COPD(慢性閉塞性肺疾患)の検査方法と重症度の分類

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COPDは喫煙者に多く、肺や気管支が慢性的にタバコの煙の中にある有害物質で障害を受け続けた結果、肺の構造が破壊されたり、気管支が狭くなったりする病気です。

ここではCOPDの検査方法と重症度の把握の方法について解説します。

COPDの検査

COPDの診断は、問診やさまざまな検査を複合して行われます。

COPDの主たる症状は咳、痰、呼吸苦ですが、初期には呼吸苦はあまり無いことが無く、咳や痰が主症状です。咳や痰が主症状である病気は他にもありますから、検査を行うことでそれら他の病気を除外しつつ、検査結果をもとにCOPDかどうかを診断します。

問診

病気の診断はまず問診からで、COPDも例外ではありません。COPDで最も大きな発症要因は喫煙ですから、喫煙歴の聴取は必ず行われます。1日何本ぐらい、何年ぐらい吸っているかを確認します。

症状についての情報も重要です。どのようなときに症状が起こるのか、症状の程度はどのようなものか、痰が出るなら痰の状態はどのようなものなのかなどの情報が有用になります。

問診では、何種類かの質問用紙を利用することがあります。例えば、CAT質問票(どれぐらい症状がひどいと感じるかを8項目の質問で聴取)やmMAC質問票(呼吸困難の程度を評価する方法)がよく使用されます。

画像診断

肺や気管支が器質的な異常を起こしていないかを確認するために、胸部レントゲン写真やCT検査が行われます。

レントゲン写真では初期にはあまり画像上の異常を指摘することは難しいですが、肺気腫が進行し、肺胞壁が壊れて一つの大きな肺胞となってしまった状態(これをブラといいます)が分かるようになります。

また、肺がしぼむ力が弱くなりますから、肺が大きく映ります。

CTで撮影すれば、さらに詳細に肺の状態が分かります。小さなブラでも確認できますし、気管支壁の肥厚が確認できることもあります。

パルスオキシメーター

パルスオキシメーターとは、SpO2値を測定する器械です。SpO2値とは、動脈血中のヘモグロビンのうち、どれだけのヘモグロビンに酸素が結合しているのかを示す値です。指にクリップを挟むことで簡便にはかることができます。呼吸器疾患にかかわらず、血圧や脈拍数と並んですぐに測定できる検査のひとつです。

通常、SpO2値は年齢によって異なり、子どもでは100%ぐらい、成人で98%以上、高齢者でも95%以上はあるのが普通です。

しかしCOPDの場合、血液へ酸素を取り込む力が低下しますから、この値が低下します。80%台まで低下している場合もあります。ここまでSpO2値が下がってしまうと、血液が酸素をあまり運搬していないことになりますから、すぐに息切れを起こして動けなくなってしまいます。

運動負荷心肺機能検査

運動負荷心肺機能検査は、ルームランナー(トレッドミルといいます)や自転車ペダルこぎ(自転車エルゴメーターといいます)などを行なって運動をし、最大酸素摂取量、心拍数、呼吸パターン、換気量などの心肺機能を測定します。

種々の心臓病や呼吸器の疾患で、異常を認めます。

スパイロメーター

スパイロメーターはいわゆる肺活量の検査に似ていますが、一度にどれだけの空気を吸って吐くことができるのかという肺活量の検査だけではなく、吐くときの空気の量や速度など、呼吸の状態を測定することができます。

COPDの診断にはこの検査が必須となっていますから、次の項目でより詳しく説明しましょう。

スパイロメーターによるCOPDの検査

スパイロメーターは、筒のようなものを口にくわえ、呼吸をすることで計測が行われます。

筒を出入りする空気の流速を測定することで、患者の呼気と吸気の気流の早さを測定します。さらにその流速を解析することで、さまざまな呼吸の能力を測定します。

この検査で特によく臨床で利用されるのが努力性肺活量、1秒量、1秒率です。努力性肺活量とは、一般的によく言われる肺活量のことです。できる限りいっぱい息を吸い込んで、できる限りいっぱい息を吐き出したとき、どれだけの空気を吐き出すことができたのかという値になります。

1秒量と1秒率は、COPDの検査として最も重要なものとなります。

1秒量とは

1秒量とは、1秒間に吐き出すことができる空気の量です。大きく息を吸い込んで、思いっきり、そして全ての空気を吐き出したとき、空気を吐き始めてから最初の1秒間で吐き出した空気の量になります。

1秒率とは

1秒率とは、1秒量を努力性肺活量で割って100倍した値です。つまり、息を思いっきり吸って最大限まで吐き出したとき、吐き出した空気全ての分量のうちどれだけの割合を1秒間に吐き出すことができたのか、という値になります。

努力性肺活量や1秒量は体格や年齢などによって個人差があり、まちまちです。しかし、1秒率は通常、明らかな病気がなければ個人差はあまりなく、80%程度はあるのが普通です。

しかしCOPDの場合、空気を吐き出す力が弱まっていますから、全ての空気を吐き出すのにかなり時間がかかります。すなわち、最初の1秒間に吐き出す空気の量も減っているわけです。

ですので、COPDの場合は1秒率が低下し、70%を下回ります。

COPDの診断と重症度

COPDには次のような診断基準があります。

1つ目の基準は、呼吸機能検査で1秒率が70%を下回っていることです。

2つ目の基準は、気流閉塞を起こしうる疾患を除外することです。

気流閉塞を起こすとは、1秒率が70%を下回る状態のことと考えてください。つまり、1秒率が70%を下回り、かつ他の病気が除外できたらCOPDであると診断できます。

気流閉塞を起こしうる疾患としては、喘息、びまん性汎細気管支炎、副鼻腔気管支症候群、閉塞性細気管支炎、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、リンパ脈管筋腫症、うっ血性心不全、間質性肺疾患、肺がんが挙げられます。

COPDにおける重症度の分類

上記の診断基準をパスして、COPDと診断された場合、そのCOPDがどれだけ重症なのかによって治療に変化が出てきます。重症度分類に使用されるのは、やはり1秒率です。気管支拡張薬を投与した後にスパイロメーターで値を測定し、その値でステージ分類されます。

気管支拡張薬投与後の1秒率が80%以上の場合は、軽度の気流閉塞があると考えられ、第I期とされます。多くの場合、普通の歩行ではあまり症状がありませんが、早足で歩いたり、労作を行ったりする事で呼吸困難が認められます。

1秒率が50%から80%のときはII期と分類されます。早足で歩いた際の呼吸困難が強く、労作時の呼吸苦も強くなります。

1秒率が30%から50%の場合は、III期とされ、少し体を動かしただけでも呼吸苦を来します。

1秒率が30%を下回ったIV期は最重症で、安静にしていても呼吸苦を来します。50%未満であっても右心不全や慢性呼吸不全を合併した場合は同様にIV期に分類されます。肺気腫が進行すると肺の変性がかなり強くなり、肺に血液を送る右心室にも負担がかかり、右心不全をきたすのです。この状態になると呼吸苦症状は非常に強くなります。

このように病期分類を行った上で、それぞれに応じた治療方針を検討していきます。


<執筆・監修>

郷正憲先生プロフィール画像

徳島赤十字病院
麻酔科  郷正憲 医師

麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。
麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。
本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。
「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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