、痰が詰まってすぐに肺炎になってしまったり、無気肺となって酸素の取り込みが悪くなってしまったりします。
基本的には病歴聴取で診断が可能です。画像検査をすると、肺胞構造が壊れた様子が撮影されます。
心臓喘息
心臓喘息とは、心臓の病気によって起こる呼吸苦症状を指します。喘息のように息苦しさを感じ、喘鳴を聴取します。
心臓は体中から血液が帰ってきた後肺に血液を送ります。そして肺を巡った血液はまた心臓に戻ってきて全身へと送られます。しかし心臓の機能が落ちると、肺から血液が戻りにくくなってしまい、肺に血液がうっ滞します。すると肺胞の中に水がしみ出してしまい、肺水腫という状態になってしまいます。肺水腫になると気道に水分が多くなり、気管が狭くなって喘息と同じような症状を呈します。
心臓喘息の場合、心エコーや胸部レントゲン写真で心臓の機能低下や肺のうっ血を調べることで診断がつきます。また、寝ているより座っている方が症状が楽になるという特徴もあり、鑑別が行えます。
その他
その他にも咳をきたす病気としては感染症などで起こる上気道炎、気道狭窄、気道異物、気胸、肺炎や薬剤による副作用などがあります。
呼吸苦をきたす疾患としては過換気症候群や肺塞栓症などが挙げられます。速やかな治療が求められる疾患も多くありますから、診断・鑑別が重要となります。