急に不安感に襲われるのはなぜ?不安のさまざまな原因を解説

お悩み

みなさんは不安感に襲われたことはありますか?全くないという方は少ないはずです。大勢の前で話すときや試験のとき、試合のとき、心臓がドキドキしますよね。それは病気ではなく、当たり前の反応です。

しかし、その心配や不安が過度になりすぎて、日常生活に影響がでるようになってくると、不安障害なのかもしれません。不安を生じさせる原因にはさまざまな種類があります。ここでは不安の原因について解説します。

急に不安感に襲われる「不安障害」とは

不安障害にはいくつもの種類があります。代表的なものを見てみましょう。

パニック障害

特に理由もなく、突然大きな不安に襲われて、心臓がドキドキする、めまいがしてふらふらする、呼吸が苦しくなる状態となります。場合によっては死んでしまうのではないかと恐怖を覚えることがあり、よく救急車を呼びます。しかし、モニターをつけてみると脈や血圧などは正常であり、訴えている症状と身体所見とが解離しています。

1回の発作は普通数分から30分、長くとも1時間以内に自然に消失します。症状は動悸・頻脈、息苦しさ・過呼吸、このまま死ぬのではないかという恐怖が多く、その他吐き気、めまい、手足のしびれ、冷や汗などがみられます。

このような発作が頻発して生活に支障をきたすものをパニック障害とよびます。パニック障害は女性に多く、青年期・壮年期に多いとされています。性格的には温和、小心で、危険や人との衝突に対して敏感な人がなりやすいです。

「また発作が起きるかもしれない」という予期不安を感じて、電車や人混みを避ける、1人で出かけることを避ける、エレベーターなど逃げられない閉鎖空間を避けるといったことがあります。

全般性不安障害

不安発作などの発作は起きないが、慢性的に不安な気分、身体的な不安症状があるものを全般性不安障害といいます。学校のこと(初登校のときや人前での発表など)や家族・友達のこと(試験や病気など)、生活上のいろいろなことが気になり、極度に不安や心配になる状態が半年以上続くことです。

精神症状としては、何事にも過剰に敏感になり、常にビクビクすることや、落ち着きがなく、じっとしていられない、物事への集中がなくなる、漠然と不安を感じるといったものがあります。こういった精神症状とともに、動悸・息苦しさ、発汗、吐き気、口渇、下痢、頻尿などの身体症状もあらわれます。

社会不安障害

人に注目されることや、人前で恥ずかしい思いをすることが怖くなって、人と話すことだけでなく、人が多くいる所などにも強い苦痛を感じる病気です。失敗や恥ずかしい思いがきっかけになることが多いですが、自分で自分の価値を認められなかったり、自分に自信がもてなかったりすることから起きてくる場合もあります。

強迫性障害

「あれ、戸締まりしたっけ?」「火を消したっけ?」と後から気になることはよくあります。しかし、普通は1回確認すれば納得しますよね。

強迫性障害とは、自分では無意味なことだ、つまらないことだと分かってはいても、ある考えや行為にとらわれて止めることができない病気のことをいいます。

打ち消しても打ち消しても浮かんでくる想念を強迫観念と呼び、その強迫観念からやめられない行動のことを強迫行動とよびます。

手はきれいなはずなのに、汚いという強迫観念から何度も何度も手を洗うという強迫行動を行うといった例などがあります。

完全欲が強い人や、潔癖症、頑固で適応力がない人、優柔不断な人などがなりやすいといわれています。

更年期障害にともなう不安感

更年期障害というと、顔のほてり(ホットフラッシュ)や発汗が多いことや、めまいなどの身体的な症状を思い浮かべる人が多いと思います。しかし、更年期障害は精神に影響を与えることもあるのです。

更年期になると卵巣機能が衰えることで、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下してしまいます。脳の視床下部からエストロゲンを出すように指令しても、エストロゲンが出ないため脳に混乱が生じ、自律神経のバランスが崩れてしまうことで精神症状が起こるとされています。

さらに、更年期の女性は仕事や育児、介護など生活環境が大きく変化する時期でもあるため、精神的不調をきたしやすい傾向があります。更年期の精神的不調には不眠やイライラ、不安感、抑うつ気分などがあります。

SNSが心に与える影響

LINE、Facebook、Instagram、Twitterなど、SNSを使用していない人は少ないのではないでしょうか。身近となったSNSですが、使い方次第では心に影響を与えてしまうことがあります。

2017年のイギリス王立公衆衛生協会(RSPH)による研究では、14~24歳の若者を対象に、YouTube、Instagram、Snapchat、Facebook、Twitterを比較した結果、Instagramが不安感や孤独感、いじめ、外見への劣等感などの心の健康に最も悪影響を与えることがわかりました。

2019年に発表された、米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院で行われた研究では、12~15歳の男女を対象として1日3時間以上ソーシャルメディアを利用した若者が、うつ病、不安、攻撃的行動、反社会的行動などの精神的健康上の問題を発症する可能性が約2.5~3倍になったとの報告があります。

このようにSNSを長時間利用することで、周りの人はみんな社会的にも成功しているように感じたり、周りが幸せそうに見え、自分と比較してしまい、悪影響を受ける可能性があります。このように自分と周囲を比較したり、落ち込んでしまうような使い方をしてしまう場合は、利用時間を制限するなどして心の健康を保ちましょう。SNS自体が悪いわけではないので、うまく付き合っていけるといいですね。

睡眠不足で感情が不安定に

睡眠不足のときは、いつも以上にイライラしたり、怒ったり、落ち込んだりしやすくなります。国立精神神経医療研究センターの研究によると、1日に4時間半ほどの睡眠不足状態が5日間続くと、うつ病や統合失調症などの患者さんと似た脳機能の変化がみられ、不安や混乱、抑うつ気分の傾向が強まるとしています。

脳の中で情動や記憶の制御を担う扁桃体と呼ばれる部位が、睡眠不足時にはネガティブな情動刺激に対して過剰に反応してしまうようです。そのため、不安、恐怖、怒りなどが出やすくなるのです。

一般的には必要な睡眠時間は7時間以上とされています。睡眠をきちんととることで感情は安定し、仕事や友達関係なども良好となり、過ごしやすくなることが期待できます。

いかがでしたでしょうか。急に不安に襲われることは生活をしていれば、誰でも経験することです。それが、異常なのかどうか判断に迷う人もいると思います。悩んだときは、まず周りに相談できる人がいれば勇気をもって相談しましょう。相談できる人がいない場合も、1人で抱え込まずに精神科や心のケアの専門家に相談してみましょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

プロフィール

関連記事